【THE SPIKE】侍ジャパンに突きつけられた“国際大会の怖さ”…強化試合初戦を終えて | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE SPIKE】侍ジャパンに突きつけられた“国際大会の怖さ”…強化試合初戦を終えて

オピニオン コラム
メキシコ代表との強化試合を行った侍ジャパン(2016年11月10日)
  • メキシコ代表との強化試合を行った侍ジャパン(2016年11月10日)
  • 侍ジャパンの武田翔太(2016年11月10日)
  • 侍ジャパンの千賀滉大(2016年11月10日)
  • 侍ジャパンの大瀬良大地(2016年11月10日)
  • 侍ジャパンの山崎康晃(2016年11月10日)
  • 侍ジャパンの岡田俊哉(2016年11月10日)
  • 侍ジャパンの中田翔(2016年11月10日)
  • 侍ジャパンの筒香嘉智(2016年11月10日)
野球日本代表の侍ジャパンは11月10日、来年3月に開催する第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に向けた東京ドームでの強化試合第1戦でメキシコ代表と対戦した。

期待された打線も投手陣も振るわずに3-7で敗れたが、強化試合初戦にして「国際大会で戦うことがどういうことか」を改めて痛感させられた試合内容だった。

■メキシコ代表は9人の投手を送り込んだ

侍ジャパンがマウンドに送り込んだのは、先発の武田翔太(ソフトバンク)、2番手の千賀滉大(同)、3番手の大瀬良大地(広島)、山崎康晃(DeNA)、そして山崎の乱調を受けて急遽マウンドに上がった岡田俊哉(中日)の5投手。

先発の武田翔太
(c) Getty Images

対するメキシコは先発のオイエルビデスから最終回に投げたサンチェスまで、9人もの投手をマウンドに送り込んだ。

もともとデータが少ない投手を相手にしているため球筋がつかめず、やっと慣れてきたところで次の投手が出てくる。さらにWBC公式球は球が大きく重く、バットの芯でとらえたと思った打球が失速する。

5回裏、センターのフェンス上部を直撃する適時二塁打を放った筒香嘉智外野手(DeNA)の打球も、シーズンであれば間違いなくスタンドインしていただろう。

9人の投手を使ったメキシコ代表
(c) Getty Images

また、メキシコ選手に限らず、外国人投手は正直な直球をほとんど投げない上に球質が重い。この試合でも侍ジャパンの各打者は微妙に動く球に芯を外され、山田哲人内野手(ヤクルト)や中田翔内野手(日本ハム)はポップフライを打ち上げるシーンが目立った。

日本の打線は次々に送り込まれたメキシコ代表の投手たちに、勢いのあるボール球を打たされていた。完全に勢いに飲み込まれ、投手に慣れる前に終わったという印象だ。WBCの本番で9人の投手が出てくる試合展開というのは現実味がないが、日本にとっては良いシミュレーションになったのではないか。

中田翔
(c) Getty Images

■WBC公式球が滑り、制球が乱れる

WBC公式球が滑りやすいことは、WBCが近づくたびに毎度課題として挙がる。この試合では2番手に登板した千賀が制球を乱し、甘く入った直球をスタンドまで運ばれた。千賀といえば国内屈指と呼ばれる「お化けフォーク」の使い手であるが、フォークがすっぽ抜ける場面も散見された。

2番手でマウンドに上がった千賀滉大
(c) Getty Images

途中から修正し制球が整い始めると、鋭いフォークにメキシコ選手のバットが空を斬る場面も目立ったが、シーズン中の制球と比べるとかなりの差があったことが心配だ。何よりも「ボールが滑る」というイメージを持ったままマウンドに上がることはストレスになる。

また、9回表に4番手で登板した山崎はメキシコから1死しか奪えず、5安打3失点を喫する乱調だった。直球は高めに浮き、ウイニングショットのツーシームも打者に見極められ、手を出してくれない。今季の山崎はツーシームの切れが昨季と比較して良くなかったが、山崎の球筋を初見のメキシコ打線が悠々と見送る様は本番では目にしたくない光景だ。

2013年第3回WBCでは田中将大投手(当時楽天、現ニューヨーク・ヤンキース)が滑るボールに苦しんだ。得意のスライダーをうまくコントロールできず、第1ラウンドのブラジル戦で打ち込まれると、以降は大会の大事な場面で起用されることはなかった。

2009年第2回WBCの前には岸孝之投手(西武)が代表候補に選ばれながら、滑るボールに対応できず候補から外された。前年の2008年、大きく縦に割れるカーブを武器に西武の日本一に大きく貢献した岸。WBCでも先発の柱の一角として活躍が期待されていたが、ボールへの順応には最後まで苦慮した。

■トライ&エラーを期待

小久保裕紀監督はメキシコ戦後の会見で筒香や中田の4番問題について問われ、「どちらもタイトルホルダー、4番に相応しい」と答えている。

筒香嘉智
(c) Getty Images

確かにタイトルを獲得するほど活躍した実績は評価されるべきものだし、打線を組む際のひとつの指標にはなるだろう。

しかし、短期決戦はあっという間に終わる。これまでの侍ジャパンでの実績や信頼、ネームバリューなどではなく、ボールへの適応、コンディションをしっかりと見極めてもらいたい。そのために今後行われる強化試合では、多くのトライ&エラーを期待している。
《浜田哲男》

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