【THE REAL】ハリルジャパンの守護神・西川周作が放つ存在感…悔しさをパワーへと変える笑顔 2ページ目 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE REAL】ハリルジャパンの守護神・西川周作が放つ存在感…悔しさをパワーへと変える笑顔

オピニオン コラム
西川周作 参考画像(2015年11月12日)
  • 西川周作 参考画像(2015年11月12日)
  • 西川周作 参考画像(2016年9月7日)
  • 西川周作 参考画像(2015年11月17日)
  • 西川周作(左)に駆け寄るチームメート(2016年4月20日)
今度こそは、何がなんでも先に動かない――。前へ飛び出す動きを必要最低限にとどめ、ティーラシンのシュートコースを限定する。そのうえで仁王立ちして、相手が間合いを詰めてくるのを待った。

心理的にはダイブしながら前へ飛び出すか、左右どちらかを読んで止めにいきたい。しかし、前者はティーラシンを引っかけてPKを与えるおそれが、後者はかわされて無人のゴールを陥れられるおそれがある。

だからこそ、待った。ティーラシンだけではなく、失点するのでは、という恐怖心とも戦っていた。果たして、根比べに負けたのはスペインリーグ2部でのプレー経験があるティーラシンだった。

■失点するときもあると思ってプレーする

背後から必死に追走してきた、吉田の鬼気迫るプレッシャーをも感じていたのか。体勢を崩しながら、なかば苦し紛れに放った右足からのシュートは西川の正面へ飛んでしまう。

至近距離からの一撃を顔面で止めた西川はそれでも集中力を途切れさせることなく、ペナルティーエリア内に転がっていたルーズボールを自らの胸に収めた。最大にして唯一のピンチを、勇気で防いでみせた。


浦和レッズでも絶大の信頼を寄せられる西川周作 (c) Getty Images

ハリルジャパンはアジア2次予選の8試合を、すべて無失点で封じていた。つまり、UAE戦の前半20分に決められた直接フリーキックは、2次予選から通じて初めて許した失点でもあった。

「サッカーなので、失点するときもあると思ってプレーしている」

UAE戦後にこう語ったものの、もちろんショックは小さくない。人間である以上は、悔しさも腹立たしさも覚える。それでも西川は努めてポジティブに立ち居振る舞い、こんな言葉を残していた。

「最終予選では1点の重みが変わってくる。追いつき、追い越せなかったことはもちろん残念ですけど、前向きに考えればUAE戦が1‐3のスコアで終わらなくてよかったと思ってもいる。いけいけ、どんどんになりがちな状況で、実際に相手のカウンターの危険にさらされたこともあったので。なので、これからも1点の重みを感じながら、無失点にこだわってやっていきたい」

■最終予選はあと9試合

リードを許した後のUAE戦では、プレーが途切れるたびに、センターバックを組む吉田と森重に「バランスを頼む」と声をかけ続けた。リスクマネジメントを徹底させるためだ。

さらに失点を喫していたら、取り返しのつかないショックを受けたはずだ。ホームで戦った初戦はもちろん大切だが、最終予選の戦いは来年9月まで、あと9試合も続いていく。

熱さと冷静さとを同居させる西川の存在が、ハリルジャパンの崩壊を食い止めたことになる。そして、有言実行とばかかりに、タイのカウンターを食い止めたファインセーブが日本の勝利を決定づけた。

アジア最終予選がホーム&アウェー方式となった1998年のフランス大会から、初戦でつまずいたチームがワールドカップ本大会に出場した前例はない。確率ゼロへのチャレンジだからこそ、逆に闘志が燃え盛る。

「黒星スタートからはい上がっていく姿を、いろいろな方々に見せていきたい」

UAE戦後にこんな言葉を残したときも、西川は穏やかな“笑み”をたたえていた。初めて経験するアジア最終予選の独特なプレッシャーのなかでも等身大の自分とポリシーを貫き、その立ち居振る舞いでチームメートへ安心感を与える西川が、ハリルジャパンを最後尾から支えていく。
《藤江直人》

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