【THE INSIDE】もうひとつの社会人野球…クラブチーム選手権から社会人野球の行方を見つめる | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE INSIDE】もうひとつの社会人野球…クラブチーム選手権から社会人野球の行方を見つめる

オピニオン コラム
クラブ選手権の行われている西武ドーム
  • クラブ選手権の行われている西武ドーム
  • ゴールドジムの選手たち
  • ゴールドジム・ベースボール・クラブvs県警桃太郎
  • スタイル抜群!ゴールドジム・ベースボール・クラブのチアガールたち
  • 応援席に挨拶をするゴールドジム・ベースボール・クラブ
  • 県警桃太郎の選手たち
  • 県警桃太郎ベンチ
  • ゴールドジム・ベースボール・クラブのマッチョなチアボーイ応援団
社会人野球の二大大会として、夏の都市対抗野球と秋の社会人野球日本選手権が双璧だ。近年は東京ドームで7月に開催されている都市対抗野球は、今年で第87回を数える歴史的な大会である。

現在地区予選が開催されて随時代表が決まっている社会人野球日本選手権は2016年で42回目の開催。それとほぼ変わらぬ歴史を有するのが、第41回を迎えた全日本クラブ野球選手権である。

タレントの萩本欽一氏が初代監督を務めた茨城ゴールデンゴールズの出場や、CS放送など多チャンネル化の普及によって、一部試合が放映されるようになって認知度も広がってきている。ただ、こんなに歴史があるのだと改めて思った人も少なくないだろう。

■企業が支えるクラブチームの増加

全国の予選大会から勝ち上がった全16チームが9月2日から、西武プリンスドームを舞台にトーナメント形式でクラブ野球日本一を争った。

優勝したのは九州地区代表のビッグ開発ベースボールクラブだった。2008(平成20)年に創部した沖縄県那覇市に本拠を置く、不動産とその管理会社が母体となったチームだ。選手は関連会社の業務をこなしながら練習し、登録はクラブチームではあるが企業のバックボーンが大きい。

近年こうしたスタイルのクラブチームが増えてきている。2年連続関東地区代表となったゴールドジム・ベースボール・クラブもそんなチームスタイルのひとつ。選手はゴールドジムの社員としてインストラクターなどを務め、フィットネス業界だけに自分の体のケアに関しては専門家である。

2日、ゴールドジムBCと県警桃太郎(兵庫)との試合が行われた。全国大会初勝利を目指したが、今年も初戦で苦杯を舐めた。初回には4番米倉拓也(四日市工→国士舘大)の2ランで幸先よく先制。先発の藤谷周平(アーバイン高→南カリフォルニア大→千葉ロッテ)は県警桃太郎を4回までは2安打無失点に抑える好投だった。


ゴールドジム・ベースボール・クラブvs県警桃太郎

ところが5回表、県警桃太郎は先頭の井口凌兵(市立尼崎→神戸学院大)の安打に始まり、坂本佑太(龍谷大平安→龍谷大)のバント安打などで二死満塁。ここで4番福岡惇(今治西→立命館大)が走者一掃の二塁打で逆転となった。

さらに7回表にも四球と失策悪送球で加点し、一死三塁。代わった星野真澄(埼玉栄→愛知工大→読売ジャイアンツ)から福岡が犠飛を放ち、決定的な5点目を奪った。4番打者として福岡は、4打点とその任務を遂行した。

全国大会初勝利を目指したゴールドジムBCの手塚栄司監督は、「ここという場面であと1本が出たか出なかったか、その差が出てしまいました。全国(大会での勝利)の壁は厚いですね。でも、また挑戦します」と気持ちを切り替えていた。

県警桃太郎は2011(平成23)年に兵庫県警が「野球で培った気力・体力を有用な人材を獲得する」という目的で発足させたチームで、翌年から日本野球連盟に加盟してクラブチームとして登録した。5年目の今年、全国大会初出場を果たして初勝利となった。

準々決勝では、延長11回タイブレークの末に富士通アイソテック(福島)に敗れた。47人いる選手たちは多くが兵庫県内の交番に勤務しており、夜勤明けと非番の日に練習を行うが、業務の関係上全員がそろうのは難しいようだ。それでも、最終的には都市対抗本大会出場を目指して励んでいる。

ちなみにチーム名の「桃太郎」は鬼退治から来ており、「悪を征伐する警察官」という意味合いとのこと。



社会人野球では企業チームの登録がどんどん減少している中で、ビッグ開発BCやゴールドジムBCのように企業のバックボーンを持ちながら、選手たちも一般業務をこなして野球に取り組むスタイルのチームが増えつつある。

今大会、東海地区から初出場を果たした矢場とんブースターズも、愛知県を本拠としたみそかつチェーン店が母体となっている。選手たちも店員として働いている。また、富士通アイソテックやNSBベースボールクラブ(大阪、母体は中山製鋼所)なども企業が母体となっている。

県警桃太郎のように公的機関がクラブチームを作っているケースも今後はさらに増えていくのではないだろうか。東京都では警視庁もそんな形でチームを発足させている。

地域と企業がどのような形で結びつきながらチームを維持していくのか。今後の社会人野球という点からも、クラブチームと企業チームのバランスなども気になるところだ。そんなことも意識しながら、社会人野球を観ていくのも面白い。
《手束仁》

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