便利な時代になったものだが、それにともなってネット予約ならではのトラブルも。賢く利用するならその対策が必要だ。
四半世紀前のツール・ド・フランス取材はホテル予約なんかせずにその場しのぎだった。予約するのも大変だけど、そのホテルを探すのも大変だったからだ。それでも仕事を終えた人からホテルを探し始めるので、原稿を書いていると焦る。
だから予約は精神的にも安心だなと考え直して、電話やFAXで部屋を確保するように。農家の部屋を借りる「シャンブルドット」なんて国際郵便をやりとりした。そんな過渡期もあった。
■ネット予約で便利に
そのうち大手チェーン店はネット予約ができるようになり、最近は宿泊予約サイトが普及して圧倒的に便利になった。ホテルドットコムやブッキングドットコムがあるが、どちらで予約してもホテルに着いたら「ああ、エクスペディアね」と言われる。
どうやらフランスではネット予約は総称してエクスペディアらしい。ボクはこのうちのひとつを利用しているが、10泊すると1泊が無料になるなど、ツール・ド・フランス取材をしているとあっという間に10泊するので、経費が浮いてうれしい。
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フランスのたいていのホテルは無料の無線LANが完備している。パソコンもスマホもアクセスできる
■たまにはトラブルも
フランスは世界有数の観光大国なので、ホテルに宿泊予約が通ってなかったり、なにかのトラブルで当てにしていた部屋がなかったりすることはめったにない。めったにないというのはたまにあるというわけで…。
そしてボク自身がトラブルに数えていないというケースもままある。まあ、その場で解決できるものばかりだからだ。でも解決できなかったらそれなりのトラブルにはなる。
例えば宿泊費の食い違い。ディスカウント料金が適用されるはずなのに、ホテルに行ったら通常料金だったりする。また、支払いは予約時にカード決済するか現地でチェックアウト時に支払うかが選択できるのだが、払ったのに料金を請求されることもある。
このあたりは当日フロントにいたスタッフが単に間違っているだけなので、問題を解決するためにはネットの予約サイトをプリントアウトして持っていくことだ。ただしその町に支払う宿泊税は必ず現地で支払う必要があり、税金を追加請求されることも。50円程度なので請求しないホテルもあるようだ。
ホテル名は合っているのに、「あなたの名前では予約がない」と言われたことも何回かある。これはボクのほうのミスで、同じ系列ホテルの別の町に行ってしまったという間違い。例えば「イビスホテル・モンペリエ」を予約したつもりで行ってみたら、ボクが予約したのはモンペリエの南にある町の「イビスホテル・モンペリエ南」だったりした。フランスのホテルチェーン店はひとつの町にいくつも同じブランドを持っていたりするので、住所をしっかりと確認して向かわなくちゃいけないのだ。
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快適な部屋。建物の外観は古くても内装や水回りが改装されていることが多い
1泊7000円程度のエコノミーなホテルは午後9時を過ぎるとフロントが閉まってしまう。無人になると自動ロックされた玄関の外にあるマシンで予約番号や予約時のクレジットカードを入れるなどの手続きを踏まないとマシンからカードキーが出てこない。
聞き取りにくい音声ガイダンスで、間違えたらこの日はクルマの中で寝るしかないなと思うと冷や汗が出る。そのため、できればまだスタッフがいる午後9時前に訪れたい。予約取り消し忘れや宿泊日間違いも多いミスなので、しっかりと事前チェックしておく必要がある。
ツール・ド・フランスではクルマで帯同することが普通なので、無料駐車場がある郊外型ホテルを利用することが多い。そんなところでは付近にディナーを食べるところがないなんてことも。さらにはレストランを併設したホテルのはずなのに日曜日なのでレストランが閉まっていることもある。そんなときにひもじい思いをしないために、常に1食分の食べ物やワインかビールはクルマに積んでおくのがいい。
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日曜日はレストランが閉まるのでピザを買い込んでホテルのテラスで腹ごしらえ
最近はいわゆるホテルではない宿泊施設も予約できるようになった。例えば巡礼者を宿泊させる宗教的な宿泊所だ。かなり安価に宿泊でき、キッチンつきの部屋はベッドが5つもあるのに1泊2食で5000円なんてところも。ここでは夕食はみんなで一斉に同じテーブルに着き、修道女が作ってくれたスープや食べ物を口にしながら語り合う。食後はミサだ。
ホテルの看板も掲げていないような隠れ家的なところもあった。天体研究者が泊まる標高2800mの天文台なんてところも体験した。
いずれにしても「今夜はどんなところに泊まれるんだろ?」とツール・ド・フランスの期間中はワクワクしっぱなし。たまに不安になることもあるけど、それを含めて旅は楽しまなくちゃ。