写真には、洞窟の中を小さな滝が流れている様子が写し出されていた。季節や時間によって、太陽の光の差し込み方が異なり、ジブリチックな風景を見せてくれるらしい。
どうせ稚拙な文章を書くどこぞのWEBライター(筆者のような)が、大げさに書いたに違いない…とあまり信じてはいなかったが、それでもやはり気になって、現地へ取材に向かった。
●小さな滝と洞窟が創出する、大きな景色
実際に見てみると、洞窟はそこそこ大きく、迫力があった。その中を小さな川が流れ、小さな滝となって水を落としている。陽の光はうまい具合に差し込まなかったが、それでも洞窟と滝の組み合わせが、世にも美しい風景を作り出していた。記事を書いたライターさん、疑ってしまいごめんなさい。
小さな滝の前には大勢の人が集まり、カメラやらスマートフォンを構えていた。噂のスポットの目の前に来て、キャッキャとはしゃぐ若者たち。それらを見ながら「早くどけ、シャッターチャンス逃す!」と憤るアマチュア・カメラマンの姿(筆者含む)。

若者たちが滝の前でわちゃわちゃと
ネットに上がっている写真と同じような、幻想的で神秘的な写真を撮りたいのに、どうしても若者たちの姿が入ってしまう。若者たちは、後方でカメラを構える筆者たちを、見て見ぬふりして滝の前ではしゃぎ続ける。
これは、写真を撮りにきた人にとっては、迷惑極まりない行為である。見るに見かねたひとりの中年男性カメラマンが、若者たちに声をかけた。
「おーい、少しそこをどいてくれ」
すると、若者たちは軽くお辞儀をしてその場から退いた。
SNS が火付け役となった新しい観光スポット「濃溝の滝」。そこに集まった気配りの足りない若者たちと、彼らに「NO!(濃)」と告げた中年カメラマンとの間にできた深い「溝」を、滝と洞窟が創りだす美しい風景によって、平たくならしてくれたら。