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【THE INSIDE】野球女子、中学野球部の指導現場を熱く語る 前篇

オピニオン コラム
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---:最初から野球部の指導者を目指して教員になったのですか?

小池:はい。神奈川県の吉田島農林高の野球部に女性監督がいると報道されて、「カッコいいなぁ」と思っていましたから(笑)。中学生くらいの時は高校野球の監督をやりたいと思っていました。

---:高校野球で指導現場にいる男性の先生方と同じ思いですね。

小池:そうですね、高校野球大好きでしたから。

---:現実問題として、大学卒業後に赴任先が決まり、野球部の顧問となって指導してくださいと預けられると「えっ!ちょっと待ってよ」みたいな戸惑いはありませんでしたか?

小池:それはありましたよ。だから、いろんな人に会うようにして、いろいろ聞くようにしました。

---:教員社会は特殊な部分もありますからね。一般企業なら新卒新入社員は先輩社員に教わりながら仕事を覚えていきますが、教員はいきなり生徒を預けられてしまう部分がありますよね。

小池:そうですね。そういう部分はありますね(苦笑)。

---:今年で3年目、まだ卒業生を送り出す立場は経験はしていません。進路に関わるようになると、また気持ちも変わってくると思いますよ。

小池:それはあるでしょうね。中学生というのは、1学年違うと全然違いますから、それも感じています。

---:今、抱えている悩みというのはありますか?

小池:チームが崩壊しているというわけではないのですが、人数が少なくてチームとして成り立っていないんですよね。自分の理想が高くなりすぎているということもあるのかもしれませんが。人数としても1年生が7人で、2年生がふたり、マネージャーがひとりですからね。

---:それは人数としても厳しいですよね。

小池:しかも、そのうち2年生のひとりはまったくの素人ですから…。1年生にもふたり野球経験のない子がいるんですよ。



---:ボールに触ったことがない生徒が入ってきているということですね。そういう生徒に対して、どうやって教えていこうとしていますか?

小池:もちろん別枠で教えていかないといけませんが、生徒同士でも教えてあげられるような環境を作っていくことを心掛けています。

---:教えられている生徒も素直に受け入れているんですか?

小池:はい、それはそういう環境にはなっています。

---:そのあたりは今の子たちは素直ですからね。

小池:ただ技術を教えてあげているのだから「オレの方が偉いんだ」と、そういう風になって、準備とかを全部相手にやらせていくことになってしまったら、それはそれでおかしいことになってしまいます。そこは均等化していかないといけないと、特に意識はしています。

---:そこを指導していくのが、大人の役割ということですからね。

小池:これからもっと勉強していきたいと思います。

---:中学野球の指導者という立場でも、体育教員という立場からでもいいですが、今一番伝えたい想いはありますか?

小池:今の子たちは空間認知能力が非常に弱いと思うんです。

---:空間認知能力とは?

小池:物体が空中に動いてくる物を、自分が捕らえたいところで捕らえるということです。この能力を高めていかないといけないということです。

---:男子バレーボールの石川祐希選手はそれが非常に高いので、アタックの際に相手のブロックを振り切ってボールを捕らえられると聞いたことがあります。

小池:そうですね。ただ、そのリンパ系の感覚が育つというのは5歳くらいまでなんです。だから、そういう空中の物をつかむという遊びをしていないと、なかなか育たないと思うんです。

---:だから、お母さんもお父さんも、幼児のうちに子どもに物を投げて、それをつかむ遊びをやらせてほしいということですね?

小池:そうですね。それは大事だと思います。

---:生徒との接し方はどうですか?どの子にどういうことを言ったらいいのかという接し方ですが。

小池:それは一番意識してやっていることかもしれません。この子には強く言ってもいいけれども、この子に対しては強く言いすぎてはいけない。というようなことは意識していますね。

---:期待しています。頑張ってください。

小池:ありがとうございます。

※ ※ ※

体育の教員を目指して、その願いがかなった。想いのあった野球部の指導も担うことになった。しかし、まだまだ教員としても、野球の指導者としても、船出したばかりだ。

一つひとつを経験しながら、今の現場を大事にしながらキャリアを積もうとしている。そんな姿勢がひしひしと伝わってきた。中学の部活動の現場では、指導教員の不足が叫ばれている。それだけに男女関係なく野球部を指導できる教員は、大切な存在になっていくはずだ。

小池教諭は「(野球部の)人数を増やしていかなくてはいけない。練習メニューも限られてしまうのですが、野球を面白いと思ってい続け欲しい」という想いが強い。生徒たちと年齢が近いこともあり、何でも相談できるお姉さんという立ち位置も含めて、期待して見つめていきたい。
《手束仁》

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