さっそく中に入ってみると会議室がいくつもあり、囲むように並んだ事務机の上に冊子や雑誌、本、ウエアやバッグ、自転車のパーツなどが並んでいて、なんだか文化祭の模擬店のよう。出展者によっては机にカバーを掛けたりと多少の飾り付けをしていますが、そのままというところが大半で、肩ひじ張らない雰囲気が漂っています。まずはどんなものが展示されているかと、ひと通り見て回ることにしました。

『いきなりロングライド!!~自転車女子、佐渡を走る~』の著者、アザミユウコさんも出展
最初に立ち寄ったのが、「りんりんくらぶ」というサークル。そこで代表を務めるわたまるさんに話をうかがいました。ロードバイク歴はまだ2年とのことですが、自身で手がけた冊子「りんりん通信」の最新号はVol 2.5(「.5」の意味は…。すいません、聞きそびれました)。彼に限らずコミックマーケットなどで冊子やキャラクターグッズを制作&販売した経験のある人が、自転車に目覚めて今回のイベントに参加したというケースが多いようです。だからサイクリングに出かけることもレースに参加することも、そして冊子やグッズを作ることも等しく楽しんでいる印象。いわば自転車が格好の"おもちゃ"になっているというわけです。
執筆や編集を生活の糧としている僕にとって、余暇をつぶしてというのは思いもよりませんでした。しかしこの場に集った人たちは、時間だけでなく資金も投入して冊子や本を作っているのです。これは自転車ではなく飲食物関連のものでしたが、まるでプロはだしという凝った装丁の本もあり、いったい何冊作ったのかと聞くと「1500部」と、やはり趣味の世界を逸脱した答えが返ってきました。たとえ"おもちゃ"であったとしてもそれが単なる自己満足ではなく、読む人や使う人のことを意識した"作品"あるいは"商品"となっていることを、あちこちのブースで思い知らされました。
とある会議室の隅にはロードバイクが置かれ、そこに何人もの人が集まっています。興味をひかれて近づいてみると後輪のハブ近くにスマートフォンがセットされているだけで、別段変わった様子はありません。いったい何かと思ったら、これがなんと自動変速機。速度やペダルの回転数を検知し、最適なギヤの組み合わせを決めているようです。変速機そのものも、機械式の既成品にモーターなどを装着して改造したということにまずビックリ。

パッと見てわかるのは、後輪のハブ近くにスマートフォンがセットされていることだけ
加えてスマートフォンに搭載したアプリの開発は本業ということで、前後のギヤの組み合わせのうち使わないものを任意に削除できるなどメーカー顔負けの機能も有しています。そのアプリではルートラボとグーグルマップを連動させ、実際の走行においてシームレスに使えるようにした「ルートラボビューワ」も開発。こちらはすでにグーグルプレイに登録されています。
マウンテンバイクはアメリカの若者たちが既存の自転車を改造し、それで山を駆け下ったのが始まりとされています。趣味の延長線上で作った"おもちゃ"も、そこに情熱が注がれ続けるとやがて"作品"や"商品"になる…。これは1970年代後半も今も変わらぬものとして、創造者たちに受け継がれているというわけです。