着脱容易なフットウェアが誕生するまで…「ナイキ フライイーズ」開発秘話 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

着脱容易なフットウェアが誕生するまで…「ナイキ フライイーズ」開発秘話

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着脱容易なフットウェアが誕生するまで…「ナイキ フライイーズ」開発秘話
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ナイキは、「ナイキ フライイーズ」が完成するまでの道のりを公開した。

ナイキのイノベーションやインスピレーションは、アスリートの声を聞くという単純な行動から生まれることがある。アスリートの意見は、プロプレイヤーから得られることもあれば、そうではない思いもよらないところから得られることもあるという。

同社のデザイナーであるトビー・ハットフィールドは、そのような意見に対応するいくつかのプロジェクトに関わってきた。その中の一つで、彼が特に関心を寄せていたのは、シューズの着脱やしっかりと足をホールドさせることが困難なアスリートのためのもので、簡単に履くことができて足をホールドできるシューズのシステムだ。

彼は、そうした問題を抱える何人かの個人と一緒に試作品を開発する中で、いずれはこのシステムを大量生産したいという思いが強くなった。その理由となった一人が、マシュー・ウォルツァーだ。彼は、予定より2ヶ月も早く未熟児として生まれ、肺が未発達だったために脳性麻痺が起きてしまい、片手しか自由に動かすことができなかった。

シューズの紐を縛ることに悩まされていた彼にとって、大学に進学すること自体大きな挑戦だった。その上、他の人にシューズの紐を縛ってもらうことを頼まなくてはならず、それを心配したウォルツァーは、「私の夢は、毎日誰かにシューズの紐を締めてもらわなくてはいけないという心配をせずに、自分の好きな大学に進学することです。16歳になり、私は自分一人で洋服を着ることはできますが、今でも親にシューズの紐を締めてもらわなくてはなりません。これはとても不満に思うと同時に、時に恥ずかしくも感じています」とナイキに手紙を書いた。

彼の手紙は、彼と同じような問題を持つスペシャルオリンピックスの選手たちと仕事をしてきたハットフィールドの手に届くことになった。ハットフィールドは、パラリンピック選手のためのデザインを手がける傍ら、ウォルツァーにも連絡を取り、彼の要望にかなう試作品の開発を始めた。そして2012年、ウォルツァーの元に、ハットフィードがデザインしたテスト用の試作品が届く。

「優れた才能を持つデザイナーの皆さんが心を込めて作ってくれたシューズのおかげで、生まれて初めて自分ひとりでシューズを履くことができました。毎朝このシューズを履くたびに、これまでにないほどの独立心と達成感を感じています」と当時のウォルツァーは述べている。

しかし、ハットフィールドは、開発をそこでやめることはなかった。ウォルツァーや同じ悩みを持つアスリートのために、作業を続けたのだ。ハットフィールドとチームは、1年以上をかけてデザインを改良し、ベルクロ、ジッパーからダイアル付きのケーブルなど、様々なシューレースを使わない方法を試した。

試作品開発にあたり、ハットフィールドは、ナイキ ハイパーダンク、ナイキ ズーム ソルジャーなど、ウォルツァーの好きなバスケットボールプレイヤーのレブロン・ジェームズに関わるシューズを意識して開発した。

しかし、レブロンのフットウエアは、マシューが必要とする足首のサポートを提供できるが、ハイトップのシューズは、脱いだり履いたりすること自体が難しくなる。ハットフィールドは、単に紐の部分を取り替えるというだけではなく、足がもっと簡単に入れられるようなシステムを作ることに注力したという。そして、ハットフィールドは3年をかけ、「ナイキ フライイーズ」を開発した。

マシューをはじめ、障害を持つアスリートと話をするうちに、シューレースに代わるものに加え、シューズの着脱が簡単であることも大事であるとわかり、フライイーズは、かかとのヒールカウンターの近くで開閉するジッパーを採用。足の出し入れが簡単にできる。さらに、足をしっかりとシューズに安定させられるので、これまでのようにシューレースを閉める必要がなくなる。

こうして、大学進学と、自分で自分のシューズを履くというウォルツァーの夢は、叶うこととなった。彼は現在、フロリダ・ガルフ・コースト大学の2年生で、特製のナイキ ズーム ソルジャー 8 フライイーズを履きこなしてキャンパスを駆け回っている。

ナイキは、ズーム ソルジャー 8 フライイーズを、7月25日(土)から8月2日(日)にロサンゼルスで開催される「2015 スペシャルオリンピクス・ワールドサマーゲームズ」に参加するアメリカの2つのバスケットボールチームに送るという。
《美坂柚木》

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