伊藤が3歳くらいのころ、トランポリンをやっていた姉について行ったのが"トランポリンとの出会い"になった。それから20数年、伊藤は日本トランポリン界を牽引する選手のひとりとして日の丸を背負っている。2012年ロンドン五輪では4位に終わり、メダルには手が届かなかった。日本のレベルについて伊藤は「弱くはないけど、まだ強くもない」と感じている。
「(演技の)美しさとかは細かいパーツパーツで言えば定評はありますが、全体の順位とか結果で言えばまだ中国のほうが上です。それにロシアとかヨーロッパの若手も強くなってきているので、日本も簡単に負けはないと思いますが、簡単に勝つこともできない。もっともっと日本としての努力が必要だと思います」
トランポリンは"跳ぶことで魅せる"競技だ。しかし、見た目以上に難しい競技でもある。
「見た目が美しさと面白さと、エンターテインメントのような、サーカスのようなダイナミックな技もやって、観てる方も面白いと思いますし、その中でも選手たちはスポーツとして独特の20秒しかない一発勝負の緊張感があって。楽しさもありながら、選手の20秒に対する駆け引きもあるので、すごい難しいというか、見た目よりも、ただ跳んでるだけに見えても、それ以上に難しい競技だと思います」
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2012年ロンドン五輪
たった20秒の闘い。「100メートル走の次くらいに早く終わる競技。その一瞬で勝負を決めないといけないので集中力が必要になる」と、伊藤はその短い時間に練習のすべてを注ぎ込む。
トランポリンは体操やフィギュアスケートと同じ採点競技で10種目を行う。他の競技と違うのは"一発勝負"の点だと言う。テレビ観戦などでは「その緊張感を感じて欲しい」と伊藤は話す。
「ちょっとでもコケたらそこからやり直すことはできないので、その緊張感はテレビ越しでも伝わるかなと思います。その中でも難しい技を美しくしなければいけないので、観ていて緊張感と面白さが同時に伝わるんじゃないかと思います」
【20秒しかない一発勝負の世界…トランポリン伊藤正樹選手 続く】