【山口和幸の茶輪記】ツール・ド・フランスのお弁当はパリのキャバレーと同じである | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【山口和幸の茶輪記】ツール・ド・フランスのお弁当はパリのキャバレーと同じである

オピニオン コラム
【山口和幸の茶輪記】ツール・ド・フランスのお弁当はパリのキャバレーと同じである
  • 【山口和幸の茶輪記】ツール・ド・フランスのお弁当はパリのキャバレーと同じである
  • リドのポスター。右下にソデクソ(Sodexo)のロゴがある
  • Dinner on Parisian river boat(セーヌ川を航行する船でディナーを楽しむパリジャン)
  • 100人以上の大所帯となるテレビ局は専属コックを数人帯同させて移動レストランを設営する
  • 100人以上の大所帯となるテレビ局は専属コックを数人帯同させて移動レストランを設営する
  • 取材陣や運営スタッフのためにゴールの町が郷土料理でもてなしてくれる
  • 取材陣や運営スタッフのためにゴールの町が郷土料理でもてなしてくれる
ツール・ド・フランスを走る選手たちは、コース上に設定された補給地点でサコッシュと呼ばれる布袋に入った補給食を受け取り、それを食べながら走る。じゃあ、審判団や大会主催スタッフなどはどうしてるの? 実はスタート地点でお弁当が配布されるのだ。

ボクがツール・ド・フランスを追いかけ始めてまもなく、審判車両となる赤いクルマに乗せてもらったことがある。スタート前は関係者だけが入場できる「ビラージュ(村)」という柵に囲われた特別なエリアで歓談し、レースが始まると選手らに前後してコースを走るクルマの後部シートに乗った。お昼時になるとドライバーが無線で「これから任務を離れてランチにするから」と各所に連絡。一気にスピードを上げて先行すると、丘の上のゴキゲンな木陰を見つけて審判車両を駐めた。


取材陣や運営スタッフのためにゴールの町が郷土料理でもてなしてくれる

クルマのトランクには、同乗の審判とドライバーとボクのために立派なランチボックスが詰め込まれていた。まるでピクニックだ。まずはクーラーボックスから冷えたシャンパンが取り出され、ガラス製のシャンパングラスにそそがれた。上等な琥珀色の液体を飲み干すと、次は赤ワインのためのグラスが出てきた。

こいつらは毎日こんなことをやっているのかと初めて知ったのだが、そのとき気づいたことは、「ああ、このレースは世界最高峰の競技であるとともに、社交や娯楽が同時進行で展開していく一大イベントなんだな」ということだった。「仕事はきちんとするが、人生の楽しむべきところは外せない。だってフランス人だからね」とでも言いたげだった。

そんなことを考えているうちに、「選手たちが近づいてきたよ」とそそくさとグラスやランチボックスを回収し、任務に戻っていった。ただしこれは1994年の話で、現在のフランスは日本と同様に飲酒運転は厳罰に処せられる。ツール・ド・フランスのコース途中にもアルコール検問があり、違反をすればその場で資格はく奪である。念のため。

保冷バッグに入ったランチボックスは、スタート地点の「ビラージュ」の奥で配られている。主催スタッフらは人数分のランチボックスと飲料などを受け取り、クルマに積み込んで出発するのである。このランチボックスを提供しているのが、大会スポンサーであるケータリング会社の「ソデクソ」だ。


Dinner on Parisian river boat(セーヌ川を航行する船でディナーを楽しむパリジャン)

「ソデクソ」はダカールラリーや全仏テニスなどの国際的スポーツイベントばかりでなく、パリのキャバレー「リド」、セーヌ川の観光遊覧レストラン「バトーパリジャン」、エッフェル塔の「レストラン・ドラツールエッフェル」などのディナーを提供。文化やスポーツとして格式の高いイベントにハイパフォーマンスなフードサービスを行う先駆者的存在で、従業員は41万9000人というからビックリ。

ちなみにボクたち取材陣はお弁当がもらえない。固いフランスパンをかじりながらハンドルを握りしめてゴールを目指すのみだ。
《山口和幸》

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