実は最初に電動アシストバイクのステップコンポに乗り始めたころ、ナビを持たずに走り苦労した思い出がある。
■ステップコンポで電池切れの悲劇
河口湖から71号線に入り、やっと標高500mを登り切ったものの、目的地の朝霧カントリークラブの曲がり角を間違え、そのまま下ってしまった。
道を間違えたことを発見したのは目的地から既に標高500mも下りきった地点。距離にして15km以上、また高度にして500mを再度登らねばならない。電動アシストバイクでの峠道でのバッテリー切れは悲惨だ。
電動の折り畳みバイクに乗りはじめで、まだ脚力のない私は既に手持ちの予備のバッテリーを2つも使い果たし、取材道具の重い荷物に加え、アシストがなく、モーターを引きずる重いペダルを踏んで引き返し、息も絶え絶えで目的地にたどり着いた苦い経験がある。この時私は、絶対にナビゲーションを持とうと心に誓った。
■高い解像度で美しい画面
今回はGARMINのサイクルスポーツモデルEdgeシリーズのトップエンド、「1000J」 (79,000円+税)をご紹介したい。機能は前回の「Edge810J」(59,800円+税)と基本的に大きく違いはない。
ボディサイズはひとまわり程度大きいが、薄い。ディスプレーは一回り大きく、3.9×6.5cm(810Jは3.6×5.5cm)だ。もっとも特徴なのは画素数。1000Jは、240×400ドット。810Jは160×240ドットだ。ただしトレードオフとして、バッテリーの駆動時間が短く17時間から15時間に低下している。(810J比較)
■キットには心拍計も
当然ながらEdge1000Jのキットにもマウントが2種類とスピード、ケイデンスの各センサー。それに心拍計のチェストベルトが付属。ベルトと心拍センサーは簡単に取り外せるので、ベルトの水洗いが出来、清潔に保てる。
■高いGPS精度
ほとんど810Jとの性能差が少ない中、私が惹かれたのはGPS精度の高さだ。細い路地道では嬉しい。それはGLONASS(ロシア衛星)と、みちびき(準天頂衛星)の受信が可能なこと。GLONASSは関係ないとしても、みちびきは位置精度を高めてくれる。
810Jでの精度はマックス誤差6m程度だが、1000Jではタイミングが良いと殆ど誤差3m程度まで高まっている。
もっとも、期待値としては誤差1m程度なのだが、まだみちびきは1基しか飛んでないので、将来3基になるまで待たねばならないのだろう。
■上級者には更に嬉しい、データが見られる
ひとつはシマノの電動コンポ「Di2」とリンクして、バッテリー残量やギヤポジショニングが確認できるのは便利だ。
■取り付けは簡単
1000J本体の取り付けは、810J同様しっかりしたハンドルマウントに押し付け、90度捻るだけで簡単に着脱でき、とても便利。
更に、ケイデンスセンサーとスピードセンサーがまたより簡単になった。
なんと、ケイデンスセンサーはクランクアームにウレタンのバンドで止めるだけ。従来のようにマグネットやセンサーをタイラップで取り付ける手間がない。
またスピードセンサーは画期的。Gセンサーをホイルのハブ部分にこれもウレタンのバンドで巻きつけるだけ。これは素晴らしい。どちらのセンサーも得意の2.4GHz、ANT+のワイヤレスでペアリングしてくれる。
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■セグメント機能
1000Jに新しいのが、「セグメント」として指定した任意の地点から地点までの区間を走ると、自動的に計測を開始し、終了してくれる。たとえば、決めたトレーニング区間があれば、その区間を通れば自動で計測し記録してくれるのだ。毎日の練習をするアスリートや、自転車ツーキニストにも便利な記録システムだ。
更にアスリートには「Vector J」(160,000円+税)のパワー計測ぺダルも用意されていて、自分の左右の脚力を計測できる。
■素早い直立上がり軽快な使い勝手
1000Jは私の愛機705Jに比較すると圧倒的に素早い起動で、気持ちがよい。スイッチオンで殆ど同時に起動し使える。機械的にボタンは電源ボタンがボディサイド左上に、そしてラップボタンが表面左下。スタート/ストップボタンが右下にあるだけ。
その他の操作はタッチスクリーンで行う。素手でも、手袋をはめていても走りながら使えるのは便利。ただし、事前に行き先設定などする場合は、冬用の厚手の手袋では狙いがしにくく、やや使い勝手が悪い。が、走りながら画面の切り替えは簡単。単にフリックするだけなので問題なく使え、操作性が良いのが特徴だ。
素手でのタッチスクリーンはほぼ満足行くが、設定をする時には敏感すぎてミスタッチする場合もあるので、慣れが必要。しかし、概ね満足。
画面の拡大、縮小は画面の「+・-」ボタンで可能。移動は手のひらボタンを一度タッチしてから行うので、走行中でも簡単だ。
■豊富な情報量、沢山のトレーニングページが作成可能
地図画面は当然ながら目的に応じて複数のジャンルを大別し作成出来る。例えば、レースとかツーリングとか、ポタリングなどだ。そして更にそれぞれに複数のページが作成出来るのは楽しい。
私は地図画面の他に、トレーニングページを3種類程度用意している。
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・ナビゲーションデータ画面
ベースは現在のスピード、目的地までの距離、目的地到着時間、目的地名、現在時刻、走行距離、ケイデンス、バッテリー残量など、ツーリング全体に必要なデータ。
・登坂情報画面
スピード、勾配、高度、総上昇量、総下降量、心拍数、ケイデンス、カロリー、気温。
・帰路画面
スピード、目的地到着時刻、現在時刻、日の入り時間、気温、位置精度、走行距離、走行時間、積算距離、衛星受信状態。
これらの画面のその時々必要な情報に応じて、フリックで次々と表示させる。この操作性はとても良い。
地図データの他に、高度の経過グラフも表示されるので、アップ、ダウンも簡単に見られる。
■便利なクラウド、GARMIN CONNECT
Edge810Jもそうだが、GARMIN CONNECTと呼ぶ専用のクラウドで自分のデータならびに友人の走行データ(アクティビティ)も公開されていれば見ることも出来る。
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ここでは地図上に軌跡が入り、過去のコースが見られる。またスピード、高度、気温、ケイデンス、心拍数などグラフで表示されるので振り返って峠道の辛さや下りの速さ、途中で止まったコンビニの位置も確認できるのだ。これらはiPhoneならCONNECTと呼ぶアプリからも見られる。
各アクティビティは後で名前をつけるが、最新バージョンでは出発地点の名称がローマ字ながら自動的に付けられるので後から探しやすくなり、これも便利だ。
■iPhoneなどスマートフォンからもアップロード可能
このGARMIN CONNECTへのアップロードは基本的にはPCに接続して行うのだが、スマートフォンにブルートゥースでリンクし、本体でデータ保存時に自動的にアップロードしてくれる。これはとても有難い。つまりPCに接続する手間が不要なのだ。こうして自宅のPCでその日の走ったアクティビィティを確認できる。
GARMIN CONNECTでは走りたいルートを作成して1000Jに転送でき、これも便利だ。スマートフォンから友人にリアルタイムで現在地を送り続けることも可能になっている。
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■まとめ
Edge1000Jは8万円近いので、安い買い物ではないが、表示内容、操作性、クラウド対応など使い勝手の良さから個人的には満足しているナビゲーションだ。GARMINのカメラVIRB-Jともリンクして操作できツーリングの楽しみが倍増する。
もっともバイクの場合、細い道を設定するとやたら細い路地をくねくねと走らせるため、クルマが来ないことは安全で良い反面、多少まどろっこしい場合もある。その辺りはまず全体のルートを確認して効率の良いルートを探し、臨機応変に上手に使って欲しい。