いずれにしても、最近じわりじわりと耳にするようになっているのではないだろうか。
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■世界でも突出した日本女子野球の実力
2014年、野球の女子日本代表は世界大会を制し、4連覇を果たした。
大会全6試合であげた得点は63点。爆発力のある打線を引っ張るのは4大会連続選出、女子野球世界大会史上初の柵越えホームランを放った日本人唯一のホームランバッター、西朝美(AFB-TTR)。それは逞しい体の持ち主である彼女。テレビ放送を見ていたのだが、バックスリーンカメラから抜かれたその目つきには正直鳥肌が立った。
AFB-TTRで選手権監督を勤める西朝美
その大会でMVPに選ばれたのは対アメリカ決勝戦で7被安打も完封勝利をあげた里綾実(ディオーネ)。キレのあるスライダーが持ち味の日本のエースだ。2013年より女子プロ野球リーグに入団しルーキーイヤー、分かっていても打てない投球術で最多奪三振投手賞を受賞した。
2013年当時の里綾実。2015年より兵庫ディオーネへ移籍
■「プロ野球」にない女子プロ野球の魅力…2014首位打者は打率5割
「野球」という日本人に慣れ親しまれた競技であることから、NPBと比較されることがとかく多い女子のプロ野球。男子のようなパワーやスピードはないけれど、イコール魅力がないということではない。女子プロ野球にはとてつもない選手達が活躍している。。
野球の技術がわかる人は、釘付けになるであろう選手がいる。三浦伊織(フローラ)。2014年の首位打者だが、その打率は脅威的。「安打製造機」と云われるイチローのキャリアハイは.387(2014年シーズンまで)。MLBの過去最高打率はヒュー・ダフィーの.440。三浦伊織が2014年に叩き出した記録は.500だ。
バットのトップを傾けたリラックスした構えからタイミングをとり一瞬止まったかと思うと全身をうまく使いボールに力を伝える。2打席に一度放たれる安打は人間の身体の理にかなった使い方から生まれる「芸術作品」といえる。
■六大学投手「女松坂」小林千紘を超える逸材…「女大谷」古谷恵菜
投手のレベルも気になるところ。NPBでは大谷翔平が160km/hを超える速球でスタジアムを沸かせている。女子野球界には過去、小林千紘という「女松坂」といわれた選手がいた。女子野球の強豪神村学園から明治大学に進学し、2001年に日本人女性として初めて東京六大学野球のマウンドに上がった。彼女の武器こそが130km/hを超える速球だった。その彼女を超えるであろう逸材が今季女子プロ野球リーグに入団した。
2015年東北レイアに入団が決まった古谷恵菜(福知山成美出身)。176cmの恵まれた身体全身を使い、二本の指でボールを弾く。「鍛え方次第で大きく化ける」と即戦力ではなく野球の英才教育を行い、一流の選手を育成する球団の東北レイアへ入団が決まった。小林千紘が松坂世代なら古谷恵菜は大谷世代。「女大谷」と呼ばれる日もそう遠くはない。
古谷恵菜入団へ
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■連載開始に添えて
今回の連載は、私、元女子プロ野球選手/現女子プロ野球東北レイア球団代表の益田詩歩がお届けする。14年の現役生活の間に出会ったたくさんの人々から学んだことや人生経験から、人はスポーツに触れることで幸せになれるとスポーツの可能性を感じている。第一回は敬意を込め長年携わらせていただいている「女子野球」について書かせていただいた。
スポーツの魅力は、上手/下手ではない。出来なくても楽しめる、スポーツに出会う入り口のひとつになれたらと思う。また、私が歩んできた女子スポーツが発展し、女子アスリートの夢の舞台が広がることを願っている。