アメリカでは日米野球でデッドボールを受け、右足を骨折したシアトル・マリナーズのロビンソン・カノが、故郷ドミニカのウィンターリーグに参加し問題ないことをアピールした。
マリナーズと言えば多くの日本人選手が在籍していたことで馴染み深い。現在も岩隈久志が同チームでプレーしている。だがなんと言ってもマリナーズの日本人選手で最初に思い出されるのは、2001年から2012年シーズン途中まで在籍したイチローだろう。
日本人野手は非力だから通用しないと言われながら、渡米1年目で首位打者と盗塁王、年間MVPと新人王のW受賞という離れ業をやってのけた。90年代の華やかなホームラン合戦が薬の力で演出されていたと知り、従来の野球に飽きていたファンの目にもイチローのスピードとテクニックは新鮮に映った。
イチローは2000年代を代表する偉大なプレーヤーだが、今季は所属先が決まらないまま年を越えてしまった。近年の打撃成績の低下や、41歳という年齢を考えれば仕方ないことだが、日本人としては寂しく感じている。
イチローにはダイヤモンドバックス、オリオールズ、ブルージェイズなどが興味を持っていると報じられてきた。しかし、いずれも具体的な話はなく、興味の範疇を出なかった。それがここにきて、にわかにマーリンズが獲得の意思を示していると報じられた。
マーリンズの地元紙マイアミ・ヘラルドは「マーリンズがイチローに1年200万ドル(約2億3600万円)の契約を用意している」と伝えた。
The @Marlins have their sights set on Ichiro: http://t.co/1WStfoNTDR pic.twitter.com/htsXWyBBlL
MLB (@MLB) January 22, 2015
MLB公式サイトでは、マーリンズがイチローに提示するのは2年契約と報じていたが、マイアミ・ヘラルドなどは単年と伝えている。
今後どう動くか分からないが、現時点での現地メディアの評価や声をまとめながら、この契約を少し掘り下げてみたい。
まず大前提としてあるのは、マーリンズもイチローをレギュラーとは考えていない、あくまで”第4の外野手”と位置づけていることだ。年俸200万ドルの評価にも表れている。
ヤンキースでの2年間、イチローの年俸は650万ドルだったから、3分の1だ。
マーリンズの外野はメジャー屈指の飛ばし屋ジアンカルロ・スタントンを筆頭に、強力なバッターが揃っている。昨季ホームラン1本に終わり、ノー・パワーと評価されたイチローが彼らの中に割って入るのは、難しいだろうというのが現地の声だ。
イチローはチーム戦術の中でオプションの役割、スピードや守備のスペシャリストとして求められている。
マイアミ・ヘラルドのバリー・ジャクソンは「まだ確実ではないが、マーリンズ関係者はこの契約に楽観的だ」としている。一方MLB.comでこの件を報じたアダム・ベリーは「引っかかるとしたら契約年数だろう」と書いている。
「14年間で2844本のヒットを打っているイチローは、メジャー通算3000本安打まで156本と迫っている。控え外野手扱いであれば、達成には2年を要するだろう。そのため複数年契約を提示してくれるチーム待ちなのではないか」という論調だ。
確かに記録にこだわるのであれば、2年は必要になる。加えて年俸200万ドルのバックアップでは、それほどチャンスをもらえない可能性もある。例年のイチローは春先あまり調子が上がらず、暖かくなるにつれ快音が聞こえ出す。開幕当初は少し辛抱してもらう必要あるが、高額契約したスター選手ならともかく、控え野手にそこまで付き合ってくれるかは分からない。
200万ドルは端金ではないが、メジャー選手の年俸としては高くもない。
もしイチローがオファーを断った場合、マーリンズは控え外野手を獲得するためトレード、もしくはフリーエージェント中のネイト・シャーホルツと契約を結ぶと予想されている。ジャクソンは「シャーホルツはイチローと同じ左打ちの外野手で、キャリアの大半を右翼手として過ごしてきた」と紹介した。
マーリンズから提示された条件は、イチローにとって難しいものだ。現役を続けることはできるが、打者としてはチャンスが限られるだろう。オリオールズなどからのオファーも待ちたい。しかし、あまり引き伸ばしすぎると、シャーホルツという代役の具体的な名前も出ている。
マイアミ・ヘラルドは「41歳でもまだイチローはやれる」と、過去3シーズンの成績を紹介しながら、この契約について書いた。その思いは日本のファンのほうが強く持っているはずだ。
近日中に大きな報せがあるか注視したい。