シマノの機能路線を強引にけん引した三代目社長、島野敬三さんが1980年代になって中国の女性が化粧をし始めたのを見たとき、「こら戻らんで」と断言した。中国女性の多くが化粧を楽しむ自由な時代の到来を見抜いたのである。
◆一過性の流行か、根付くか…「戻るか戻らないか」
敬三さんが新しい商品をつくる際には、「これ、元のヤツに戻るんか」と常に口にした。一時の流行で終わってしまうものは掃いて捨てるほどある。自動車のオートマチックのようにあと戻りしなければ、それがスタンダードとなっていく。
「戻らへんヤツは世界的に浸透していくはずや」という敬三さんの言葉がデュアルコントロールレバーやインデックスシステムを世界標準にしたのだ。
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人間というものは一度ラクなことを覚えると、もう二度とあとへは戻れない。ボクも歳を追うごとにそれは痛感している。で、段ボール宅配便のラクチンさを知ってしまうと、二度と重くてやたらと気を遣う輪行袋なんて担げないのだ。
自転車を段ボール箱に入れて宅配便で送ってしまえば済むのだ。設定料金の最大サイズに収まる専用の段ボール箱や硬質ケースが販売され、インターネットで手続きが完了する配送システムもある。箱の中に収納するので高価な自転車をキズつけないで送れることが利点。
段ボールやプラスチックでできた輪行箱は、「3片の長さが240cm」になるようにその大きさが設定されている。一般的な宅配便は160cm以内のものしか扱えないので、「240サイズ」を受け入れてくれる貨物便の取り扱いとなる。ヤマト運輸なら「ヤマト便」、佐川急便なら「飛脚ラージサイズパッケージ」だ。
◆宅配便利用の推進を図るイベント事業者も
ちなみに自宅のある神奈川県から伊豆大島まで送ったが、料金は片道2600円程度だった。自宅から輪行した場合、最寄り駅までタクシーで1000円ほどかかるし、重い自転車を担いだり、ラッシュアワーを回避して日程を組むなんていう憂うつなことから解放してくれる。
目的地のホテルなどに送る場合は、あらかじめ電話でその旨を伝えておく。そして迷惑のかからないところに空き箱を置かせてもらったり、他の利用者が困惑しないように自転車を取り回すことがマナー。帰宅時の集荷もお願いしておく。着払いにすれば配送業者を待たなくても帰路につける。
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製函会社が航空会社の協力を得て、自転車イベント参加者に「どうして宅配を使わないのか」と調査したところ、「宅配できるのを知らなかった」「送れるとは考えたこともなかった」という回答が多くを占めたという。航空各社としても、自転車の取り扱いが大変なこと、トラブルの心配が絶えないことがあり、今後は製函会社などと協力して宅配便利用を推進したいという。
ボクが愛用しているのはハニカムコア樹脂製のコーワBTBプロ。自宅までの送料込みで3万7584円(税込み)。使用時のサイズは750×1230×380mmだが、ワンタッチで折りたためるので使用しないときは高さが6分の1になる。段ボール箱はぶつけたり粘着テープを貼ったりはがしたりしているとすぐにボロボロになるので、耐久性のあるものがオススメ。