この連載でも何度か書いてきたが、低山だからといって侮っていると痛い目にあう。また、低山だからといって玄人ハイカーやトレッカーが楽しめないかといえば、そうとも限らない。
それをあらためて知る機会になったのが、今回の湯沢挟ハイクであった。
湯沢挟とは、茨城県の奥久慈地方にある渓谷だ。川あり滝あり鎖場あり巨岩あり。今回は、湯沢挟から篭岩までのコースを歩いた。
入山してすぐに登山者を出迎えてくれるのが、不動滝である。約20mの高さから水が落ちる姿は、それだけでも素晴らしいのだが、滝のすぐそばに鳥居が建っており、鳥居と滝を併せて眺めると滝がより神秘的な姿に映る。
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不動滝。鳥居と滝と山ガール。
滝を抜けると、岩の合間を縫って沢沿いを歩く道に出る。鎖や木の根を支えにしながら登る道で、適度なスリルが味わえる。大きな岩に挟まれた道は、幽玄な雰囲気を漂わせていて、ひんやりとした気分にさせてくれる。
次第に道は険しくなり、傾斜の急な鎖場を抜けると、篭岩展望台に出る。篭岩の岩は風雨で削られ、カゴの目状に穴が空いている。自然の力で空いた穴は、不自然な程に美しく、奇妙な光景を生み出していた。この光景が一見の価値アリ。山に登りながら、自然アートの世界に浸ることができる。
篭岩展望台からの景色も絶景だ。奥久慈の低い山々が緑の絨毯のように広がり、心をすっきりとさせてくれる。
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篭岩の山容。今回は湯沢挟から入り、篭岩まで歩いた。
「このコースは初級者から中級者にレベルアップしたい方にはオススメです。岩場はなかなかの緊張感がありますし、鎖場や岩登りの練習にもいい場所ですね」
山の師匠こと、ストームフィールドガイドの山本さんが話す通り、今回のコースは初心者には不向きである。足場が悪いし、急な鎖場も多い。だが、危険な場所が多い分、それを乗り越えた先にある感動も大きい。
実をいうと、今回はひとつもピークを踏んでいない。それでも、このコースの面白さと展望の良さがとてつもなく大きな充足感を味わわせてくれた。
今回筆者と一緒に湯沢挟を歩いてくれたのは、師匠の山本さんと現役山ガールのKさん。3人で歩いた奥久慈の山旅は、甘く危険な旅となった。
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休憩場所で地図を確認する山本さんと山ガールのKさん。旅の詳細は次週にて。