【THE ATHLETE】平野佳寿が担う重責、侍ジャパンの攻撃はマウンドから始まる | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE ATHLETE】平野佳寿が担う重責、侍ジャパンの攻撃はマウンドから始まる

オピニオン コラム

侍ジャパン・平野佳寿(2017年3月15日)
  • 侍ジャパン・平野佳寿(2017年3月15日)
  • 侍ジャパン・千賀滉大(2017年3月15日)
  • 侍ジャパン・平野佳寿(2017年3月12日)
  • 侍ジャパン・小久保監督
「2017 ワールド・ベースボール・クラシック」(WBC)2次ラウンドE組第3戦が3月15日に東京ドームで行われ、日本はイスラエルを8-3で破り4大会連続の準決勝進出を決めた。

日本の先発は今大会ずっと中継ぎで活躍してきた千賀滉大投手(ソフトバンク)。初回の先頭打者をヒットで出してしまうが、その後は落ち着いて後続を断つ。小林誠司捕手(巨人)のリードも冴え渡っていた。キューバ戦では外に構えることが多く、安易な『強打者にはアウトロー』信仰にハマっているようにも見えたが、この日は千賀のストレートを生かした高目要求が効果的だった。

試合後の会見で千賀も小林のリードに感謝を示している。

「今日は僕の代名詞じゃないですけど、フォークボールがあまり良くなかったんです。その中で(小林)誠司さんが真っ直ぐと変化球を生かした良いリードをしてくれたのが良かったかなと思います」

先発の役割を果たした千賀滉大
(c) Getty Images


■4番の殊勲弾を生んだ平野佳寿の好投

打線は六回に筒香嘉智外野手(DeNA)のソロホームランから火がつく。高目にきた141キロのストレートを弾き返した打球は、センターバックスクリーン横に飛び込む完璧な当たり。

このホームランを振り返って筒香は、先発して5回を1安打、無失点に抑えた千賀とともに、六回を三者凡退に抑えた平野佳寿(オリックス」)が試合に良い流れを呼び込んだと語っている。

「それまでに千賀と平野さんが良いテンポで良い流れを作っていたので、あのホームランも出たかなと思います」

2次ラウンドに入ってからの平野は大車輪の活躍。侍ジャパンのブルペンでは欠かせない存在になっている。ともすれば派手にホームランを打つ筒香、中田翔(日本ハム)、山田哲人(ヤクルト)といった打者や、投手陣でも力強い投球を見せた千賀、クローザーとして安定感ある投球を見せた牧田和久(西武)、オランダ戦でバレンティンとの息詰まる勝負を演じた秋吉亮(ヤクルト)に目を奪われがちだ。しかし、今大会の平野は影のMVPと言っても過言ではないほどの働きをしている。

■2次ラウンドでフル回転

1次ラウンドのキューバ戦では八回の頭から登板し、ランナーふたり出して2アウトから秋吉にマウンドを譲った平野。この姿に不安を感じたファンもいたことだろう。続く中国戦では八回を三者凡退に抑えたが失礼な話、中国打線の貧打を思うと参考記録程度に感じていた人もいたはずだ。

2試合のピッチング内容を比較してみると、目につく変化はフォークボールを効果的に使い始めたことだ。キューバ戦では1球しか投げさせなかったフォークを、中国戦では大野奨太捕手(日本ハム)が決め球として要求している。

WBC球でも平野のフォークが使えることを実戦で確認した首脳陣は、ここでブルペンにちょっとした、しかし重要な配置転換を加える。先発投手の後に平野を持ってきたのだ。

2次ラウンド初戦のオランダ戦では、石川歩(ロッテ)が三回5失点でマウンドを降りたあと、四回のマウンドに平野を上げた。この起用に平野は二者連続三振を含む三者凡退で応えてみせる。決め球のフォークも狙い通りに投げられていた。

続くキューバ戦でも平野は四回4失点で降板した菅野智之(巨人)の後を受け、2番手のマウンドに上がる。平野は9球で打者3人を切って取りキューバ打線の勢いをストップした。

見事な火消しを続ける平野佳寿
(c) Getty Images

イスラエル戦でも平野は先発の千賀からマウンドを託されると、最速150キロのストレートとフォークでイスラエル打線を封じた。イニングをまたいだ七回に二塁打を浴び1アウト二塁で降板したが、これは少しベンチが欲張ったのか今後のことを考えてテストしてみたかったのか。

いずれにしても先発投手のあとに平野を登板させる起用が2次ラウンドではハマった。私は以前、侍ジャパンは千賀をブルペンのジョーカー的役割に抜擢してみてはどうかと提言した。

【THE ATHLETE】侍ジャパンの投手起用問題、必要なのはクローザーよりジョーカーだ

しかし、首脳陣としては千賀には長いイニングを投げてもらいたいのだろう。第2先発の役割、あるいはイスラエル戦の起用を見ると決勝ラウンドで先発に回す可能性もある。さりとて相手打線の勢いを止める投手も重要だ。そんなとき平野のフォークに目処が立ったことは大きい。

先発投手に疲れが見えたところで、最速150キロ超のストレートと外国人バッターが苦手とするフォークを決め球に使える平野の投入。ピシャリと抑えて試合は後半へと向かっていく。

■守りからリズムを作る侍ジャパンの要

プロ野球開幕前に行われるWBCでは普段通りの戦い方ができない。先発投手はシーズン中の良い時期ほど仕上がっていないため、球数制限を抜きに考えても五回前後が降板の目安になる。ここで第2先発を持ってくるのが従来の侍ジャパン。そして中継ぎ、クローザーへとつないでいく。

先発投手のあとに先発が専門の投手を投げさせる、第2先発システムは他国ではなかなか見ない。先発が五回で降りても第2先発が2イニングを投げれば、ふたり合わせて7イニング。あとはセットアッパー、クローザーが普段通りの仕事をすれば良い。

日本を2度のWBC王者に導いた継投だが、2次ラウンドで小久保監督は第2先発の枠組みを外した。例外はオランダ戦で2イニング投げた千賀だけだ。首脳陣は球数制限を意識しながら小刻みな継投で乗り切る作戦に方針転換。これは結果的に良い判断だった。

今回の侍ジャパンは先発の直後に本来ならクローザーもできる経験値の高いリリーバーを配置。彼には試合の流れを整え、後半に向けて良いリズムを作ることが求められる。

エース級の先発投手からバトンを受け取っても見劣りせず、リリーフ経験が豊富で安定感のある投手。こうした条件に合致したのが数多くの修羅場をくぐり抜けてきた平野だ。

2次ラウンドの3試合すべてで平野が投げると試合にリズムとメリハリが生まれ、直後の攻撃で日本は得点している。そこからロングリリーフの千賀につないだのがオランダ戦、中継ぎ陣につないで細かな継投で躱したのがキューバ戦とイスラエル戦だ。

■「勝つパターンの継投ができた」

そういった風に考えると、オランダ戦は日本野球の底力を見せるとともに、今後の継投を考える上で非常に重要な一戦だった。

試合後の会見で小久保監督は本大会6試合を振り返り、「勝つパターンの継投ができた」と語っている。

継投への手ごたえを感じる小久保裕紀監督
(c) Getty Images

「打線のほうは正直こんなにホームランが出るとは予想してなかったんですけど、本戦に入ってから日本のバッターのスイングが鋭くなってきましたし、効果的なホームランが多かったなという印象ですね。あとは隙があれば走れるというのもあったと思いますけど、どちらかと言えば今回は打ち勝った試合が多かったかなと思います。

投手陣は千賀は中継ぎ起用でと話をしていたんですけど急遽先発に回ってもらったり、あとは調子の良い選手を見極めながら、どちらかと言うと偏った継投になったと思いますけど、勝つパターンの継投ができたと思います」

調子を見極めながらと言うように、中盤から終盤へ向かっていくイニングの継投は流動的だった。一方で平野の2番手、牧田の抑えは固定されていた。

先発が五回まで相手を抑えて平野が試合のリズムを整える、七回以降はリリーフ陣が踏ん張ってお膳立て、最後はクローザーの牧田で締めくくる形が見えた。投手起用の中で明確にする部分と、遊びを持たせる部分とをバランス良く混ぜていた。

これを小久保監督はアメリカへ持って行きたかったのではないか。

勝ち継投を固めてアメリカに行くのか、もしもを考えて出番が少ない選手たちの最終テストを行うのか。イスラエル戦は難しい二者択一だった。小久保監督ら首脳陣は前者を選んだ。

「まともに行けばなかなか勝てない相手です。何か手を打たないといけない。日本の投手陣の調子は見極めてますが向こうの気候に合うのか、乾燥しているところでボールに馴染むのかも見ないといけない。向こうに行ってから準決勝の登板を決めたいと思います」

2次ラウンド終了後に渡米して現地で調整する侍ジャパン。今後の調子次第では勝ち継投で考えていた投手が使えなくなるかもしれない。そうしたとき2次ラウンドで出番がなかった投手を投げさせて、打ち込まれるようなことがあれば小久保監督や権藤博投手コーチは大批判を受けるだろう。

それでも小久保監督は自分と自分が信頼した選手たちを信じることにした。すでに腹はくくっている。

「(選手を送り出す上で心がけたことは?)一番は信じるということですかね。自分が送り出す選手を信じるということと、自分が決めたことに対して信じてあとは結果を待つだけという心境を常に自分に言い聞かせていました」

ならば見ているほうも、あとは信じるのみである。

《岩藤健》

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