実績、世界的な注目度から言えば、大晦日に天笠尚と対戦するギジェルモ・リゴンドーは、本来なら日本のリングで試合を行うレベルの選手ではない。
◆文句無しの成績、だがしかし…
2000年シドニー、2004年アテネとオリンピックを2連覇。プロ転向後も14戦無敗(9KO)でWBAとWBOの2団体統一世界王者だ。
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ギジェルモ・リゴンドー 参考画像(2013年4月13日)(c)Getty Images
2013年4月には当時4階級、後に5階級制覇する"フィリピンの閃光"ノニト・ドネアを完封、スーパーバンタム級最強決定戦を制した。この試合は競技者としてのリゴンドーの強さを天下に知らしめたが、同時に商品価値がそれほど高くないことも見せてしまった。
ドネア戦で70万ドルのファイトマネーを受け取ったリゴンドーが、大晦日の試合で得る金額は50万ドルと言われている。普通であればビッグマッチを制し、これから大金をつかみ取る時期なのに、なぜこの金額で日本に来たのか。
◆玄人受けする勝利に徹したファイトスタイル
軽量級屈指のパンチャー、ドネアを完封したディフェンステクニックはオリンピック2連覇した選手だけあり、目を見張る物があった。しかしディフェンシブ過ぎた。相手に背を向け距離取るなど、打ち合いを好むアメリカのボクシングファン、関係者の心証を悪くする場面が多々あった。試合後には、リゴンドーのファイトスタイルをめぐり、メディアを二分する論戦になったほどだ。
これで弱ければすぐ引きずり下ろされて終わりなのだが、勝てそうな選手が見つからないほど強い。エンターテインメント性を求めるボクシング関係者には頭痛の種でもある。
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ギジェルモ・リゴンドー 参考画像(2013年4月13日)(c)Getty Images
抜群のテクニックで持ち味を殺され、やりづらいことこの上ない王者と戦いたがるボクサーはおらず、玄人向けすぎて放送局からの人気もない。勝利だけを求め観客に媚びないリゴンドーには、強いボクサーだが、観客を喜ばせるプロのボクサーではないとする評価がついてしまった。
だからこそ、この金額で日本に呼べたとも言える。
◆今回は良い試合がみたいというファンの率直な期待
リゴンドーの大晦日参戦にボクシングファンは、「リゴンドーのボクシングは嫌いだけど、強さで言うと別次元やで」「リゴンドーのワンサイドになりそうだな」「米国拠点でバリバリ活躍中の統一王者がわざわざ日本に防衛戦しに来るのなんてタイソン以来じゃないの」など、現役の世界最強クラス来日にざわついている。
普段ボクシング見ない人もチャンネル合わせる大晦日。アメリカで人気出なかったファイトスタイルが受け入れられるかについては、「ビッグネームの割に面白い試合が少ないのですが、今回はいい試合が観たいですね」「実力差があるから、オフェンシブ・リゴンドー先生というレアなモードも観られるかも?」と期待される。
東洋太平洋フェザー級王者の天笠は1階級下げ、リゴンドーとの試合に臨む。本人も「99%勝てない」と語るとおり、戦前の予想は圧倒的不利だ。しかし何かが起こる怖さあるのがボクシング。大晦日に大番狂わせを起こしてもらいたい。