林さんが作った誌面に心躍らせていたボク自身も大学5年の春から30年近く、ということは人生の半分以上を鎌倉で過ごしている。だからそれなりに愛着はある。混雑した砂浜、ベトベトした海風。排気ガスまみれの海岸道路に、「いやあ! リゾートってこういうのかあ。スゴいなあ!」なんて感動していた。

それが勘違いだったことはフランスの地中海沿岸に立って初めて分かった。紺碧の海。光り輝くビーチ。心地よく肌にまとわりつく乾燥した空気。パラソルが立てられたレストランでランチしていれば、汗なんてかくことはない。ここは地上の楽園かと思った。
鎌倉市と姉妹都市にあるのが、地中海の代表的なリゾート地ニースだ。ツール・ド・フランス主催社の競合新聞社が「パリ~ニース」というステージレースを開催していたので、かつてはツール・ド・フランスがニースを訪れることは少なかった。

ところがパリ~ニースをツール・ド・フランス主催社が傘下に収めたことから、ツール・ド・フランスもニースを堂々と訪問するようになる。近年は2009年、そして第100回大会となった2013年にニースを訪れている。
いやあ、それはもう「リゾートってこういうことなのね」と再確認するばかりである。ニースがコースとなった、その年のツール・ド・フランスを取材した後に、鎌倉の海岸に足を運んだときの敗北感といったらありゃしないのである。
第100回大会のときはツール・ド・フランス史上初めて地中海に浮かぶフランスのコルシカ島を訪問。さすがにこの景観は見事としかいうことがなく、大会4日目に飛行機でフランス本土のニースに渡るのだが、ニースの海岸が色あせて見えたくらいだ。地球には死ぬまでに見てみたい絶景がいくつかあるはずだが、ツール・ド・フランスを追いかけているうちに思わず立ち尽くしてしまうようなシーンを目の当たりにすることもある。

こんな壮大な規模のスポーツイベント、そんなにないと思うが、訪れたそれぞれの町で記憶に残る景色に出会えるのもツール・ド・フランスならではだと思う。