フランスの自宅から片道600km。ひとりクルマを走らせて、スペインのバスク地方で行わた6日間のステージレース、ブエルタ・アル・パイスバスコ取材。それを終えて帰宅した。
スペインで驚いたことは「アラシロ!」という応援の多さだった。チームスタッフや新城幸也本人ですら不思議がっているほどの人気ぶり。彼はグランツールの1つである、ブエルタ・ア・エスパーニャだけは走ったことがない。それにもかかわらず、普通に沿道で観戦しているおじさんたちは、私が日本人だとわかると「アラシロ!」と声をかけてくる。日本チャンピオンジャージをインターネットで購入し、サインをねだりに来るファンもいた。
彼がまだヨーロッパのプロ選手になる前、エキップ・アサダというチームに所属していた時代、このあたりのレースをよく走っていた。現在新城が走っているレースよりも一つ下のカテゴリーだったとはいえ、日本人選手の大活躍は自転車熱の高い、バスク地方のファンに強烈な印象を残していたよう。そして、その当時からファンたちは新城に注目し、今トップカテゴリーで活躍に喜び、応援してくれている。
こういう場面にふれて、ふと思い出した。私がフランスに渡ってからしばらく、チームヨーロッパカーの寮に住んでいた時があり、レースから帰ってきたサテライトチーム(育成チーム)の10代の選手たちに、よく手料理を振る舞っていた。今はその選手たちがプロ選手になり、第一線で活躍している。
プロ選手になった彼らにトップカテゴリーのレースで久々に会って「美和のごはんは美味しかった!」と言われると、覚えていてくれたんだと本当にうれしく、立派なプロ選手になったのねぇ~、これからの活躍が本当に楽しみ。なんて、これはもはや母心なのかもしれない(笑)。
ちょうど、このレースの1週間前。4月1日に新城は「自転車選手として12歳の誕生日」を迎えた。2002年、大学受験に失敗した石垣島の少年は傷心旅行のつもりでフランスに来た。そこで自転車競技に出会い、プロ選手になることを目指すことになる。
私は彼に出会い、異例のスピードでステップアップしていく姿を見てきた。12年前かぁ~、若かったなぁなんて思いながら、この歳になると年齢の話はしたくなくなる。でも、こうして選手たちの成長を目の当たりにしながら、1年1年自分もフランスでいろんなことを経験し成長してきた。そう思うと、歳をとるのも悪くない(笑)。そして、これからもこうして歳を刻んでいけたら幸せだと思う。
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