日本初上陸を果たした世界最高峰の戦い 名古屋開催のキーマンが振り返った今大会と今後の行方【WTT女子ファイナルズ】 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

日本初上陸を果たした世界最高峰の戦い 名古屋開催のキーマンが振り返った今大会と今後の行方【WTT女子ファイナルズ】

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日本初上陸を果たした世界最高峰の戦い 名古屋開催のキーマンが振り返った今大会と今後の行方【WTT女子ファイナルズ】
  • 日本初上陸を果たした世界最高峰の戦い 名古屋開催のキーマンが振り返った今大会と今後の行方【WTT女子ファイナルズ】

WTT女子ファイナルズ2023」が15日から17日まで、愛知県の名古屋金城ふ頭アリーナにて行われた。WTT主催としては日本初開催となった同大会。女子トップ選手が名古屋の地に集結し、3日間にわたり熱戦を繰り広げた。

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■2021年に始まった新シリーズ

2021年から始まった国際大会の新シリーズ『WTT(ワールドテーブルテニス)』。チャンピオンズ、コンテンダー、スターコンテンダーなどのカテゴリーに分かれた各大会が行われてきた。今回は、シングルスのトップ16名とダブルスペア8組が集結し女王を決める「WTTファイナルズ」の女子大会が日本初開催として名古屋の地に上陸した。

WTTのビジョンやミッションとして掲げられているのが、卓球をより世界的なスポーツに引き上げ、エンターテインメントを追求していくこと。これまではITTF(国際卓球連盟)主催のワールドツアーが主要大会として行われてきた。WTTは、音楽やダンスなど独自性のある演出で人々を楽しませることも念頭に置きつつも、世界ランキングのポイント加算対象にもなる。このシリーズには新たな存在として重要な位置を担う役割が期待されている。

2023年を締めくくる形で行われた今回の名古屋シリーズは、大会公式のSNSによる事前プロモーションに力が入れられ、現地入りしたトップ選手が名古屋城を満喫し楽しむ様子が届けられた。大会中の演出も含めて世界大会としての格式は保ちつつも、既存のファンだけでなく新たなエンターテインメントとして卓球を広げ、根付かせるという意味合いが濃く感じられた。

名古屋城を楽しむ選手たちの様子が伝えられた(C)WTT

■“中国の壁”に沈むも奮闘を評価

3日間の大会期間中に話を聞くことができたのが、WTTのイベント戦略ディレクターを務めるスティーブン・ダケット氏。かつてはテニスのWTAシリーズやATPワールドツアーなどに携わり、世界的なスポーツイベントに尽力してきた。

今大会は初日から日本のサウスポーエース早田ひな、15歳の新鋭張本美和、五輪2大会連続メダリストの伊藤美誠が出場。2日目からのダブルスでは長﨑美柚、木原美悠の“Wみゆう”が登場し、殊勲の準優勝に輝いた。また早田、張本は敗れたものの、東京五輪金の陳夢、パリ五輪金候補の孫穎莎という世界のトップ3とフルゲームの激闘を演じた。

早田は試合後に「今までは1、2本の差だったけど今日はラリーをやっているなかでの1球の差で負けてしまった」と語り、世界女王相手に奮闘した張本は、「(最終ゲーム)相手のタイムアウト後に少し相手の質が高くなった」と“中国の壁”について言及した。それでも、日本開催で大会を盛り上げる“アイコン”として確かな足跡を残した。

ダケット氏は日本選手について、「彼女たちは故郷で大会を経験することができてとても誇りに思っている。みんなとても才能豊かでしっかりと実績のある選手です」と称賛。さらに、「(今大会は)1年間でベストのプレーヤーであることを証明しなければいけない。WTTのイベントに出ることは簡単ではないし、素晴らしいことだと思います」と大会を彩った地元勢の奮闘ぶりを高く評価した。

張本美和(C)WTT

■随所に見られた大会のエンタメ性

また日本初開催のWTTシリーズを盛り上げたのが、会場に駆け付けたファンの存在である。名古屋だけでなく日本各地からファンが訪れただけでなく、国外からのファンも姿を見せた。なかでもシングルス、ダブルスともに優勝した中国の応援団は圧巻。日本勢で唯一決勝まで勝ち進んだ長﨑、木原が戦った孫穎莎、王曼昱との決勝では、国内の客を飲み込んでしまうような中国ファンからの大声援が選手に送られた。国内ファンと国外ファンが共存する様は国際大会に相応しい空気感があった。

ダケット氏は「日本人のファンはほかの外国のファンに比べたら少し静かでおとなしめの感じがしますが、それがこの大会をより独特で特別な雰囲気を醸し出すことにつながっています」と今大会の様子を振り返る。また、「WTTのイベントは世界中で開催していて、毎回音楽や照明、エンターテインメント面、いろんなイベントの工夫をしています」と日本流のオープニング演出も見られた競技外の部分についても言及した。

大会中はオフィシャルグッズや卓球用品の販売が行われたほか、選手の練習見学やファンブースでのサイン会も実施され、選手との交流時間も設けられた。トーナメント形式の大会では激戦が繰り広げられた一方で、「卓球」をいかにエンターテインメントに昇華させ、見るものを楽しませるか。これまで世界各国で開かれてきたWTTシリーズを組織の理念の下に日本でも認知させ、広げていこうとする工夫が随所に見られてた。

■日本の大会実績に太鼓判

今回の名古屋シリーズについて、「今回WTTを日本で開催するのが1回目で、大変喜んでいます。また女子と男子を分けてWTTの試合をするのも今回が初めてで、このような形で開催することができてとてもうれしく思います」と語ったダケット氏。今回の日本初上陸を経て、次回以降開催のプランは現状であるのか。

日本開催の今後について聞くと、「日本はWTTにとってとても大切な国だと理解しています。日本は素晴らしい大会を開催してきた実績がありますので、日本でWTTのイベントをもっと開催していきたいと思っています」とコメントした。人気選手を揃え、来年のパリ五輪でもメダル獲得が期待される日本でWTTシリーズを通した卓球のさらなる普及と、野球、サッカーのようなメジャー競技に続くようなスポーツエンターテイントの可能性を感じさせた。

3日間にわたり行われた「WTT女子ファイナルズ2023」。名古屋の地で繰り広げられた日本初開催の卓球の祭典を通して今後さらなる展開は見られるのか。卓球をより世界的なスポーツに、そしてエンタメ性を含んだものにするべく活動を続けるキーマンの姿があった。今大会を経て、WTTシリーズの近い将来の日本再開催に期待を膨らませつつ、これからの推移を見守りたい。

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取材・文●井本佳孝(SPREAD編集部)

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