「五輪金に間に合わない」早田ひな、中国トップ3撃破へ芽生えた危機感 “新スタイル”で挑む世界一への道【全農CUP大阪】 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

「五輪金に間に合わない」早田ひな、中国トップ3撃破へ芽生えた危機感 “新スタイル”で挑む世界一への道【全農CUP大阪】

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「五輪金に間に合わない」早田ひな、中国トップ3撃破へ芽生えた危機感 “新スタイル”で挑む世界一への道【全農CUP大阪】
  • 「五輪金に間に合わない」早田ひな、中国トップ3撃破へ芽生えた危機感 “新スタイル”で挑む世界一への道【全農CUP大阪】

卓球のパリ五輪第6回選考会「2023 全農CUP 大阪大会」が11月25日、26日、大阪府のAsueアリーナ大阪(大阪市中央体育館)で行われた。6回に渡って開催された選考会としては最後となった大会で準優勝したのが早田ひなである。

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■平野、伊藤に大差をつけ独走

東京五輪ではリザーブメンバーに回った早田だが、2022年から始まったパリ五輪行きをかけた選考レースでは選手層が厚い女子のなかで他を圧倒。2023年に入ってからも、全日本選手権や世界卓球、アジア競技大会といったカギを握る大会で結果を残してきた。

第6回選考会を前に700.5点を稼ぎ、2位の平野美宇、3位の伊藤美誠に大差をつけていた早田は、コンディションを優先しスキップすることも考えられた。それでも、試合を重ねることでより高いレベルへ到達することを意識して早田はこの大会へ乗り込んできた。

早田は、11月上旬の「WTTチャンピオンズフランクフルト」で対戦した現世界ランキング2位の王曼昱戦での敗戦(1-4)に言及。同年代で日本にとってはライバルのひとりとの戦いで危機感を抱いた。「もう一皮二皮むけないと五輪の金は間に合わないし、自分の卓球人生で世界一や世界ランク1位になることは厳しい」と現状を冷静に分析した上で国内の戦いにも臨んだ。

■「いつ負けるのか分からない」

パリ五輪行きを確実にしている早田が取り組むのが新たな卓球スタイルへのシフトチェンジ。「この選手はここに来たら点数が取れるとか、こういうボールが返ってくるとか、読みとか駆け引きは大体あるんですが、それを捨てて自分の中で勝負に行く」とよりリスクを冒し、スピードを意識した攻めに取り組んでいる。

今大会の早田はこれまでの実績から下馬評では優勝候補筆頭とされていた。それでも本人は「相手からしたら世界ランキング4位(現在は5位)、パリ五輪選考首位と思っているかもしれない」と自分の立場を見つつも、「積み重ねたものはゼロにした状態でどの選手に勝つか負けるかも分からない」と負けも覚悟しつつの挑戦であったと25日の試合後に語っていた。

25日の初戦では由本楓羽相手に4-0で快勝したものの、準々決勝では大藤沙月に第1、3ゲームを奪われる展開になり、スコア上だけで見れば簡単な試合ではなかった。

しかし、それも早田には織り込み済み。「いつ負けるのかは分かんない、というのは自分のなかで受け入れている。今日大藤選手に負けても自分自身としてはびっくりもしないし、私のなかではそれも目的を持った負けです」と新たなチャレンジの取り組み、五輪の選考会という舞台や“対早田ひな”というテーマを掲げて相手が挑んでくる中での戦いだったと明かした。

■張本美和相手に敗戦も……

それでも早田は準決勝に勝ち進み、初日に好調を維持していた木原美悠との戦いでは主導権を握る形で圧倒。巧みなサービスを軸に組み立ててくる木原の長所を封じながらも、早田らしい豪快な攻めやリスクをかけたプレーも垣間見られた。スタイルチェンジは一朝一夕で進むものではないとしつつも、「昨日より今日の方が良かった」と前日からの修正には手ごたえを感じていた。

そんな早田は準々決勝でパリ五輪選考ランキング3位の伊藤美誠を下し、決勝へたどり着いた張本美和と対戦。これまで8試合戦って全勝を誇っていた相手に、第4ゲームまで2-2の熱戦に。急成長を遂げる張本はラリー戦で早田相手に互角勝負を演じてきた。また、勝敗のカギを握った第5ゲームでは激しいデュースの攻防の末12-14で落とす。勢いをつけた張本がそのまま第6ゲームも奪い、選考会初優勝が15歳の手に渡ることになった。

早田は試合後に、「いろんな体のスピードもそうだし、腕のスピードもそうだし、打点のスピードは今日の試合でも出すことはできたんですが、それが勝ちにはつながらなかった」と振り返った。それでも、「(今回で)50くらいの感覚まで持ってくることができた。それはすべてに意味がある」と今大会への参戦を通じて得た実戦を通しての感触を前向きに受け止めた。

■新スタイルと向き合う時間に

今大会の準優勝で90点を加算し、早田のパリ五輪選考ポイントは790.5点まで伸びた。平野、伊藤がシングルス2位の座を争う来年の全日本選手権は、早田にとってポイントを意識した戦いではなく、今回の第6回選考会で見せたような中国のトップ3と互角にわたりあうため、より高いレベルを求めて自らの卓球スタイルと向き合う時間となる。

また、12月には「ITTF混合団体ワールドカップ」や、日本開催の「WTTファイナルズ名古屋」が控える。「孫穎莎選手や陳夢選手とやるより現実を突きつけられた」と語った王曼昱との戦いを経て、パリ五輪金メダルや世界ランキング1位へ照準を定める早田がここからどのように進化を遂げ、トップオブトップへの階段を駆け上がっていくのかは期待が高まる。

自己最高の世界ランキング4位へ到達しながらも、これまでのスタイルを捨てて、新たな試みへ取り組む。「優勝することも自信になるけどそこで卓球人生は終わりたくはない。もっと自分はできると思っている」と目の前の結果に一喜一憂することなく自ら掲げた目標へまい進する。群雄割拠の日本女子のなかでもエースとして格を上げた23歳が、世界一へ向けた道を突き進む。

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取材・文●井本佳孝(SPREAD編集部)

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