【コラム】映画作品に出演したメジャーリーガーを振り返る なかには俳優に転身した選手も | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【コラム】映画作品に出演したメジャーリーガーを振り返る なかには俳優に転身した選手も

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【コラム】映画作品に出演したメジャーリーガーを振り返る なかには俳優に転身した選手も
  • 【コラム】映画作品に出演したメジャーリーガーを振り返る なかには俳優に転身した選手も

新型コロナウイルスの影響により外出自粛が続く中、自然と家で映画を見ることが多くなった。時にはもう何年も見ていなかったDVDを、プレーヤーにかけることもある。少年野球をモチーフにした『がんばれ!ベアーズ 特訓中』(1977年)もその1本だ。


テイタム・オニール主演の『がんばれ!ベアーズ』の続編にあたるこの作品には、当時の現役メジャーリーガーの出演シーンがある。カリフォルニアの少年野球チームであるベアーズが、ヒューストンのアストロドームを訪れて地元チームと試合を行うシーンでのことだ。


この試合は公式戦前の“前座”とあって途中で打ち切られそうになるのだが、そこにヒューストン・アストロズの選手たちがやってくる。ビル・バードン監督を筆頭に3番バッターのシーザー・セデーニョ、4番バッターのボブ・ワトソン、エースのJ.R.リチャード……。ベアーズの少年たちは興奮のあまり声を上げるが、公開当時これを映画館で見ていた筆者の目も、スクリーンにくぎ付けになった。


なにしろ、それまでに見たメジャーリーグの試合といえば、テレビ放映された同年のワールドシリーズ第1戦だけ。まだ日本にはなかったドーム球場の風景や、スコアボードを活用したメジャーリーグ流の演出は新鮮だったし、「レインボー・カラー」と呼ばれたアストロズの派手なユニフォームは衝撃的ですらあった。


映画では、試合の続行を主張してグラウンド上を逃げ回る少年の姿を見て、アストロズの選手が「おい、子供たちにプレーさせてやれよ!」と叫ぶ。それがこの年、キャリアハイの22本塁打、110打点を叩き出したワトソン


当時31歳だったアストロズの主砲は、引退後はニューヨーク・ヤンキースのGM、メジャーリーグ機構の副会長などを歴任した。


≪文:菊田康彦●ベースボール・ライター≫


様々な映画に出演してきたメジャーリーガーたち


このような“ちょい役”で映画に登場するメジャーリーガーは少なくない。


1984年公開の『ナチュラル』では、80年にクリーブランド・インディアンスで新人王に輝きながら、メジャーでは短命に終わったジョー・シャーボノーが、架空のメジャー球団「ナイツ」の選手役で出演。


とんねるず・石橋貴明の出演でも話題になった『メジャーリーグ』(1989年)では、82年にミルウォーキー・ブルワーズでサイ・ヤング賞を受賞したピート・ブコビッチが、なんとヤンキースの4番バッターを演じている。


彼らの場合は引退した後のことだったが、現役中に違うチームのユニフォームで出演したのが、シカゴ・ホワイトソックス時代のフランク・トーマス。1993、94年と2年連続でア・リーグMVPに輝くこのスラッガーは、高倉健の助演でも有名な『ミスター・ベースボール』(1993年)に、ヤンキースのルーキー役で出演している。


この作品には元メジャーリーガーで、「アニマル」の登録名で阪急ブレーブスでもプレーしたブラッド・レスリーも出演していて、同じく日本で“助っ人”として活躍したレオン・リー(元ロッテ・オリオンズほか)の姿を見ることができるのも嬉しい。


アニマルは『リトル・ビッグ・フィールド』(1995年)にもミネソタ・ツインズの選手役で出演しているが、この作品には当時のシアトル・マリナーズの投打の看板だったランディ・ジョンソンケン・グリフィーJr.ら、多くの現役メジャー選手が登場する。



(c)Getty Images



もっともここまで紹介した映画は、すべて野球をテーマにしたもの。野球映画の数だけメジャーリーガーの出演もあるといって過言ではないだろう。


ちょっと毛色が違うのは「ミスター・オクトーバー」ことレジー・ジャクソンが出た『裸の銃(ガン)を持つ男』(1989年)や、長年にわたってヤンキースのキャプテンを務めたデレク・ジーターが出演している『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』(2011年)といったコメディ映画。


どちらも本人役なのだが、前者では悪者に操られたジャクソンが英国女王を暗殺しようとして、レスリー・ニールセン演じる警部補とドタバタを繰り広げ、後者ではこともあろうにヤンキー・スタジアムで不審者と間違われたジーターが刑事に撃たれ、「このアホ! オレはジーターだぞ」と悪態をつくといった役どころを、大マジメに演じているのが面白い。



(c)Getty Images



野球選手としてのキャリアとはかけ離れた役を複数の作品で演じたのが、ヤンキースと読売ジャイアンツで活躍したロイ・ホワイト。あのシルベスター・スタローンが無名時代に主演した『レベル』(日本未公開、ビデオのみ発売)、そして同作の監督によるホラー映画『The Premonition(「予感」の意)』(日本未公開)という2本の映画に出演。前者ではFBI捜査官、後者では医師を演じている。


俳優に転身した選手も


ただし、そのホワイトも本格的に役者業に進むことはなかった。実はメジャーリーグでプレーしたのちに、俳優に転身した例は非常に少ない。


その中で野球とバスケットの“二刀流”から俳優へという異色の経歴の持ち主が、日本でも人気を博したテレビドラマ『ライフルマン』の主演で知られるチャック・コナーズだ。



チャック・コナーズ 『’The Big Country』(1958年)プレミア出席時 (c)Getty Images



彼は高校卒業後にマイナーリーグでプロ野球選手としてのキャリアをスタートさせると、第二次世界大戦を経て、1946年からはNBAの前身であるBAAが新設したボストン・セルティックスでもプレー。再び野球に専念した49年に、ブルックリン・ドジャースで念願のメジャーデビューを果たす。


52年限りで引退すると、そこから本格的に俳優に転身。92年に71歳で死去するまでに、テレビドラマのみならず60本近い映画にも出演した。80年には日本映画『復活の日』で、草刈正雄らとも共演している。


コナーズは生前、バスケから足を洗った理由について「下手な選手ではなかったが、世界最高と言うにはほど遠かった。ディフェンスは良くてもオフェンスはからっきし。それが私だったのさ」と語る一方、「野球なしに、こうやすやすと俳優の道に進むことはできなかっただろう。この世界最高のスポーツに、私は永遠に借りがある」と話すなど、その“野球愛”は生涯変わらなかったという。


MLBとNBA(BAA時代を含む)の両方でプレーした選手は、コナーズも含めこれまでに12人。O.J.シンプソン(元NFL=アメフト)やドウェイン・ジョンソン(元WWE=プロレス)のように、プロアスリートから転身した俳優も何人もいる。


だが、現役時代にメジャーリーガーとしてプレーし、なおかつ俳優としてこれほどの成功を収めた者は、コナーズのほかにいない。


※各映画タイトル後のカッコ内年号は日本での劇場公開年。



著者プロフィール
菊田康彦●ベースボール・ライター
地方公務員、英会話講師などを経てMLB日本語公式サイトの編集に携わった後、ライターとして独立。2010年から東京ヤクルトスワローズを取材し、コラム「燕軍戦記」の連載を続けている。
2004~08年はスカパー!MLBライブ、16〜17年はスポナビライブMLBに、コメンテーターとして出演。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』、編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』などがある。

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