英国スコットランド・エディンバラに本社を構えるスカイスキャナーは世界展開され、日本人向けには2014年からサービスが開始。スカイスキャナージャパンによると、2016年第4四半期の売り上げは前年比の約50%増と急成長を遂げています。
先日、4年間の世界一周を終えて帰国した友人に会いました。航空券購入について質問すると、「なんだかんだでスカイスキャナー。他にも探せば安いのが見つかることもあるけど、面倒な割に、安くなっても少しだけ」と教えてくれました。
今回はバックバッカーとして旅をしながら感じた疑問や耳にしたウワサについて、スカイスキャナージャパンのCEO絹田義也さんとシニアプロダクトマネージャー上野隆一郎さんに話を聞きました。(聞き手はCYCLE編集部・大日方航)
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---:まず『スカイスキャナー』は少しでも安く航空券を買いたい人が利用すると思うのですが、『スカイスキャナー』を利用しない方が安くなるケースもあるのでしょうか?
絹田義也CEO(以下、絹田):『スカイスキャナー』の強みは、パートナー数の多さです。世界全体で1200社と提携しており、旅行者目線で購入可能なものを一覧表示できるようになっています。
質問の答えですが、『スカイスキャナー』を利用しないで安く買えるケースも、実はあります。それは、まだ提携していない会社が、我々が提携しているところより安く提供している場合です。
しかし、我々が把握している限りでは、国内の類似サービスと比較しても、 パートナー数が「数百単位」というのが最大ですので、『スカイスキャナー』で最安値を探せる可能性は高いと思います。
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---:世界中で1200社と提携していますが、パートナー企業を選ぶ際のガイドラインはあるのでしょうか?
絹田:内部基準としてはあります。ただ、外には開示していません。「旅行者目線で考えて、旅行者のためにならない企業とは取引しない」というものです。逆に取引開始した後もレビューを行い、パートナーとして適切かどうかを判断しています。「質への追求」という観点ではこだわっています。
「自由に旅がしたい」FITユーザーの増加
---:『スカイスキャナー』はどのような層に利用されていますか?
絹田:若年層、20~30代の利用が多いです。インターネットをモバイル端末で利用することに慣れている世代です。男女比でいうと若干女性が多いですが、やはり旅行が大好きないわゆる「コアな層」が中心です。
直近の旅行市場は、FIT(※)ユーザーが増えている。自分で航空券を手配し、ホテルも手配する。特に50代の利用が増えているそうです。より自由度が高まり、いつでも旅行に行けるようなスタイル。こうした個人旅行ニーズの高い中高年層にもサービスを知って頂き、利用者の年齢層を拡大して いきたいです。
※:FIT(Foreign Independent Tour)とは、団体旅行やパッケージツアーを利用することなく、個人で海外旅行に行くこと。
---:1枚の航空券が売れた場合、収益率はどの程度なのですか?
絹田:残念ながら具体的な数字についてはお答えできません。ビジネスモデルとしては、航空券が売り上がった際のコミッションと、スカイスキャナー上への広告掲載による広告売上で成り立っています。年間売り上げは公表していないですが、伸び率は2016年の第4四半期の売り上げが、前年の同期比のおよそ50パーセント増でした。
「日本発~海外着」の航空券を中心的に扱っているサービスが国内では多い中、「海外発~海外着」のサービスを手広く展開できている『スカイスキャナー』のようなサービスは国内ではほとんどないと思います。
---:『スカイスキャナー』の弱点を挙げるとしたら?
絹田:コア層が多いので、一般的にブランド認知がされていない点は改善すべきだと思っています。今後もメディアへの露出考えています。同時に、日本人に使い勝手のいいサービスを目指し改良していかなくてはならない。両輪でやるイメージ。いいサービスを作っても、認知されていないときっかけにもなりません。
上野隆一郎シニアプロダクトマネージャー (以下、上野):「航空券に特化したサービス」としては、すでにグローバルで高い評価を得ています。 現在、試験的に提供をはじめている、「航空券とホテルのセット販売」については、 これまでの実績をもとにさらに改良を進めていく予定です。ホテルでは、日本人のニーズに合う、クオリティーとのバランスを重視した検索結果を表示できていると思います。
---:日本人が使い勝手のいいサービスとは、どんなサービスですか?
上野:グローバルでプロダクトが運用されていく中でそれぞれの数字が出てきますが、日本だけ「この機能を実装してみたがパフォーマンスが良くない」などデータが出てきたりします。それがなぜか調べてみて、いくつかの仮説やソリューションを設定する。そして「こっちの機能が(ユーザーに)刺さるな…」など日々テストしています。
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---:具体例を教えてください。
上野:「日本の旅行者は何を求めているか」ということですが、それほど特異なニーズはないと思います。ただ『母国語しか喋れない。英語ができない』ことや、『客室にお風呂があるのが好き』などに高い数字が出ていたら、どう対応するか。
アジャイル(※)な開発をしているので、細かいテストを繰り返して反応を見ています。一部の人には(サービスの変化が)見えるけど、一部には見えないなど、 ABテストを通じて仮説と検証を繰り返しています。
※:短い開発期間単位を採用することで、リスクを最小化しようとする開発手法。
具体的には『温泉』や『日本語サポートをしているか』という条件での検索を可能にしたり、価格比較だけではなくポイントがもらえるようなサービスのテストなどを日本人には重要視しています。グローバル基準だけではなく、日本語など日本人が重要視するロジックを追加しているため、使いやすいサービスになっていると思います。
---:「居住国や言語設定を変えると安い航空券が見つかる」というウワサを聞いたことがあります。それは本当でしょうか?
絹田:海外だけでしか表示していないパートナーもあるので、可能性はあります。ただ、必ずしも海外が安いとは限らないです。『居住国設定をスペインに変えると安くなる』といった話を聞くこともありますが、そこは公式な見解ではありません。たまたまスペインにしか出していない航空券が見つかったのではないでしょうか。
日本にしか出していないパートナーもいるので、日本設定にした方が海外より安い航空券が見つかる可能性があります(※)。
※:実際に筆者もマニラ~インドネシア間を試してみたが、スペイン設定よりも日本設定の方が安かった。
新機能も次々に導入
---:現在オススメの機能はありますか?
上野:出発地、目的地別に、最も安く予約できる時期と、航空券の安い月・高い月が簡単にわかる「ベスト・タイム・トゥ・ブック」機能や、(旅先は決まらないがとりあえずどこが安いか調べることができる)「すべての場所」検索機能です。予算に合わせて調べる機能もあります。最近はLINEにBOT機能を導入して、対話形式で航空券を探せるようにしました。
【プレスリリース】#スカイスキャナー、「ベスト・タイム・トゥ・ブック」予約に最適な時期&最も安い月が一目でわかるツールを発表。ぜひ使ってみてくださいね!#海外旅行 #格安航空券 #夏休み #旅好きな人と繋がりたい https://t.co/93kOQric6D pic.twitter.com/CwXoYHvX4k
— Skyscanner Japan (@SkyscannerJapan) 2017年6月22日
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LINEのトーク上で航空券を比較検索できるサービス
---:ずばり、トラベルコちゃんで有名な旅行比較サイト『トラベルコ』と『スカイスキャナー』の違いはなんですか?
上野:我々はリアルタイム検索を重視していて、常にリアルタイムで航空券を検索できます。また、『スカイスキャナー』は、『トラベルコ』よりも直接提携している航空会社数が多く、『トラベルコ』が直接提携していない海外の航空会社や OTA(旅行代理店)の航空券情報は、『スカイスキャナー』の検索エンジンを通じて提供しています。
絹田:パートナー数は明らかに『スカイスキャナー』(1200社以上)の方が多いですが(トラベルコは公式サイトによるとパートナー数は350社以上)、『トラベルコ』は老舗のため日本オリジナルのツアーやパッケージ旅行の分野で非常に強い。その点、『スカイスキャナー』はFIT目線でやっているので、パッケージ旅行などは扱っていない分野です。
上野:パッケージ旅行は安いという感覚が強いようです。しかしFITをやると気づくように、実はパッケージ旅行の方が高い場合もあります。安いチケットを探すと断然に安いものもあるからです。でもパッケージ旅行は旅行会社に任せられるのでラクになる。
FITの増加には、オンラインの予約サービスが充実し、個人でも旅の手配が簡単に出来るようになった背景があると思います。 『スカイスキャナー』は旅行者の旅の選択肢を広げるサービス。使ってみると楽しい発見もあるので、ぜひ利用してみてください。
#スカイスキャナー が国内航空券に特化したページをスタート!お得な目的地や最安値がわかるだけでなく、人気観光地の注目スポットやお得情報を順次掲載。「#世界の絶景」詩歩さんチョイス「#日本の絶景島 ベスト3!」もご紹介。早速チェックhttps://t.co/rTLQfez6c8) pic.twitter.com/WddKF3KbM9
— Skyscanner Japan (@SkyscannerJapan) 2017年7月20日
●絹田義也(きぬた よしや)
スカイスキャナージャパン株式会社CEO。米マサチューセッツ州立大学コンピューターサイエンス学部修士課程修了。米EMC2 Corporationやヤフージャパン株式会社を経て、2016年4月より現職。英国スカイスキャナーリミテッドとヤフージャパン株式会社の合弁会社となるスカイスキャナージャパン株式会社で、日本における全事業の運営、推進を統括する。
●上野隆一郎(うえの りゅういちろう)
スカイスキャナージャパン株式会社シニアプロダクトマネージャー 。米デブライ大学ウエストヒルズ校コンピューターインフォメーションシステムズ学部卒業。米国でプロダクトマネジメント経験を積み、帰国後は、トリップアドバイザー株式会社に4年間勤務し、日本を含む、アジア・太平洋地区のプロダクト全般を統括。2016年7月より現職。プロダクト戦略・体制を構築し、日本の消費者・パートナーのニーズに応えるべく日々製品の改善・改革に努める。