翌年に市販化される最新モデルだけに、使用する選手の成績に各メーカーとも一喜一憂だ。
強い選手が乗る自転車はカッコいい。性能だってプロが勝利のために使っているのだから超一流だ。だから、毎年7月のツール・ド・フランスで活躍した選手の乗るブランドが翌年に飛ぶように売れるのは当然だ。
クリストファー・フルームの乗るピナレロ。アルベルト・コンタドールが乗っていたスペシャライズドやトレック。ヨーロッパのみならず、日本でも自転車愛好家は、「これを買ったらカッコよく走れる」「強くなれるかも」という気持ちになる。
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クリストファー・フルームのスペアバイク。イタリアのピナレロ製
ツール・ド・フランスでは極秘のうちに選手がプロトタイプに乗ることがある。開発と改良を続けた試作モデルの、おそらく量産態勢を確立した最終モデルだ。
興味深いところは、フルームのような総合優勝を争う主力選手に投入されるのではなくて、アシスト選手らに使ってもらうこと。さすがに優勝を争うシーンで万一にもなにかがあれば信頼関係が崩壊するし、イメージダウンにつながるからだ。だから、エースクラスはちょっと古くても確実に実力を発揮できるものを乗りたがるのだ。
最近の注目はペダルの出力を数値化するデバイスデジタル。第2ステージの途中、ドイツのジューリッヒという小さな町にSRMという自転車のパワー測定器を手がける会社があった。世界のトップ選手が使うパワー測定器「パワーメーター」を製作・販売するメーカーだ。
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ドイツのSRMと日本のリオモが提携して新製品を発表するという
この日は指導者向けモーションキャプチャーデバイス「リオモ」の製品も同社に持ち込まれ、関係者を招いて展示会が行われた。リオモは日本で開発されたもので、SRMとパートナーシップ契約をこの日に発表して、両社の強みを生かした最新製品をリリースしていくという。
ツール・ド・フランスは1番を争うスポーツなのだが、さまざまな機材メーカーがその大舞台に深く関わってビジネス展開していることも見逃せない。