佐藤琢磨、インディ500を振り返る…後編「ルマンにも興味はあります」 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

佐藤琢磨、インディ500を振り返る…後編「ルマンにも興味はあります」

スポーツ 選手
インディ500制覇のチャンピオンリングとともに、佐藤琢磨はシリーズタイトル獲得を目指す。
  • インディ500制覇のチャンピオンリングとともに、佐藤琢磨はシリーズタイトル獲得を目指す。
  • 将来的には「ルマンにも興味はありますよ」。
  • 残り8戦、今季タイトル争いは熾烈を極めるだろう。
  • 第101回インディ500を制した佐藤琢磨。
  • 第101回インディ500を制した佐藤琢磨。
  • 東京・青山のホンダ本社1F「ウエルカムプラザ」では23日まで佐藤琢磨の記念展示を実施中。
  • 東京・青山のホンダ本社1F「ウエルカムプラザ」では23日まで佐藤琢磨の記念展示を実施中。
  • 日本モータースポーツ記者会(JMS)から「JMS栄誉賞」を授与された琢磨(右はJMSの高橋二朗会長)。
第101回インディ500を制し、多忙なシーズンの合間を縫って凱旋帰国中の佐藤琢磨。シーズン後半のチャンピオン争い、そして将来の展望について訊いた。

F1モナコGP、ルマン24時間レースと並ぶ世界3大レースのひとつ「インディ500」は、北米最高峰のオープンホイール(フォーミュラ)レースシリーズ「Verizon インディカー・シリーズ」の一戦(今季第6戦)でもある。インディ500制覇でシリーズポイントを大量ゲットした琢磨は、全17戦中9戦を終えた今現在、シリーズ3位に位置している。

ポイント首位のスコット・ディクソン(琢磨と同じくホンダ勢)とは14点差。インディカー・シリーズのポイントシステム(通常の優勝は50点)を考慮した場合、これは僅差と言っていいだろう。ただ、ディクソンはもちろんランク2位のシモン・パジェノーも手強いし、大きく離れてはいない後続勢にも強敵は多く、今後も厳しい戦いが予想される。

インディカーは様々なコースで戦われるシリーズだ。その舞台は市街地、ロードコース、ショートオーバル、そしてインディ500を含むビッグオーバルと4つに大別できるが、琢磨は自チームの現状戦力をこう分析する。

「ビッグオーバルは強いです。市街地もそこそこいいですよ。ただ、ロードコースはちょっと辛いですし、ショートオーバルでは正直なところ勝つのは難しいですね」

高次元の戦いのなか、レギュレーション的な絡みの影響もあり、トップチームのアンドレッティ・オートスポーツでも全部が全部得意といかないのは仕方ないところ。残り8戦のコース分類を見た場合に楽観は許されず、「厳しいと思います」という状況でさえあるが、それだけに戦い方にも“意識”が必要になってきそうだ。

「優勝することが大きいのは当然ですけど、確実に(ポイントを)取っていくことが大事になります。もし、『今日はトップ5までのクルマ』という状況なら、そこでしっかり5位を取る。そういう戦い方ができないといけませんね」

前戦の第9戦テキサスはビッグオーバルに分類していいコースだったと思うが、琢磨は今季2勝目達成の可能性もあった終盤のトップ集団バトルのなか、クラッシュを喫してしまった(リザルトは10位)。他車と近接した状況下で行き場を失った琢磨はイン側の芝にタイヤを落とし、姿勢を乱した。「あんなに芝が深いとは。勝てなかったことは大きな代償でしたね」と、思い返して残念がる。

ただ、そこは「経験を積みましたから」と今後に活かす構え。さらに今季の琢磨は開幕以来、大きな意味での流れがいい。それは本人もある程度自覚するところのようだが、テキサスでは琢磨のアクシデントに巻き込まれる格好でポイント首位のディクソンが戦線離脱しているのだ(9位)。

琢磨の信条はフェアプレーであり、もちろん狙っていたわけではない。単なる偶然だ。しかし、「彼には申し訳ない話ですけど(結果的に)ランキングの状況はほとんど変わらなかったわけですよね」。偶然が味方する、それは流れがある証拠。そして流れを引き寄せられているのは、内容ある戦いが継続できているからこそだろう。「この先の争いも面白いと思います」。

1977年生まれの琢磨は今、40歳。とはいえ、まだまだ引退など考える成績でも年齢でもない。ちなみに今年のインディ500は琢磨40歳、エリオ・カストロネベス42歳(過去にインディ500で3勝)という合計82歳の1-2フィニッシュであったくらいなのだ(これは琢磨が現地での表彰イベントでスピーチした内容でもある)。

「先の展望を語るのは難しいですけど、今回、夢のひとつであったインディ500に勝つことができました。2回目、3回目と勝っていきたいと思いますし、まずは今年、シリーズチャンピオンになりたいですね。それが直近の夢です」

「その先には、僕がお世話になった日本のモータースポーツ界にどう還元していけるのか、ということも考えたいですね。今回の優勝や今後も自分が活躍することによって日本のモータースポーツ全体がもっと盛り上がって、例えば海外のレースに出たいんだけど出られない、というような状況にある若い子が何かサポートを得られたりする、そういう広がりが生まれれば、とも思います」

「今後の自動車社会がどうなるか、ということも興味深いですし、僕はどう転んでも自動車に関わっていくと思いますので、時間をかけて、自分がそこにどう貢献できるかを考えていきたいです」

さすがの壮大さと深さをもった琢磨の思考だが、やはり我々としては彼のレース活動そのものに興味が集中する。インディカー・シリーズの今季は9月17日決勝の第17戦で閉幕。その後はF1日本GP(10月8日決勝:鈴鹿)へのゲスト来場が決定しているが、インディジャパンの開催がない今、日本で琢磨のレースは見られないものだろうか。

以前、琢磨はスーパーフォーミュラ(SF)にスポット参戦したことがある。カレンダー的には、9月23~24日の宮城県・スポーツランドSUGO戦と10月21~22日の最終戦鈴鹿には参戦可能だが…?

「今のところ、予定はないですね。様子を見ながら、ですが、あのクルマ(現行マシンのSF14、琢磨はテスト経験あり)は楽しいんですよね」

可能性がないことはない、ようである。そしてインディ500に続いて、別の世界3大レース制覇を目指すという中長期プランもあっていいはず。ルマン24時間レース参戦に興味は?

「興味はありますよ。ただ、(F1やインディのような)トップレベルのフォーミュラに乗れる時期は限られていると思うので(当面はインディ最優先)。でも今はルマン(の最高峰クラス=LMP1)のマシンもかなり速いんですよね。だから、フォーミュラでのピークの直後くらいの(年齢的な)時期に出られたらいいのかもしれません。その時にホンダさんがルマン(の最高峰クラス)に出ていればいいですね」

将来的に期待したいところだ。佐藤琢磨の今季、そして今後に大いなる成功が続くことを祈りたい。

【第101回インディ500】覇者・佐藤琢磨に訊く…後編「ルマンにも興味はあります」

《遠藤俊幸@レスポンス》

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