東京オリンピックの新種目にサーフィン…選手生活はどう変化した?20歳のプロサーファー仲村拓久未に聞く | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

東京オリンピックの新種目にサーフィン…選手生活はどう変化した?20歳のプロサーファー仲村拓久未に聞く

オピニオン ボイス

プロサーファー・仲村拓久未
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2016年8月4日、2020年東京オリンピック・パラリンピックの追加種目に決定したサーフィン。決定から9ヶ月ほど経過しているが、プロサーファーたちを取り巻く環境は変化しているのだろうか。

サーフィンの魅力を、「自然相手なので、波に乗ったときの感覚が気持ちいい。はじめて(サーフィンを)したとき、(ボードに)立った時の感触が良かった。他のスポーツにはない楽しみ方ができる」と笑顔で語るプロサーファーの仲村拓久未さん(20)に迫った。



仲村さんは16歳でプロテストに合格。東京五輪のサーフィン日本代表の有力候補でもある。

生まれは奈良県。三重県に引っ越した先が海の目の前だったこと、お兄さんがサーフィンでプロを目指していたことから(現在もアマチュアでサーフィンを続けている)、物心つく前にはサーフィンをはじめていた。

「5歳ごろからは周りの人にボードを押してもらいながらサーフィンをしていた。当時は波なども怖くなかった」

8歳の頃にサーフィンの全国大会、小学生の部「7th JUNIOR PROGRESSIV SURFNEET Element School 」で優勝したことが仲村さんの人生の転機だった。

それまではスケートボードやサッカーにも取り組んでおり、サーフィンもひとつの趣味にすぎなかったが、この大会で優勝してから本格的にサーフィンにのめり込むようになった。「プロ」を意識したのもこの時だった。

その後、仲村さんは、「行こうと思えばいつでも学校は行ける」と高校進学を断念し、プロサーファーを目指した。16歳でプロテストに合格して以降、海外の海を飛び回る生活を送っている。



今回、東京五輪の新種目にサーフィンが決定したことをどう感じているのだろうか。

「サーフィンがオリンピック種目になるというのは考えたことがなかった。すごいチャンスが来たな、『夢のようだ』という感じ。オリンピックに出場して、メダルをとって、『サーフィンの凄さ』をみんなに見せたい」



メダル獲得への実現可能性は。

「世界のトッププレーヤーはすごくうまいが、全員が(オリンピックに)出るわけでもない。また、日本の波は『難しい』と言われているので日本人も他国の大会に出るよりチャンスはあると思う」

多くのスポーツと同様、サーフィンも実力のある人が絶対に勝つわけではない。ことさら、自然を相手にするサーフィンは「いい波が来なかったり」することもしばしありうる。仲村さんは「日本の波は難しい」と述べたが、他国の波に比べて日本の波は「小さいし、パワーがない」ということだ。仲村さんの知る外国人サーファーも、日本の波は「あまり好きじゃない」とこぼしているのだという。



仲村さんは2016年12月より、サッカー元日本代表の中田英寿氏や前園真聖氏らをマネジメントするサニーサイドアップ社とマネジメント契約している。「世界が変わった。注目されていることを感じる」と明かしたように、自身を取り巻く環境が、オリンピックの存在によって刻々と変化していることを実感している。

それは純粋な競技生活だけでなく、私生活にも及んでいる。強化選手による合宿では、アンチドーピングについてや、SNSの使い方、取材時の話し方などの講習会も開催されたという。

「今まではそういうのなかったし、難しかった。一日中の講習会で大変でした」

スポンサーがついているとはいえ、年中海外を飛び回る仲村さん。「海外への渡航費も基本的には自分で負担しています」と、未だに渡航費と賞金のバランスはカツカツだという。サーフボードも海外の大会には5~6枚持っていくため、オーバーチャージも結構な負担になる。

「大会は大体4回戦まで勝ち進んだら、若干プラスくらいで終われるが、基本的に海外をまわるとお金がかかる」

オリンピック種目に決定したことにより、体力測定がサーフィンの選手にも要求される可能性があるのだとか。しかし、仲村さんは体つきが競技に影響することは「ない」と語る。

「サーフィンには筋肉は関係ないと思う。太っていてもうまい人もいるし、世界のトップ選手でも一回も肉体トレーニングをしたことない人がいる。僕だって体も柔らかくないし」

プロサーファーの仲村拓久未さん


とはいえ、仲村さんも筋肉トレーニングを開始した。

「筋トレをやっている方が、モチベーションにはなる気がする。試合に勝った時は、『やったから勝てた』と思えるし、筋トレをしていない時に負けると『やっていなかったから負けた』という気分になる。実際に(筋トレを)やっていると調子いいし」

直接的に肉体はサーフィンに影響しないが、自信への裏付けにはなるということだろう。基本的にプロサーファー、特に仲村さんの世代の選手は「筋トレをしない」というのが普通だ。「サーフィンをすること」そのものがトレーニングとなる。

「今まで『筋トレをしないといけない』という意識がなかったが、オリンピック種目になり、周りから注目されてきていることで『やらないとな』という意識が出てきた。実際に始めてみると楽しいし、体の調子は良くなる。オリンピックがなかったらこういう動きはなかったと思う」

ある意味、オリンピック新種目に追加されて注目度が高まり、選手に「見られる意識」が芽生えたことが、選手のトレーニングに対する意識を変えているともいえよう。

世界各国で開催される主要なサーフィン大会を管理運営する、世界プロサーフィン連盟(WSL)は大きく2つのリーグに分かれている。それが、QS(World Qualifying Series)シリーズとCT(Champion Tour)シリーズだ。各大会でポイントを獲得することができ、年間を通して総ポイント数が最も大きい選手がCTにクオリファイ=資格取得できる。

日本人は未だもって誰一人CTにクオリファイできておらず、もちろん仲村選手の目指す目標もそこにある。

「去年はダメでしたが、今年は2年目なので大きい大会で勝って、欲を言えば今すぐクオリファイしたい。(CTに)いけそうだが、いけてない。勝つ時も負ける時もある。あまりうまくなくても、うまくこなしてクオリファイしている選手もいるので、僕もできるところまでやって、(クオリファイ)圏内に入りたい。オリンピックまでに入れていたら最高ですね」

プロサーファーにとって、CTにクオリファイすることがどれだけの重みを持つのかは、仲村さんの「CTに入れるか、オリンピックに出場できるかの二択だったら、正直CTに入ることを選択する。オリンピックに出場したら日本では有名になれるかもしれないが、その一回きり。CTに入れれば、賞金もいいですし、世界のサーファーに知ってもらえる」という発言からも伺える。

競技選手にとって、オリンピックだけが全てではないという事実を教えてくれる。

まだ20歳と、希望に満ちあふれた未来がある仲村さんは、将来のプランについてもはにかみながら明かしてくれた。

「サーフィンを続けていたからこそ友達が世界中にできた。現在スポンサーもついて、仕事という形でこうやってサーフィンができていることが嬉しい。現役を引退しても、何かしらサーフィンで仕事とかできたらいいな…。会社勤めとかは向いていないと思うので…。うん、それが最高かな」

プロサーファーの仲村拓久未さん
《大日方航》

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