週の半ばに友人から電話があった。その日はどこかの山に登ろうとは思っていたけれど、ヒマじゃない訳ではなかったので、要件を問うと「御岩山にいこうよ」と友人が言う。
御岩山といえば…
・某宇宙飛行士が、宇宙から光って見えたとの噂がある。
・188の神様を祀る神社がある。
・一部では日本一のパワースポットと呼ばれている。
……と言う訳で、近年参拝者の数が急増している話題の場所だ。
筆者は今までに二度この山に登ったが、今のところご利益らしいご利益はない。宝くじに当たったり(そもそも買っていない)、芥川賞を受賞したり(そもそも小説書いていない)、念願の若隠居生活を送れたり(そもそも若くない)ということが起きていない。
かといって、悪いことも起きていない。悪いことが起きないことが、いいことだというのなら、それはそれでご利益といえるのであろうが、「日本一のパワースポット」なんて呼ばれている場所のご利益だから、きっともっとすごいご利益があってしかるべきだろう。
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神秘的な雰囲気が漂う
今回筆者を誘った友人いわく「知り合いが御岩山に登ってから、金運がよくなった」らしいので、「三度目の正直」という言葉もある訳だから(二度あることは……ともいうが)、もう一度くらい登ったら、きっと若隠居生活が送れるだろうと信じて、三度目の御岩山登山を決行に移した。
さて、御岩神社の鳥居をくぐり、表参道から山頂を目指す。お供の友人は過去に百名山を踏破した(自称)という猛者である。標高492mの御岩山など苦にもならないだろうと思っていたら、運動不足と酒の飲み過ぎが原因か、序盤の登りで汗水垂らし「ちょっと待って」と息を切らす始末。
これでは先が思いやられると思っていると、途中で途端に元気になって「光の柱を探さにゃならん」と息を巻く。そんなこんなをしているうちに、頂上にたどり着いた。お目当ての光る柱と呼ばれる岩を探し出し、山を後にした。
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これが光る柱と呼ばれる岩?
日本一と言われるパワースポットに登った直後は、良い運気が身体いっぱいに溢れ出ているに違いないと、その足で立ち寄ったのがショッピングセンターの宝くじ売り場。中年男性が二人並んで「6億当たったら何をしよう」と夢を語り合う。「とりあえず、真っ先に仕事を辞めて。バイトして食いつなぐ」「放浪の旅に出る」「隠居生活を送る」……どれもこれも、ぐうたらな夢ばかり。夢を語らう勢いそのまま、「富の札(totoBIG)」を購入した。
それから一週間経った今。友人からの朗報は来ないし、筆者から伝えるべき朗報もない。
「夢は五臓の患い」という言葉がある。我々は、仕事の疲れを癒すのが優先かもしれない。人生は夢のように短く、はかないものなのだから(浮生夢の如し)。