ご存知の通り、餃子は中国伝来の食べ物で、小麦粉の入った皮でもって、肉だの野菜だのを包み、焼いたり蒸したり揚げたり茹でたりして食べる物である。
その皮をつまんでできた形は、まるでひとつの山の頂のよう。それがいくつか連なって、餃子がひとつ完成する訳だが、餃子一個分が宇都宮アルプスの中の篠井連峰(榛名山・男山・本山・飯盛山)のように見えたのだ。
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本山から見る日光アルプス。こちらも餃子のように見えてしまう…
今回筆者が歩いた「宇都宮アルプス」は、この篠井連峰のみであったが、そのまま富屋連峰(高舘山・黒戸山・鬼山・兜山)まで足を延ばすことも可能だ。もちろん、その中から掻いつまんでコースを設定することもできる。アルプスと呼ばれるだけあって、ルート・バリエーションも豊富である。
コース自体も岩場あり、ザレ場ありで、起伏に富んでいて、歩いていて楽しい。このような点も、バリエーションに富んだ具材を、バリエーションに富んだ調理方法で食す餃子似ているように思える。
とにかく、宇都宮にあるというだけあって、何をとっても餃子を彷彿してしまうのが、宇都宮アルプスなのだ。
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飯盛山頂上付近には、ちょっとだけザレ場がある
また、餃子はニンニクやニラが具材に含まれることから、スタミナ料理としても名を知られている。宇都宮アルプスを歩き終えたら、餃子の町・宇都宮で餃子を食す。登山と観光と疲労回復を兼ねた素晴らしいコースではないか。餃子とアルプスは、とても相性がいいようだ。
だが、筆者の場合は違った。餃子に対する食欲よりも、ステーキに対するそれの方が勝ってしまった。矢板で食べたステーキも、それはそれは大変美味しかったのだが、後になって宇都宮アルプスに登って宇都宮で餃子を食べるべきだったと、後悔が残ってしまった。
宇都宮アルプスに登った翌々日。その心残りを少しでも払拭すべく、行きつけのラーメン屋で水餃子をいただいた。餃子にかぶりつき、中から滲み出た肉汁の味を舌で感じた瞬間、宇都宮アルプスの山々の姿がまぶたの裏に浮かびあがった。