宇都宮アルプスを子どものもり公園から登ると、榛名山、男山に続いて3座目の頂がこの本山である。
本山の山頂からは、日光男体山や女峰山といった日光表連山はもとより、近くの古賀志山やちょっと遠くの高原山や那須岳、今歩いてきた男山・榛名山と、栃木県の大小様々な山々が見渡せる。この景色が素晴らしい。平野が多い茨城県民にとっては、栃木県の山の豊かさがたまらなく羨ましく感じた。
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振り返ると、男山・榛名山
だが、せっかくの素敵な山の風景を眺めていても、山の名前がよくわからない。いつぞやに少しだけ勉強した山座同定の知識は、残念なことにまったくもって覚えていない。山の名前がわかれば、この素晴らしい山岳風景に更なる彩が添えられるだろうに。そう思っていたところ、先に頂上にいた一人の男性登山者の姿が目にとまる。
有名アウトドアブランドの衣類で身を包み、スラっとした体型、引き締まった顔つき。いかにも「登山者」なかっこいいスタイルをしている男性である。それに引き換え、筆者の方は、ファストファッション・ブランドの衣類で身を包み、中年太りのお腹周りが明らかに気になり、緩みきった顔つき。
筆者がいかにも初心者丸出しの、残念な登山者スタイルだったせいか、それともその方が親切だったせいか、そもそも山に登ると親切をしたくなるものなのか。いずれにせよ、男性登山者は親切丁寧に山の名前を教えてくれた。
「あれが○○山で、あっちが○○山、それで向こうに見えるのが○○山で……」
すごい。物の見事に、見渡す限りの山の名前を的確に答えていく。その後、話をしてみると、その男性は栃木百名山を90座以上踏破しているという、栃木の山のスペシャリストであった。
しかし、せっかく教えてもらった山の名前も、筆者の記憶にとどまったのは「古賀志山」のひとつだけ。このコラムを書く際には、「○○山」と記すしか術がなかった筆者の記憶力も、残念というよりほかない。