【THE ATHLETE】国際大会の面白さが詰まっていたWBC準決勝、異なる野球文化が交差して名勝負が生まれた | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE ATHLETE】国際大会の面白さが詰まっていたWBC準決勝、異なる野球文化が交差して名勝負が生まれた

オピニオン コラム
アメリカ打線を6回1失点に抑える好投 菅野智之(2017年3月21日)
  • アメリカ打線を6回1失点に抑える好投 菅野智之(2017年3月21日)
  • 千賀滉大 WBCベストナインに選出
  • アメリカ戦で同点本塁打を放った菊池涼介(2017年3月21日)
  • アメリカが初優勝、プエルトリコに3安打完封で完勝 (2017年3月22日)
  • アメリカ打線を6回1失点に抑える好投 菅野智之(2017年3月21日)
  • 巧みなリードで侍打線を封じたバスター・ポージー(2017年3月21日)
  • アメリカ打線に打ち込まれたプエルトリコ投手陣(2017年3月22日)
  • 好リードを見せた小林誠司(2017年3月21日)
1934年11月に日本は野球アメリカ代表を招いて日米野球を開催したがベーブ・ルース、ルー・ゲーリック、ジミー・フォックスを擁するアメリカの強力打線に16試合で47本のホームランを打たれた。

対戦成績も0勝16敗で力の差を見せつけられた日本。だが、そんな中で沢村栄治が見せた快投は現在でも語り草になっている。沢村はアメリカとの初対戦で相手打線を8回、5安打1失点に抑えた。

あれから83年。奇しくも沢村栄治生誕100周年の2017年に、野球日本代表・侍ジャパンは『2017ワールド・ベースボール・クラシック』(WBC)準決勝でアメリカと対戦した。

ドジャー・スタジアムに珍しい雨が降った夜、日本の先発マウンドに上がったのは巨人で沢村の後輩にあたる菅野智之(巨人)。菅野は沢村にも引けを取らない投球を見せた。メジャーリーグの一線級が並ぶアメリカ打線を、得意のスライダーとノビのあるフォーシームで抑えていく。


エラー絡みで1点は失ったが6回、3安打1失点(自責0)、6奪三振の好投だった。2番手で上がった千賀滉大(ソフトバンク)も威力抜群のフォーシームに消えると評されるフォークで三振の山を築く。こちらもエラー絡みで点は失ったが6つのアウトのうち5つを三振で奪う圧倒的なパフォーマンスだった。


1-2で敗れた結果は残念だったが試合内容は非常にハイレベルかつ紙一重の攻防。さらに日本野球と米国ベースボールの文化の違い、方向性の相違が見られたことは国際大会ならではで意義深いものがあった。

■日本が打てなかったのは“速くて”動くボール

アメリカ先発のタナー・ロアークに抑え込まれたことで、試合直後から悲観論とも言える評が多く上がっている。常時150キロ違いツーシームを投げ込んでくるロアークの投球スタイルは、日本では見慣れないものだったため少なくない野球ファンが衝撃を受けたようだ。

選手たちも困惑し内野ゴロの山を築く。試合後には小久保裕紀監督も動くボールへの対応ができていなかったことを敗因のひとつに挙げた。

「やはり1次、2次ラウンドのピッチャーも(ボールが)動いていたんですけども、動く威力だったりスピード、そういうものが1ランク上だった。なかなか芯で捉えることができなかった」

「あれだけの選手たちがなかなか芯で捉えられなかった。普段から動くボールに対応していないので、メジャークラスの投手の動くボールに対処するのは難しいと感じた」

「動くボールへの対応というのはずっと言われてますけど、ただリーグがフォーシーム主体のリーグでやってるわけですから、どこで訓練するんだということになる」


小久保監督も言うように、1次ラウンドや2次ラウンドで対戦した中にも球を動かす投手はいた。だが2次ラウンドまでに対戦した投手の多くは球が遅かった。

今大会で登板した投手を球速順に並べるとグループA・BとグループC・Dではっきり分かれる。グループA・Bでは150キロ出れば速い投手だったが、グループC・Dになるとリリーフ陣は100マイル(約161キロ)の大安売り。先発でも150キロ台が珍しくなかった。

日本が1次ラウンド、2次ラウンドで対戦したキューバにもツーシームを主体とする投手はいたが、彼らの球速は140キロ前後。言い方は悪いかもしれないが、フォーシームで抑えられないからツーシームで芯を外れること期待しているレベルのボールと、メジャーでシーズン通してローテーションを守ったロアークのボールでは同じ球種でも質が違った。

■松井秀喜も苦しんだ『外に14センチ』の差

今回の試合を語る上で欠かせないのはアメリカ代表の捕手バスター・ポージーだ。サンフランシスコ・ジャイアンツの正捕手を務め、メジャー定着後7年間で3度ワールドシリーズを制覇した『勝ち方を知っている捕手』である。

日本の打者はリーチが短い割にホームベースから離れて構えたがる選手が多い。国際大会の外に広いストライクゾーンをフル活用し、ポージーは内野ゴロを量産した。次々に転がるゴロを捌くためアメリカの内野陣はゴールドグラブ受賞経験者がずらり。グラウンドボーラーと堅い内野守備。これ以上ないほど合理的な組み合わせだ。

日本打線を封じたバスター・ポージー
(c) Getty Images

ポージーは日本打線の特徴や傾向と対策を完璧にインプットし、ほぼノーリスクで侍ジャパン打線を抑え込んだ。プエルトリコのヤディアー・モリーナに比べ地味だったかもしれないが、ポージーには捕手が目立つ機会を作らせない巧さがあった。

菊池涼介(広島)にソロホームランが出てからは、とにかく一発だけは警戒してリスク管理をしっかり。最後まで冷静に侍ジャパン打線を封じている。

思い起こせば遠いサイドのボールを打ってゴロにするのは、メジャー1年目の松井秀喜もよくやっていた。松井は1年目に内野ゴロを量産し地元メディアから批判を浴びたが、シーズン途中にジョー・トーリ監督の助言を聞き入れ、スパイク半分だけベースに近づいて構えるよう立ち位置を変更している。

約14センチの変化だったが、この14センチのおかげで松井はメジャーのストライクゾーンに適応し、2年目には31本のホームランを放った。

だが、わずか14センチされど14センチである。ミリ単位の感覚で勝負しているトップ選手にとって、シーズン中に14センチも立ち位置を変えるのは勇気が要る。過去に松井とイチローの対談でこの話が出たとき、イチローは「10何センチ動くなんてとんでもないこと。ちょっと動くだけで気持ち悪い」と力説していた。

松井も「気持ちは悪かったです」と同意している。

その違和感を受け入れてでも現状を変える勇気が世界で戦うには必要だ。

■アメリカの打者も日本のフォーシームは打てなかった

ここまでは日本が打てなかった話ばかりしてきた。だが実際のところアメリカの打者だって、日本の投手を打ち崩せたわけではない。決勝でプエルトリコ投手陣を粉砕したアメリカ打線を、日本の投手陣は6安打2失点(自責1)に抑えている。

捕手の小林誠司(巨人)はアメリカ打線相手に強気のリードで菅野を引っ張った。特に冴えていたのはフォーシームを効果的に使った部分。初回に2アウト走者なしでクリスチャン・イエリッチを迎えると、小林はカウント2-2から高めのストレートを要求。イエリッチを空振り三振に仕留めている。

その後も小林はフォーシームを有効に使いながら、菅野のスライダーを生かしていった。中腰になるくらい高目に構えたミットへフォーシームを要求。メジャーの一流バッターが球の下を空振りするのは爽快だった。千賀のフォーシームとフォークの組み立ても絶妙。

好リードが光った小林誠司
(c) Getty Images

ここにフォーシームを磨いてきた日本と、球を動かして抑える技術が発達したアメリカとの違いが見えてくる。

メジャーリーグのストライクゾーンは外と低目に広い。そのゾーンとシンキング・ファストボールに対応するため、メジャーリーグの打者たちは手元で沈み込むボールを掬い上げるようなスイング軌道になっている。そうしたスイングだと回転数が多く沈まないフォーシームには苦労する。

メジャーでも綺麗な回転のフォーシームを投げる投手はいるが、そうした投手たちと比較しても菅野の球は上位にランク付けされるほど回転数が多かったと試合後にデータで示された。

アメリカがロアークのツーシームやサム・ダイソンのヘビーシンカーで日本を驚かせたように、日本も回転数の多いフォーシームでアメリカを戸惑わせた。

この試合は実のところ日米とも相手との野球文化の違いに面食らっていたのだ。互いに困惑しながらイニングが進む。その中で日本が先にミスを犯した。

ホームランで点を取り投手はバッタバッタと三振に切って取る。日本の野球ファンがメジャーリーグにイメージすることを日本がやり、日本がやりたかった堅い野球をアメリカがやった。アメリカはプレッシャーがかかる決勝ラウンドの2試合でエラーをひとつも出していない。

■現代野球は全部できるチームでなければ勝てない

WBC前も大会期間中も日本のメディアは、やたら『スモール・ベースボール』という言葉を使いたがった。日本が優勝した第1回大会、第2回大会のイメージが残っているためだろう。だが現代野球は『スモール or ビッグ』の構図で論じられるほど簡単でもレベルが低くもない。

中軸が長打を打てるのは当然。それにプラスして走攻守すべてが高いレベルにあり、メンタル面も兼ね備えた、弱点がないチームでないとチャンピオンになれない。

米国打線に打ち込まれたプエルトリコ投手陣
(c) Getty Images

プエルトリコは先発投手に不安を抱えながらも決勝まで勝ち進んだが、大事な試合で危惧されていた投壊が起こった。大差がついて勝敗が決するとパフォーマンスが落ちる、メンタル面の脆さも見せた。

優勝するためには何ひとつ欠けてはならない。

今回の侍ジャパンは筒香嘉智(DeNA)、中田翔(日本ハム)の長打があり、小技や足を使える選手もいて内野守備は堅い。懸念された正捕手不在は小林の急成長という楽しみが穴を埋め、投手陣は各々が与えられた役割を果たした。

経験不足が不安視された小久保監督も3年半で飛躍的な成長を遂げ、本大会が始まる前と終わったあとでは評価が大きく変わるほどの戦いぶりを見せた。

世界一奪還には届かなかったが優勝した2006年、2009年の代表にも引けを取らない素晴らしいチームだった。
《岩藤健》
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