東京五輪で正式種目に採用されたスポーツクライミングは、高さ12m以上の壁をロープで安全の確保をしながら登る「リード」、3~5mの壁に設けられた課題に挑戦する「ボルダリング」、高さ15mの壁に登る速さを2名で競い合う「スピード」の3種目混合で競われる。
野口は「私にとってはいい流れ。今までもリードとボルダー(ボルダリング)の両方やってきているので有利と思う」と答える。小学校5年生でクライミングに出会い、6年生で全日本ユース選手権で初優勝。当時はリードの大会しかなかったため、リードの大会にしか参加していなかった。
「幼い頃から両方やってきたことが強み。考えてできるというよりも、子どものころから両方やっていたので体が勝手にそのモードに変わるというか切り替えができる。普段から偏ったトレーニングをしないようにしているので、日々のトレーニングもかなり関係していると思う」
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決勝の課題に挑む野口啓代選手
同じクライミングといえどもリードとボルリングでは求められる能力も変わってくる。片方に専念する選手も多いが、野口は種目による違いを感じていないという。しかし両種目でトップレベルを維持することは簡単なことではない。
「ボルダリングは決勝で4つ課題があったら4つとも違うテクニックや能力の最高レベルを問われる。レベルの高い瞬発力やレベルの高いバランス、世界トップクラスのコーディネーション能力であったり、一つひとつが最高レベルで強くないと優勝できない。リードはそれをひっくるめての総合力が問われる。軽さ、持久力、ボルダー能力、力だけではない部分もすごくある」
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高さ13m、最大傾斜約130°のルートを登った
1月に行われたボルダリングジャパンカップでは2位に終わった。日本選手権はワールドカップ(W杯)出場に向けた最後の国内大会であり、勝って弾みをつけたかった。2017年W杯はボルダリング全6戦とリード全8戦中5戦程度の参加を予定している。
ボルダリング中心の活動だった近年よりも長いシーズンを送ることになり、「年間を通しての大会数が多くなる。どこでトレーニングをしてどこで疲労を抜くか、タイミングやバランスが難しいと思う。両立することが今年のテーマ」と気を引き締める。
2020年に向け、まずリードとボルダリングを両立し、来年からスピードの練習も取り入れる予定だという。5月で28歳を迎える野口。10代の若手クライマーたちの成長も著しいが、「3種目できる選手になりたい」と女王の目を輝かせた。