東京五輪で正式種目として採用されたスポーツクライミング。2020年を見据えて国内クライミング界もより盛り上がりを見せる中で、今大会は国内選手がより世界レベルのルート(課題)に対応できるようにスロベニアから2名の国際ルートセッター(国際試合でルートを作れる有資格者)を招聘。よりハイレベルな大会となった。用意された壁の高さは13m、最大傾斜は約130°だ。それを制限時間8分で課題をこなしながら登る。
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決勝に用意されたルート
男子は左下→右上、女子は右下→左上に登る
男子は左下→右上、女子は右下→左上に登る
ボルダリング競技で昨年の世界選手権パリ大会で優勝し、リードでも今季ワールドカップ出場を狙う楢崎智亜(ともあ・栃木県)らが出場した男子を制したのは、1983年(昭和58年)生まれのベテラン中野だ。
「33歳で初優勝、感激して泣きそう(笑)。一緒に頑張ってきたクライマーたちが祝福してくれるのが嬉しい」と喜びを見せる。
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決勝の課題に挑む中野稔選手
男子決勝は誰も完登できなかったが、中野は最後まで粘りを見せ、「一手止められるかどうかで大きく順位が変わるスポーツでもある。絶対に諦めず、時間を見つつ残り30秒だったが一手を止めるために休んで、しっかり止めてやるぞという強い気持ちで臨んだ」と振り返った。
10代の若い選手たちも育ってきている中で、「決勝進出者で昭和生まれは僕だけ。ちょっと先輩の意地を見せたいのもあって頑張った」と満足そうに語った。33歳4カ月での栄光は大会最年長記録更新となった。
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優勝が決まった直後の中野稔選手
女子は国内ボルダリング界を牽引してきた野口が2年連続6回目の栄冠を手にいれた。しかし、「優勝を目指していたので嬉しい気持ちもあるが、完登できなかった悔しい気持ちもある」と苦笑い。女子は準決勝、決勝ともに完登する選手は現れなかった。
「予選、準決勝、決勝と課題のタイプも違っていて、ラウンドを追うごとにいろんな能力を試される決勝になっていい展開だった。ルートは普段の国内大会と違って、ワールドカップのテイストが含まれていたように思う。強い面子がたくさん出ていたので、楽しかった」
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迷いを見せず登る野口啓代選手
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ダイナミックに動く野口啓代選手
男子は2位に1996年生まれの楢崎、3位に1997年生まれの波田悠貴(埼玉県)が入った。女子は2位に1993年生まれの大田理裟(山口県)、3位は2003年生まれの中学生・森秋彩(茨城県)がくい込んだ。1989年生まれの野口とは14歳差だ。男女ともに若手の活躍も目覚ましく、2020年の大舞台での躍動も期待できる日本選手権となった。
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左から男子2位・楢崎智亜、女子2位・大田理裟、男子優勝・中野稔、女子優勝・野口啓代、男子3位・波田悠貴、女子3位・森秋彩