【THE ATHLETE】サンゴリアス全勝優勝を支えた言葉…サントリーに遺る「やってみなはれ」 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE ATHLETE】サンゴリアス全勝優勝を支えた言葉…サントリーに遺る「やってみなはれ」

オピニオン コラム
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ジャパンラグビー・トップリーグは1月14日、最終節となる第15節の試合が行われた。ノエビアスタジアム神戸で行われたサントリーサンゴリアス対神戸製鋼コベルコスティーラーズは、サントリーが27-15で勝利。全勝のサントリーが今シーズンのトップリーグを制した。

サントリーは前半9分にトライを決められると、13分にはペナルティゴール(PG)も決められ0-8とリードを許した。しかし、前半22分にツイヘンドリックのトライと小野晃征のキックで1点差に追い上げる。さらに前半終了間際にもトライが決まって14-8で折り返した。

後半も松島幸太朗のトライでリードを広げたサントリー。シンビンで数的不利な時間帯もあったが神戸製鋼の反撃を耐え抜き、見事に4シーズンぶり4度目の優勝を成し遂げた。

今シーズンのサントリーは第1節の近鉄ライナーズ戦こそ14-13の辛勝だったが、それ以後は順調に勝ち星を積み重ねていった。ラグビーファン大注目の全勝対決となった第13節、ヤマハ発動機ジュビロ戦も41-24で制して今シーズンを無敗のまま駆け抜けた。


昨シーズン9位からV字回復での優勝にも沢木敬介監督は、「自分たちはチャレンジャーなので一試合一試合、しっかり丁寧に戦ってきました」と冷静に今シーズンを振り返った。

「もう一回自分たちで何が大事なのか、みんなで同じベクトルを向きながら考えて、やるべきことはなんなのかを明確にしてやってきました」

■サントリーのチャレンジ精神を表す「やってみなはれ」

「自分たちに大事なのは『やってみなはれ』。ハングリーにチャレンジするということなので、そこを全員でやってきました」

沢木監督の口から自然にこぼれ出た「やってみなはれ」。これはサントリーの創業者・鳥井信治郎の遺した言葉だ。日本では絶対に成功しない、事業を軌道に乗せるには長い年月がかかると周囲に反対されながらも、鳥井は『やってみなはれ』と周囲を説得。国産ウィスキー『角瓶』を世に送り出した。この言葉は現在でもサントリーに息づいている。

しかし、この『やってみなはれ』は単に取りあえずやってみようか、思いついたら手をつけてみようかといった言葉ではない。サントリーの公式サイトに『やってみなはれの歴史』がまとめられているが、その意味するところは時代によって少しずつ変わっている。

初代社長の鳥井信治郎 、二代目社長の佐治敬三まではトップが決めて、部下を動かすための言葉だった。それが三代目社長だった鳥井信一郎の代になると変化し始める。信一郎が社長となった1990年には、サントリーはひとりの人間がすべてを把握して適切な指示を出せる規模の会社ではなかったのだ。

各事業を現場の判断に任せ自立自走してもらう。自らが判断したことに自ら責任を持つスタイルへの転換。現在の『やってみなはれ』には、「自分でやると決めたからには、責任と覚悟を持ってやってみろ」の意味が込められている。当然そこには「やりきる」こともセットになる。

自分たちで決めてチャレンジし、そして最後までやりきる。まさにサントリーという企業の精神を体現した。

トップリーグ王者となったサントリーにはまだ日本選手権が残されている。トップリーグ2位のヤマハ発動機、3位のパナソニックワイルドナイツ、そして今年の大学選手権で前人未踏の8連覇を達成した帝京大学がラグビー日本一の座を狙ってくる。

準決勝でサントリーは帝京大の挑戦を受ける。来シーズンから学生の出場枠を廃止することが検討されている日本選手権。最後になるかもしれない学生王者との真剣勝負で、サントリーは「やってみなはれ」と胸を貸す。

《岩藤健》

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