【澤田裕のさいくるくるりん】自転車活用推進法案が衆議院本会議で可決…その意味と影響は? | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【澤田裕のさいくるくるりん】自転車活用推進法案が衆議院本会議で可決…その意味と影響は?

オピニオン コラム
自転車活用推進研究会理事長の小林成基さん
  • 自転車活用推進研究会理事長の小林成基さん
  • 自転車活用推進研究会理事長の小林成基さん。愛車のブロンプトンとともに
  • 自転車活用推進研究会のウェブサイトには、自転車活用推進法案や自転車活用推進法案の概要が掲載されている
12月2日の衆議院国土交通委員会で自転車活用推進法案が全会一致で可決され、6日には衆議院本会議でも可決。臨時国会での成立が確実ということで、この法案にどんな意味があるかを自転車活用推進研究会理事長の小林成基さんにうかがいました。

ちなみに自転車活用推進研究会は、発足当初より自転車に関連する法律の改正や新法に関する提言を取りまとめようと精力的な活動を行い、今を遡ること14年も前の2002年4月に、自転車活用推進法案(草案)を提出しています。自転車活用推進議員連盟とも密接な連携を図り、同連盟が2013年12月に発表した提言が、今回の法案の元になっています。

小林さんの話によると、「法案には提言の趣旨が、余すことなく生かされている」とのこと。特に自転車が公共の利益の増進に資することが明記されたことにより、さまざま自転車関連の施策を進めるうえでの根拠が明確になったことの意義を強調しました。

自転車活用推進研究会のウェブサイト

具体例を挙げると、歩道の空いたスペースに駐輪場を作ることは現行法でも可能でしたが、この法案に基づけば、今後は車道にも作れるようになります。このところ各地で広がりを見せているシェアサイクルも公共の利益という後ろ盾を得ることで、大手を振って進められるようになるわけです。

なお、この法案には自転車活用推進本部が10年を経過する日まで置かれるものとすると記されていますが、これも10年間だけ自転車活用を推進するという意味ではなく、「10年も経てば世の中は変わっている。たとえば放置自転車にしても、今から10年前と比べれば環境が大きく変わったことがわかるはずで、これを恒久法にしてしまうと時代の変化に対応できなくなってしまう」からだそうで、むしろ好ましいものといえます。

さらに法案の附則では、自転車運転中の道路交通法に違反する行為や損害賠償を保証する制度について検討を加え、必要な措置を講ずるとされています。これは提言にある「…国民がルールの解釈で迷うことがないよう簡素化の方向で改正を目指すこと。特に、自転車の違反などに適用する反則金制度や賠償責任保険の義務化などを検討すること」に対応したもので、法案が反則金制度や賠償責任保険の義務化なども視野に入れていることがわかります(ちなみに提言には法案の意図するものがわかりやすく記されており、条文を理解する際の助けとなります)。

このうち反則金制度については、昨年の法改正によって自転車運転者講習制度が始まるなど萌芽的な動きが見られ、一方の賠償責任保険の義務化については、兵庫県や大阪府などで条例が制定されてはいるものの、それが実際に効力を発揮するには越えるべき課題が数多く残っています。たとえば賠償責任保険を義務化しても原動機付自転車など未加入が多く見られるため、車検制度と組み合わせることの検討も必要となるでしょう。

とはいえこうした課題の克服する施策自体が、法案によって根拠が明確になり、進めやすくなるのも事実です。現時点での“法案”が、晴れて“法”となる日はまもなくです。
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