【澤田裕のさいくるくるりん】ヤマハの「YPJ-C」…電動アシスト付きスポーツバイクの本命 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【澤田裕のさいくるくるりん】ヤマハの「YPJ-C」…電動アシスト付きスポーツバイクの本命

オピニオン コラム
試乗した「YPJ-C」(左)と「YPJ-R」(右)。サイズはいずれはXS。「YPJ-C」のほうがトップチューブが短く、楽な乗車姿勢となる
  • 試乗した「YPJ-C」(左)と「YPJ-R」(右)。サイズはいずれはXS。「YPJ-C」のほうがトップチューブが短く、楽な乗車姿勢となる
  • 遠州の名刹、法多山尊永寺の参道入口。ここからが小笠山の肩を越える山岳区間となる
  • 小さなアップダウンを経てたどり着いた袋井市・掛川市の市境。ここから先は昔ながらの町並みが残る横須賀まで、7kmほど下りが続く
  • 下る途中、左手には特産の茶畑が広がる
  • ヤマハ発動機の核となる本館事務所前をスタート&ゴールに設定。「YPJ-C」とともに
  • 同じ場所で「YPJ-R」を、同社のロゴを背景に
  • 「YPJ-C」(上)と「YPJ-R」(下)の走行データを比較した
  • 今回のテストに使ったコース。距離は37.8kmで、獲得標高は328mとなる
9月15日公開の本コラムで、発表後まもなく試走したヤマハ発動機の電動アシスト付きクロスバイク「YPJ-C」について紹介しました。ただ、そのときは味の素スタジアムに特設されたコースを周回しただけ。やはり正しい評価を下すには、公道を走ることも必要です。

【澤田裕のさいくるくるりん】ヤマハの電動アシスト付きクロスバイク「YPJ-C」は、女性の願いをかなえるか?

都合のいいことに、ヤマハ発動機がある静岡県磐田市は僕の実家の隣町。1週間ほどを実家で過ごした折、直接出向いて借り受けました。電動アシスト付きの真価が発揮されるよう、設定したコースは途中で小笠山(標高265m)の肩を越す距離38kmの周回。このコースをYPJ-Cだけでなく、比較のため先行発売されたロードバイク「YPJ-R」でも走りました。

ヤマハ発動機の核となる本館事務所前をスタート&ゴールに設定。「YPJ-C」とともに

するとおもしろい結果が。同じコースを走ったのに、なんだかYPJ-Cのほうが楽に走れたのです。2周目となったYPJ-Rは、1周目の疲れが残っていたからというのも理由のひとつですが、走行後のデータを比較するとYPJ-Rが平均速度で1.3km/h上回り、へばるほどではなかったことがわかります。

思うにYPJ-Cはクロスバイクということで、アップライトな乗車姿勢もあってか、景色を眺めながら比較的ゆっくりとしたスピードで走りたくなります。ところがYPJ-Rはロードバイクゆえ、ついついスピードを上げすぎてしまうのです。結果的にアシスト機能を十分に生かしきることができず、そのぶん疲れてしまったというわけです。これはYPJ-Cのほうが消費カロリーで40kcal、バッテリー残量で5%下回っていたことからも推察されます。

遠州の名刹、法多山尊永寺の参道入口。ここからが小笠山の肩を越える山岳区間となる

小さなアップダウンを経てたどり着いた袋井市・掛川市の市境

つまり電動アシスト付き(=本気モードではない)スポーツバイクというコンセプトには、YPJ-RよりYPJ-Cのほうがマッチしているというのが、両者を比較したうえでの結論です。同社マーケティング部の鹿嶋泰広さんも、“電動アシスト付き自転車=PAS”のイメージを刷新するため先行させた前者に対し、やはり後者が本命とおっしゃってましたから、あながち偏った意見でもないでしょう。

となると前述のコラムでも触れたフロントのシングル化、さらに言えばオートマチックの導入が熱望されますから、これを鹿嶋さんにぶつけてみました。前のめりとなった僕の意見に対し、鹿嶋さんから「フロントのシングル化は、商品化にあたって検討をした。ただ、走行中にバッテリーが切れたときの安全策として、今回はダブルに…」との返答がありました。

確かにまったく新しいカテゴリーのふたつ目のモデルですから、イメージを傷つけるような事態は避けるべき。となれば「YPJ-C」のパッケージングも納得がいきます。ただしこのカテゴリーが定着した暁には、派生モデルとしてフロントのシングル化を実現してもらいたいものです。

今回のテストに使ったコース。距離は37.8kmで、獲得標高は328mとなる

次にオートマチック導入について。2015年1月29日公開の当コラムでも取り上げたことがありますが、シマノのサイバーネクサスなき今、車速に加えてペダルの回転数やペダルに加わるトルクを計測してアシスト力を制御するヤマハのシステムなら、人間の感覚に合致したオートマチックが実現可能かと思っての要望です。こちらもシマノが有する特許との関係があり、一朝一夕にはいかないようですが、リヤハブにパワーユニットを搭載した「PASスマイル」(2001年)など両社が協同した実績もあります。

電動アシスト付きのスポーツバイク…。このカテゴリーを打ち立てたヤマハ発動機の功績は大きいものの、その普及や定着、機能面での進化といったすべてを一社に委ねることはできません。これは同社を軽く見ているのではなく、それほどまでに大きな可能性を、電動アシスト付きのスポーツバイクが秘めていると思うが故です。
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