■その特徴、主催者の意図は?
これまでのツール・ド・フランスは大まかにいうと1年ごとに右回りと左回りを繰り返していた。2016年は左回りだったのでピレネーが前半戦、アルプスが後半戦の勝負どころだった。だから2017年は右回りの年にあたり、前半がアルプス、後半がピレネーという順番のはずだった。
しかも開幕地はドイツ。案の定そのまま南下し、意外と厳しいボージュ山脈とジュラ山系を通過し、第1週の終わりにはアルプス山麓にさしかかっていた。
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2017ツール・ド・フランスのコース
ところがコースはここで急展開。移動日に空路を利用してフランス西部のドルドーニュ地方に飛び、3日後にはまさかのピレネー山脈へ、フランスの大地をジグザグに進み、さらには中央山塊へ。そして最後の最後にアルプスに突入。結果としてフランスの5大山系のすべてを上る。これは1992年以来のことだという。
ドイツで開幕するのは4回目。前回は30年前の西ベルリンで、ベルリンの壁崩壊以前だった。2017年のデュッセルドルフは欧州最大の日本人街がある。大阪府堺市に本社があるシマノも欧州進出時はこの町に拠点を置いて、プロチームにメカニックを派遣するなどでレーシングパーツの実績を積んでいったのである。
個人タイムトライアルの合計距離は2016年の54kmから36kmと減少。2016年の総合1位クリス・フルームにとってはマイナス要素、同2位ロマン・バルデ、3位ナイロ・キンタナにとってはプラス要素だ。主催者は「急しゅんな斜面が多く、これまで以上に山岳が厳しくなった」と紹介したが、上りを得意とするバルデは「いや、そんなにキツくはない」と涼しい顔だ。
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2017ツール・ド・フランス最後の大一番となるイゾアール峠
フルームにとっては2012年に大会初勝利を遂げたラプランシュ・デ・ベルフィーユがコースに加わったことで笑顔が戻った。最大勾配値20%の激坂で、フルームのみならず世界チャンピオンのピーター・サガンも区間勝利をねらってくるはずだ。
「クイーンステージ」と呼ばれる大会最難関はナントゥア~シャンベリー間の第9ステージ。恐竜時代には大物がウヨウヨいたというジュラ山系を走り、1日の獲得標高は4600mにもなるという。最後の勝負どころはアルプスの第18ステージ。往年のファウスト・コッピやルイゾン・ボベが伝説的な走りを見せた峠だが、ゴール地点に設定されたのは史上初だ。
そして最終日前日には総合優勝を確実にする個人タイムトライアルがマルセイユで行われる。フランスのファンとしては1985年のベルナール・イノー以来32年ぶりの地元選手の総合優勝をここで決めて、フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」を高らかに歌いたい。そんな心情がコースにちらりと垣間見える。