サッカー界に今も伝説として語り継がれる“神の手”ゴール。1986年のFIFAワールドカップ準々決勝、アルゼンチン対イングランドの試合でアルゼンチン代表ディエゴ・マラドーナ氏が決めたゴールがそう呼ばれている。
イングランドのゴール前に上がったボールを、相手GKと競り合いマラドーナが頭で決める。だが直後からイングランド側はハンドを主張。マラドーナは味方と抱き合って喜んだが、後にボールは頭でなく左手で叩かれていたことが分かる。
試合後にハンドだったのかと聞かれたマラドーナは、「神の手が触れたんだ」とうそぶき話題になった。
このゴールに疑問を持ったのはイングランドだけではなかった。後方にいた味方も身長165センチしかないマラドーナが、どうやって手を使えるGKに競り勝ったのかと不思議がっていた。
この試合にDFとして参加していたオスカル・ルジェリ氏は、「我々にはゴールの場面は見えなかった。マラドーナはヘッドしたと思ったよ」と語るが、同時に「GKに競り勝ったならトンデモないことだ。守備陣は後ろにいたのでゴールを祝福できなかったが、どうやって手が使える相手に競り勝てたのだろうかと思った。そこで彼に質問してみたんだ。手を使ったのかい?とね」と当時を振り返る。
「彼は『いや。頭で決めたよ』と答えた。しばらくあとになって映像を見ると、手を使ってたと分かった。あまりにも完璧にやったので線審にも分からなかったんだ」
身振りを交え愉快そうに語るルジェリ。彼にとっても生涯忘れられない一戦になった。
《岩藤健》
page top