■下町職人の手で作られる
東京都足立区、民家のような町工場でさまざまなタイプの輪行袋が日々生産されている。従事しているのは伊美さんをはじめ10人ほどの職人、パートさん。1970年創業で、先代の父はミシンひとつで自転車用バッグなどを生産していた。現在は「輪行」というスタイルが一般に浸透し、殺到する注文に追われる。ナイロン袋を縫い合わせる地味な作業はこの町工場で一貫して行われる。
生地の裁断、ブランドロゴの印刷は伊美さんにしかできない熟練の作業だ。操業は朝9時から夕方6時までで、品質を落とさないためにもキッチリとそれは守るというが、伊美さんだけは居残ってひとりで辛抱強い作業を続ける。つまり日本で販売されるオーストリッチ製品はすべて伊美さんの手がかかったものなのだ。
サイクリングをこよなく愛し、自身の豊富な輪行経験にもとづく合理的でスマートな輪行術を編み出した。それでも日々の試行錯誤は一段落することはなく、わずかな小物ひとつ取っても改良していく。たとえば後輪を外してしまうと垂れ下がるチェーンを、フックのついた伸縮性のあるヒモで引っ張る小物。フレームと両輪を束ねて固定するストラップは伸縮性のあるものに変えた。
「もちろん商品化しましたが、100円ショップで同じような材料が買えますよ」と、商売人とは思えない発言も。
■国内生産にこだわる
「湿度で伸び縮みするナイロン生地をすべて同じ大きさに縫い上げるには、熟練の腕が欠かせない。それがオーストリッチの宝です」
ポリシーはなによりも品質第一。海外に出せば安く作れるが、品質管理が行き届かなくなってしまう。だから今の方式は変えないと語る。各地で輪行講習会の講師を引き受ける。作業手順は特集雑誌が出版されるほど奥が深いが、「気軽にやりましょうよ。車輪を外して、ヒモで固定して、袋に入れるだけ」。それで遠くまで走りに行けるのだから1万円ほどの輪行袋は高くはないかも。
■輪行工程
輪行のプロである伊美さんにその手順を教えてもらった。袋はオーストリッチの定番モデル「L100輪行袋超軽量型」を使用。携行時はボトルと同じ大きさになるので走行時に負担にならない。
(1)前後の車輪を外す
鉄道会社の規定では両輪を外さないとサイズとして持ち込めない。

(2)エンド金具をつける
自転車をこの位置で自立させるためにフレームの後端に特別のアルミ金具を取りつける。

(3)フレームと両輪を固定する
傷つく部分にクッションを置き、3本のベルトでしばりつけて固定する。

(4)輪行袋に入れる。袋には向きがあるので注意
オーストリッチ製品には袋の底に印刷で指示があるのでわかりやすい。

(5)自転車の一部がはみ出さないように注意しよう

(6)袋で自転車を覆って担ぐ
右利きの人は左肩で担げば右手で交通系カードをタッチできるなど、じつは奥が深い。
