社会人野球は5月9日現在で、346チームが登録されている。そのうち企業チームが88、倶楽部チームが258となっている。かつて企業チームの数が250を超える時代もあった。しかし時代の趨勢の中で、企業が社会人野球チームを維持することが難しい社会状況にもなってきたこともあるのだろう。その一方で高校、大学と野球を続けてきた選手たちの「社会人となっても野球選手でありたい…」という想いを叶えているのが倶楽部チームである。
■倶楽部チームと企業チーム、目指すは東京ドーム
全国の倶楽部チームはその成り立ちやありようによってさまざまだが、都市対抗の予選で戦うことはひとつの目標でもある。もちろん倶楽部だけの「クラブ選手権」もあり、まずはそちらを制して…という考え方もあるだろうが、都市対抗野球はそんな倶楽部チームと企業チームが同じ場で戦い、東京ドームを目指すところに面白さがある。
試合としては企業チームが圧倒することがほとんどだ。それでも参戦していく倶楽部チームは、戦うことに意義を見出している。先日訪れた東海地区二次予選(岡崎市民球場)では、新日鐵住金東海REXと三重県の奥伊勢クラブが対戦し32-3という記録的なスコアになってしまった。それでも、こういう試合を含めて、都市対抗予選の面白さともいえるのかもしれない。
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スコアを見るととんでもない試合のように見えるが、こういう試合もあるのが都市対抗予選。こんな試合になった事情のひとつに、試合日が月曜日だったということがある。クラブチームの場合は試合日に必ず全員が集合できるかというと、それぞれが異なる環境で仕事を持っていることもあり、どうしても仕事の都合で試合に来られないこともしばしばある。
実は奥伊勢クラブには若林省伍投手(久居農林→三重中京大)というエースがいたのだが、この日は仕事の都合で来られなかった。それでも何とかやりくりしていかなくてはならないため、中畑友太投手(斐太→三重大)が先発したものの、容赦ない新日鐵住金東海REXの攻撃を防ぎきれなかった。
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奥伊勢クラブ・中畑投手
もっとも倶楽部チームと企業との対決では、しばしコールドゲームになる。それでも倶楽部チームの選手こそ、野球愛は強いのも確かだ。何しろ自分の生活の中で、可能な限りを野球につぎ込んでいるのだ。そこには、例えば都市対抗常連の大手企業でプレーしたかったが、声がかからなかったり…大学野球で挫折してしまったが、まだまだ野球を続けたかったり…あるいは、すべての中で不完全燃焼だったと感じた自分をもっと励ますために、もう一度野球をやろうという想いもある。
そんなさまざまな気持ちが交錯するが、都市対抗予選では事情を抱えた選手も、一流企業の限られた枠に選ばれてプレーできる選手も、同じステージで戦えるのだ。
■企業チームに一泡吹かせたい
かつて都市対抗を制した河合楽器が2002年に部を解散したことで、そこをベースに発足したのが浜松ケイスポーツベースボールクラブだ。昨年は予選で新日鐵住金東海REXを下して注目された。今年も企業チームに一泡吹かせたいという思いでぶつかったものの力およばず最終的には王子にコールドゲーム。だが、食い下がった試合となった。
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浜松ケイスポーツBC対王子
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初回に浜松の中嶋涼太(横浜創学館→八戸学院大)が一死後から左越三塁打すると、続く永井俊明が(船橋西→浜松大)が右犠飛を放って先制。先発の原木大介(磐田農)も何とか守り切って途中まではリードをキープしていた。4回に、9番前田滉平(京都外大西→駒澤大)のタイムリー打などで逆転を許したが、昨年の第3代表王子に食い下がった浜松ケイスポーツの健闘が光った。
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浜松ケイスポーツBC・中嶋涼太
母体となった河合楽器だけではなくJAやその他、地域のさまざまな職場から野球を本当にプレーしたい人たちが集まり、ワンランク上のチームにぶつかっていく。これもまた、都市対抗予選の面白さでもある。そして、例えば北関東の全足利クラブや近畿の大和高田クラブのように、予選を勝ち上がってくるところもなくはない。それも都市対抗野球の楽しさでもある。
都市対抗野球の本大会までは、予選を経て1カ月半後に始まる。予選結果を見つめながら、改めて都市対抗野球と社会人野球を見る楽しさも追及していきたい。例えばユニフォーム、あるいは応援団の華やかさ、そしてプロに直結している有望選手たちなど、社会人野球の魅力紹介していこう。