変化の重要性、アスリートのキャリアにも 村井忠寛氏 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

変化の重要性、アスリートのキャリアにも 村井忠寛氏

オピニオン ボイス

村井忠寛氏
  • 村井忠寛氏
  • 村井忠寛氏
  • 村井忠寛氏
  • 村井忠寛氏
スポーツ界での生き方やビジネスを考える不定期連載「人、ビジネスとスポーツ」。今回はアイスホッケー界の「レジェンド」村井忠寛氏に話を伺った。

村井氏は、元プロアスリート、アイスホッケー選手。1975年7月25日、北海道・苫小牧市生まれ。東洋大学から1998年、古河電工アイスホッケー部入団。1999年1月、古河電工がアイスホッケー部の廃部を発表。翌シーズンからは古河廃部を受けて創設された日本初の市民クラブチーム、日光アイスバックスでプレーした。

現役時代すべてでアイスバックスに所属。2009年シーズンから2013年シーズンまで監督を歴任。2011年シーズンではチーム史上初の準優勝。2013年シーズンより事業推進・営業・地域の業務を担当した。選手、監督、スタッフとしてアイスホッケー業界の中でも異色のキャリアを歩む。

現在は、アスリートの育成やキャリア構築を支援するAthlete Standard Inc.の代表を務める。

アイスホッケー界のレジェンドは、スポーツ選手の生き方を支援する事業を立ち上げた。この背景にあるものや、村井氏のビジネスマンとしての思考に迫った。

***(村井氏)

アスリートの育成とキャリア支援の会社は、深く行きたいと考えています。

2015年9月にAthlete Standard Inc.を設立しました。この会社は、アスリートの育成・教育を真ん中に、アスリートの人生を豊かにするため、現状は、部活動やチームマネジメントや個人のコーチング、育成・教育のコンテンツの共同プロジェクト、そしてキャリア支援も同時に行い、様々に動いているところです。

Athlete Standardでは、部活動マネジメントに役立つ、組織分析ツールがあります。既に導入している部活動もあり、チームの状態や個人の心の状態を定量的に可視化できるツールを用いて、チームパフォーマンスを上げてもらえるようサポートしています。


---:アスリートの支援をしたいと考えたきかっけは。

プロになって1年目で廃部になり、プロ化せざるを得ない状況でプロを選択しました。大企業に入って、アイスホッケーをはじめて24歳で、プロで居続けることが永遠に続くような錯覚におちいっていました。

プロでも長く慣れた環境にいると楽になることが多いです。

人ってダメージを負うと考えることが多くなりますよね。私も26歳ぐらいの時に肩の手術をし、社会に出て行くにはどうしたらいいのかと考えました。

そこで衛生管理資格を取得するなどし、33歳で現役を引退しました。その後、監督のオファーを頂き考えた結果、引き受けることにしました。

監督をすると、選手時代と違う問題意識、人事権をもちます。

実力の世界ですから、その人の人生を決める決断をする場合もあり、そうして引退した選手はどうなるのか、切るカードがないときに、受け皿になる仕組みが必要と感じました。

アイスバックスは、唯一のプロチームだったので、そうした受け皿がありません。監督という立場だと、夢だけで引っ張っていかないといけない。監督として、人事を決断した場合は、選べなかった人に対して次の道を示せないまま、自分の職を全うしないといけない。

課題を感じながら監督を4年続けてみて、選手のキャリアを考えるようになりました。

その後、監督を辞め、法人営業担当を2年間やりました。


---:キャリアを考える上で、個人はどのような取り組みが大切になると考えていますか。

アイスホッケーの世界に限らずですが、「キャリア」の定義は簡単に言うと「その人の生き方」です。つまり、どんな生き方を未来に描くのか?そこから今の自分を知ること。それがとても大切です。競技中から、どんな生き方をするために今の競技を続けるのか?を考えると自分なりの答えが見つかるのです。

しかし、多くの選手はまず知らない、情報をとる術を知らない、機会もない、という状況です。

私たちの育成事業には2つの内容があり、1つは競技を通じた育成プログラム。そして、2つ目にキャリア育成プログラムです。内省的に自分を知ることで、自分の強みや弱みはもちろん、社会の中での自分の活かし方を理解できます。

元プロ選手のキャリア育成を行った時、自分の強みが4つしか出ないことがありました。あまりにも視野が狭く、これが競技一貫で歩んだ結果だと感じた瞬間でした。その後、ワークを行い、今までにはない自分の良さを知ることになり結果として納得のいくキャリアを選択することになったのです。

2020年までに選手の強化が促進していく中で、同時に引退後のキャリアパスをどのようにしていくのかが非常に大切なポイントです。まずは、個人に変化を与えること。それが、私たちのできる第一歩です。


---:支援の対象は、具体的にどのような層なのでしょうか。

「アスリート」とくくっているので、全てです。キャリアの対象は社会との接点を持つ年代の大学生アスリート、プロ選手。もしくは引退しキャリアを考える元選手です。

語弊を恐れずにいうと、アスリートは「五輪に出る、優勝、勝つ」といった結果だけがその人の幸せではないと思っています。今やっている価値は、結果の先の目的が描け、初めて今の価値がわかる。社会でも同様に「大企業」とか「給与」という形のあるものだけが価値とは限らない。キャリア形成には最終的には自分の心のベースになる「自尊心」が大切です。また、目的と目標を大きな視野で持ち、価値提供を自らで伝えなければなりません。

スポーツにおける教育の本質は、「自らで未来を切り拓く力」すなわち真の自立だと思います。自分の意志で、自分の未来を描き切り拓くことができれば、どんな世界でもアスリートの人生は豊かになる。そう信じています。
《土屋篤司》

編集部おすすめの記事

page top