【小さな山旅】イロトリドリの世界を歩く紅葉ハイク…福島県・安達太良山(2) | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【小さな山旅】イロトリドリの世界を歩く紅葉ハイク…福島県・安達太良山(2)

オピニオン コラム
紅葉まっさかりの安達太良山。思わず息を呑むほどの景色である。
  • 紅葉まっさかりの安達太良山。思わず息を呑むほどの景色である。
  • 下山時、分岐の峰の辻に到着。
  • 峰の辻で一休みする人々。
  • 安達太良山の頂きを、少し離れてみる。
  • イロトリドリの世界が山全体を包む。
  • くろがね小屋が見えてくる。
  • くろがね小屋からの眺め。
  • 紅葉トンネルの中を歩く。
山で紅葉を見る? しかも、百名山?

そんなの混雑しているに決まっている。筆者としては、山で日常の煩わしさから解放され、のんびりと過ごしたいのだ。それをわざわざ山にまで行って、しかも茨城県外(福島県)まで足を運んで、人混みの中を歩くなんて、とんでもない話である。

上記は、今回の安達太良山ハイクに行く前の筆者の考えであった。

●イロトリドリの世界
ところが。

クルマで山に向かっている途中、安達太良山がイロトリドリに染まっているのを見て、「これはマズい。混雑しているに違いない…」と不安になるどころか、「スゴい、スゴい」とはしゃぐ始末である。登っている最中も、下山後も、その興奮は冷めやらず。

「スゴい、来年も行こう!」

下山後には、すっかり紅葉の山の虜になっていた。考え方が180度変わるほど、紅葉に染まる山は優雅であり、迫力があった。

赤や黄色に染まった広葉樹の葉と、針葉樹の緑の葉。澄み切った秋の空の色と、頂上付近の岩や土の灰色や茶色。この幅の広い色相の世界が、自然の中に存在しているのである。このようなイロトリドリの風景は、街の中にいて見られるものじゃない。

そのイロトリドリの世界の中を、外から眺めるだけではなく、ズッポリと入り込んで歩くのである。幻想的?確かに言葉にするとそのような表現が当てはまるのかもしれない。でも、この感動は歩いた人にしかわからない。

●山には「いいこと」が詰まっている
山に行くと、このような圧倒的な風景に出会うことがある。今回の紅葉もそうだが、森林限界を越えた景色もそうだし、雪に包まれた真っ白な世界だってそうだ。普段歩いている里山だって、夏の濃い緑は視覚と一緒に嗅覚も楽しませてくれる。

緑の匂いは確かに存在していて、夏の里山はその匂いにすっぽりと覆われてしまう。冬の枯れた里山だって、凛とした空気の中を落ち葉を踏みしめ歩くのは、圧倒的とまではいかないが不思議な世界に迷い込んだような錯覚を起こさせる。

つまりは、山に行くと「いいこと」がある。それは、時には辛く厳しい時もあるとして、総合的に結果的に見れば「いいこと」なんじゃないかなと思う。

今回の安達太良山の紅葉ハイクもそうだ。登りは行列に並ぶように山を歩き、下山時には疲れてフラフラになる。足が痛くなって一歩踏み出すのも辛くて、しかも遠回りをしてしまって「道に迷ったんじゃないか?」と友人と騒ぐ。

帰りのクルマは渋滞に巻き込まれて「眠い!眠い!」と発狂したとしても、それはたぶん後になってみれば山で出会った「いいこと」にはまったくかなわなくて、引っ括められてしまうのだ。
《久米成佳》

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