【澤田裕のさいくるくるりん】サイクリングの最後は、温泉でシメる | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【澤田裕のさいくるくるりん】サイクリングの最後は、温泉でシメる

オピニオン コラム
風水害で倒れた保養施設の浴槽が、有志の手で管理されている
  • 風水害で倒れた保養施設の浴槽が、有志の手で管理されている
  • 当時の脱衣所が、今も大きく変わることなく維持されている
  • 地滑りで崩壊してしまった澄川温泉の野趣あふれる露天風呂
  • 噴出する蒸気を利用し、野菜を加熱調理していた
  • 極上の泉質を堪能した湯ノ沢温泉
  • 肘折温泉にある共同浴場。その前で地元の人がのんびりとたたずんでいる
  • 1日半をかけ、夏沢峠まで自転車を押し上げた
  • 勇気を奮って本沢温泉の湯船に浸かる。幸いにして登山客の姿はなかった
右腕の骨折から40日が経ち、キーボードを打つのはだいぶ楽に。ただし、まだ自転車に乗ることはできません。今はリハビリテーションに通いつつ、自身でストレッチもしています。この作業を行うのは主に入浴中。患部を温めて筋肉のこわばりを和らげようとの考えです。

で、入浴といえばできれば温泉で、心身ともにほぐしたいものです。そこで今回は、サイクリングで訪れた温泉の中から、印象に残っているものを紹介しましょう。

まずは北海道標津町にある川北温泉です。知床半島の付け根、根北峠をまたぐ国道244号から、枝道を進んだ先にあります。市街地にも野生動物が出現する自然豊かな北の大地。しかも未舗装の林道ということで、クマに出くわす可能性も皆無ではありません。おっかなびっくり進んだ先にあるここは、かつてあった町営の保養施設が風水害で倒れ、浴槽だけが残ったとのこと。当時も地元の人の手で管理され、脱衣所が設けられておりました。しかし2012年の大雨で林道が不通となり、今年6月に3年ぶりに再開したようです。10月になると最低気温が零下となりますから、訪れるなら来月いっぱいまででしょう。根室中標津空港が最寄りとなり、羽田空港から1日1便飛んでいます。

続いて秋田県鹿角市にあった澄川温泉。"あった"というのは、1997年5月に大規模な地滑りで施設が崩壊したからです。僕が訪れたのは93年でしたから、その4年後のことです。近くにある玉川温泉や後生掛温泉と同様、湯治客でにぎわう宿には写真のような野趣あふれる露天風呂がいくつもあり、地元のみなさんは野菜を持参。噴出する蒸気を利用して加熱調理していました。湯治宿は自炊すれば料金は格安。複数での利用なら、今でも1人あたり3000円や4000円という宿が見つかります。

同じく秋田県湯沢市の湯ノ沢温泉は国道13号の途中、JR奥羽本線の院内駅近くから枝道を進んだ先です。道のどん詰まりにある一軒宿は、旧館を選んだこともあって部屋は簡素なものでしたが、その湯には驚きました。源泉掛け流しはもちろんのこと、とにかく肌当たりが柔らかく、いつまでも入っていられるのです。なんと言ったらいいのでしょう。極上の羽毛布団にくるまれているような、そんな境地を味わいました。

山形県大蔵村の肘折温泉は、新庄市と上山市を結ぶ国道458号の沿道にあります。この国道は一部に未舗装区間を残していることで知られていますが、僕が走った97年当時も未舗装とはいえ路面は堅く締まっていて、走りにくかった記憶はありません。東北の温泉らしくこちらも湯治が可能で、肘ならぬ腕を折った僕にピッタリといえましょう。JR山形新幹線の新庄駅から30km弱ですから、東京駅を10時に発ってもその日のうちに宿にたどり着くことができます。

最後に紹介するのは、長野県南牧村にある本沢温泉。標高2150m、日本最高所の野天風呂というキャッチフレーズで知られています。JR中央本線の茅野駅から八ヶ岳を目指して上り基調の道を進み、未舗装となった道は山道へと変わり、やがてオーレン小屋に到着。ここで一泊して翌日に夏沢峠を越え、下る途中に現れるのが本沢温泉です。登山道から丸見えという湯船のほかは脱衣所もなく、入るには勇気を要します。すぐ近くに宿泊もできる内湯があるので、恥じらいの気持ちを忘れてない人にはそちらをお勧めします。

9月のシルバーウィークは、九州を自転車で巡る予定にしています。5泊6日の行程には温泉も含まれていまから、湯船にゆっくりと浸かって右腕の回復に弾みをつけたいものです。
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