【THE ATHLETE】ウサイン・ボルトが見せる王者の覚悟…努力と献身は薬を凌駕する | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE ATHLETE】ウサイン・ボルトが見せる王者の覚悟…努力と献身は薬を凌駕する

オピニオン コラム
ウサイン・ボルト(2015年7月24日)
  • ウサイン・ボルト(2015年7月24日)
  • ウサイン・ボルト(2015年7月24日)
  • ウサイン・ボルト(中央、2015年7月24日)
  • ウサイン・ボルト(2015年7月24日)
  • ウサイン・ボルト(2015年7月24日)
  • ジャスティン・ガトリン 参考画像(2015年6月28日)
  • タイソン・ゲイ 参考画像(2015年6月25日)
  • モハメド・ファラー(2015年7月24日)
世界陸上が中国・北京で8月22日に開幕する。1カ月を切り世界中のメディアが注目しているのは、ウサイン・ボルトとジャスティン・ガトリンの出場する男子100メートルだ。

アテネオリンピックで金メダルを獲得し、世界最速の男として名を馳せながら、後にドーピングが発覚して4年間の出場停止処分を受けたガトリン。33歳になった彼は今大会で再び世界の頂点を目指す。

そしてガトリンのチームメイト、タイソン・ゲイも薬物違反からの復活にかけている。

■ボルト「タイソンの薬物違反は失望した」

ダイヤモンドリーグ2015のロンドン大会に出場したボルトは、7月23日に現地で会見を開いた。今シーズンは6月に骨盤の異常を訴え、約1カ月競技から離れていた。復帰戦となる大会だが暗さはない。会見では「北京に向けても一歩ずつ進んで行くよ」と語った。


ウサイン・ボルト

しかし、今シーズン絶好調のガトリン、そしてライバルのタイソンについて聞かれると、はっきりタイソンへの失望を口にした。以前から処分が軽い、永久資格停止処分にするべきだと主張してきたが、その裏には好敵手と認めていたがための強い想いもあるようだ。

「僕が本当に苦戦した相手はタイソンだけだったと思う。タイソンとは何年も争い続けて、競争相手として強く尊敬していた。対戦した中で最も素晴らしい相手のひとりだと思っていた。彼は走ることに専念して必死だった。一緒に走ることを本当に楽しみにしていたんだ。だから彼にはひどく落胆させられた」


ジャスティン・ガトリン



タイソン・ゲイ

なぜガトリンには、そこまで強い失望を感じないかとの質問には、「彼がやってきたことを肯定してるわけじゃない。ただ僕が知らないころの話だしね。タイソンとは近くで戦ってきたから、より落胆しているというだけさ」とコメント。思い入れの分だけ感情の揺れ幅も大きかったようだ。

■サラザールの教え子には同情的なコメントも

今大会ドーピング関連で注目されているのは、ガトリンとタイソンだけではない。米国の中長距離指導者アルベルト・サラザールには、過去に選手へドーピングを指示した疑惑が浮上している。

従来ケニアやエチオピアなど、アフリカ勢が強かった5000メートル走、1万メートル走。だがサラザールは特異な指導法で選手を強化し、教え子のモハメド・ファラーがロンドンオリンピックで2冠を達成した。


モハメド・ファラー

世界中から指導法に注目が集まった。日本陸連もサラザール・メソッドに希望を見出していたが、世界陸上を目前にした6月、まさかの醜聞が持ち上がる。

ボルトはファラーの世界陸上出場に同情的なコメントを寄せている。

「モーには同情している。新聞でその話を目にしない日はない。周りが彼を壊そうとしている。彼は今いる場所にたどり着くため必死に頑張ってきたと思うが、別の誰かのミスが彼を苦しめている。モーにはあまり重く受け止めずに、ストレスを感じないでほしいと思う。こういうこともスポーツの一部だからだ。人々は失敗を探したがるものだ」

■「僕は救世主じゃない。クリーンに速く走るだけだ」

陸上競技は薬物汚染が叫ばれて久しい。今回の世界陸上でもガトリン、タイソン、アサファ・パウエルといった、ボルトのライバルになり得る選手たちの多くが過去、何らかの問題を起こしている。

その中で薬物に陽性反応を示さず、100メートルと200メートルの世界記録を保持するボルトには、陸上界の救世主との期待が大きい。だが彼は至って冷静に、「救世主は僕だけじゃない。すべてのアスリートには競技のイメージアップに貢献する責任がある」と語った。


ウサイン・ボルト

「僕は自分のベストを尽くすだけだ。クリーンに速く走ろうとしている。僕がやることはそれだけ。それを続けていくしかない。僕だけが陸上競技の救世主というわけではないが、目の前のゴールに集中し、ベストを尽くして、目標を達成したい。これから出てくる選手には、努力と競技への献身によって、薬物に頼らなくても勝てることを学んで欲しい。若い選手の模範になりたい」

このあとに出場した男子100メートルでは、決勝で9秒87を出し優勝したボルト。レース後は「スタートで失敗し計算が狂った。もっと速く走りたかった」と反省を口にしたが、今シーズン初の9秒台でライバルに強烈なプレッシャーを与えた。

《岩藤健》

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