■風がすべてのゲームプランを狂わせた
この試合は立ち上がりの不調がすべてだった。砂埃が舞い、打ったボールが大きく流される強風の中、錦織は序盤からサービスのコントロールに苦しむ。ファーストサービスが入らず、セカンドサービスを慎重に入れると、ツォンガの強烈なリターンが返ってくる。第2セット途中までの錦織は、サービスゲームの優位性を何ら発揮することができなかった。
試合前に用意していた作戦が風で無効化され、錦織は「焦りが出て自分を見失ってしまった」と振り返る。その言葉通り得意なはずのストローク戦でも先にミスを連発し、4回戦までなら難なく決めていたショットがアウトになる。
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■冷静さを取り戻すきっかけも風だった
強い風が吹き荒れたセンターコートでは、第2セット中にアクシデントがあった。強風に煽られ看板の一部が観客席に落下。負傷者を出す事態になったのだ。
会場の安全が確保されるまで30分以上ゲームは中断した。この間に錦織はコートから姿を消し、コーチらとメンタル面での立て直しを図る。
「第1セットは強風の中で『早く決めなければ』と焦った。バックを突いていかなければならなかったのに、とにかくポイントを取ろうと急ぎ、相手の嫌なところを攻められなかった。ラリーになっておらず、ツォンガにフォアを打たせすぎてしまった」
中断前の自分のテニスを冷静に振り返った錦織は、ここから本来の姿を取り戻し、ようやくツォンガ相手に地に足の着いたプレーを見せ始める。
【強風で自分を見失い修正が遅れた錦織、課題も残る全仏ベスト8 続く】