【インナーローでいこう!】ニーバリは1秒のすきも見せずマイヨジョーヌを守ってきた | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【インナーローでいこう!】ニーバリは1秒のすきも見せずマイヨジョーヌを守ってきた

スポーツ 短信
ビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)
  • ビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)
  • ニーバリ対コンタドール(ツール・ド・フランス14、第8ステージ)
  • マイヨジョーヌのニーバリと並んでゴールしたペロー(左)
第101回ツール・ド・フランスも、いよいよ大詰め。第18ステージ終了時点では、イタリアのビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)が2位以下に7分以上の大差をつけて念願の総合優勝をつかみとろうとしている。

◆ニーバリに先行できたライバルは、コンタドールだけだった

それでは今年のニーバリがいかに強いのか、これまでのステージでの戦いぶりをもとに振り返ってみよう。

イギリスでの第2ステージでライバルのすきをつくアタックを成功させ、ステージ優勝を勝ち取るとともに2秒差で初めてマイヨジョーヌに袖を通したニーバリ。

さらに第5ステージでは初経験の石畳のレースにもかかわらず、チームメイトたちにうまく守られ、主要なライバルとの差を約2分つけることに成功した。

このときはニーバリがこのタイム差をクッションにして、どこまで総合首位の座を守れるのか、というのが大方の見方だった。

その後、弱みらしきものを見せたのはボージュ山脈での第8ステージ。ゴール前でのアルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ)の執拗な攻撃にラスト50mで屈し、3秒のタイム差を奪われた。しかし、そのコンタドールが雨の第10ステージでリタイアすると、ニーバリを脅かすものは皆無と言える状況になった。

その前日の第9ステージでは、大逃げを決めたトニー・ガロパン(ロット・ベリソル)にマイヨジョーヌを譲ったものの、ガロパンは総合争いで最終的な脅威となる選手ではなかったため、アスタナとしては計算内のジャージ移動だった。

この日は過去にツール総合8位に入った経験があるピエール・ローラン(ユーロップカー)もガロパンと同じ集団でゴールし、ニーバリとのタイム差を約2分30秒まで縮めた。しかし、今大会のローランは好不調の波が激しく、この差を守れずにズルズルと後退していった。

もちろん、ニーバリだって毎ステージ先頭集団でゴールしているわけではない。だが、もはや総合争いに関係ないラファル・マイカ(ティンコフ・サクソ)などにステージ優勝を許すことはあっても、注意すべきライバルには1秒も先行させなかった。

つまり、アレハンドロ・バルベルデ(モビスター)、ティボー・ピノ(FDJ)、ジャンクリストフ・ペロー、ロマン・バルデ(ともにアージェードゥーゼル)、ティージェイ・バンガーデレン(BMCレーシング)、バウク・モレマ(ベルキン)、フランク・シュレク(トレックファクトリーレーシング)、ユルゲン・バンデンブロック(ロット・ベリソル)、リッチー・ポート(チームスカイ)といった各チームの総合系エースたちは、第18ステージまで一度も1秒すらニーバリの前でゴールしていないのだ。

ニーバリがあえてライバルを見送って多少の秒数を譲ることもなければ、ライバルたちが攻撃してタイム差をつけることもなかった。彼らが何かを仕掛けようとする前に、ニーバリ自身がアタックし、すべてのライバルを置き去りにしてきたのだ。

結局、石畳の第5ステージでニーバリがライバルたちに対して築いた2分前後の差は、予想に反して一度も縮まることなく、逆に7分以上まで開いて終盤まで来たのだ。

こうなると、ニーバリと戦える力を持っていたのは、すでにレースを去ったクリストファー・フルーム(フルーム)、そして第8ステージで3秒奪ったコンタドールの2人だけだったのかもしれない。しかし、ケガやリタイアもレースの一部、スポーツの一部だ。そういう不運も寄せ付けなったのが、ニーバリの強さとも言える。

◆「バッドデイ」がなかったニーバリ

ニーバリがここまで好調をキープできているのは、調子の悪い日、いわゆる「バッドデイ」がまったくなかったことも大きな要因だ。

いくら総合優勝する選手と言えども、3週間のグランツールの中では必ずバッドデイが1日か2日はあるものだ。昨年、圧倒的な強さを誇ったフルームも終盤のラルプデュエズのステージではハンガーノックに陥ったりと、弱みも見せていた。

特に雨や気温の変化もあった今年のツールは、多くの選手が体調不良を訴えていた。実際、胃や気管支系の不調、またはウィルスなどの感染症に悩まされている選手も集団内にたくさんいるようだ。

フルームからチームスカイのエースの座を受け継いだポートも胃に問題を抱えてアルプスで失速したし、バンデンブロック、バルベルデなども遅れたステージでは体調面でなんらかの問題があったと訴えている。ある日はニーバリにかろうじてついていけても、別の日は大きく遅れてしまうということを繰り返す選手も多かった。ニーバリにとっては、体調管理面でのチームのサポートも完璧だったのだろう。

また、アスタナのアシスト陣も2週間以上レースをコントロールしながら、ここまで1人のリタイアも出さずにエースをアシストしてきたことも忘れてはならない。ヤコブ・フグルサングなどは落車の傷に耐えながらも、ニーバリのために最大限の献身をしている。

総合争いの決戦は、第20ステージの個人タイムトライアル(TT)を残すのみ。総合3位につけるペローは元フランスTT王者のスペシャリストで、ツール3週目は好調さを見せているので、ニーバリに対して多少はタイム差を詰めてくるかもしれない。しかし、さすがに7分23秒差を逆転されることはないだろう。

それでも、第8ステージで3秒奪ったコンタドールとともに、今年のツールでニーバリとのタイム差を縮めることができる貴重なひとりになるかもしれない。逆に言えば、それだけニーバリは強かったと言うことだ。

1998年のマルコ・パンターニ以来、イタリアにマイヨジョーヌを持ち帰ることがほぼ濃厚なニーバリだが、ここまで波乱続きのツール。フランス勢による表彰台争いはまだまだ激戦が続いているだけに、最後まで注目して見ていきたい。
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