ラグビーでタックルする選手の頭の位置により、頭頚部の外傷発生頻度が約30倍アップ…順天堂大学 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

ラグビーでタックルする選手の頭の位置により、頭頚部の外傷発生頻度が約30倍アップ…順天堂大学

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タックルする選手の頭の位置により、頭頚部の外傷発生頻度が約30倍アップ…順天堂大学
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順天堂大学大学院医学研究科 整形外科・運動器医学の研究グループは、ラグビー競技でタックルする選手の頭の位置が、頭頚部外傷発生頻度に大きく関わることを発表した。

今回の調査は、ラグビー競技でコンタクト外傷が発生するタックルの特徴を明らかにすることを目的に実施。タックルした選手の頭部位置が相手選手の進行方向を遮るように衝突した場合、脳振盪を含めた頭頚部の外傷発生頻度が約30倍高くなることを見いだした。

ラグビー強豪国の協会では、相手選手の進行方向に頭が入ることによって受ける衝撃を避けるため、タックルする選手の頭部を相手選手の横、もしくは後ろに位置するように推奨しているが、実際の現場は異なっている。タックルする選手の頭が相手選手の進行方向を遮るように位置するタックル(日本では逆ヘッドタックルと呼ばれる)が見られ、頭頚肩部外傷をする選手が多く見受けられることから、調査が行われた。

調査では、2015、2016年に行われた強豪大学ラグビー部2チームの試合をランダムに28試合抽出。試合映像より、全3970タックルを分析した。分析時には、タックルした選手の相手選手に対する頭部位置により、相手選手に対し、横もしくは後ろに位置するもの(順ヘッドタックルと呼ぶ)、相手選手の進行方向に位置するタックル(逆ヘッドタック)の2つのタックルに分類。各チームの外傷記録と照合し、各タックルの外傷発生頻度を計算した。

調査の結果、外傷発生頻度として順ヘッドタックルを1000回行うと頭頚肩部外傷が2.7回発生するのに対し、逆ヘッドタックルは69.4回発生することになった。外傷別にみると、逆ヘッドタックルにおける脳振盪、頚部外傷、バーナー症候群、鼻骨骨折の発生頻度は、順ヘッドタックルと比較し、20~30倍も高いということがわかった。

さらに逆ヘッドタックルをした選手に対しアンケート調査を行った結果、61%の選手が逆ヘッドタックルを回避することができたと回答。これら個々の原因、理由を紐解くことが、逆ヘッドタックルに起因するコンタクト外傷を予防するヒントになると考えられる。

また、研究の結果はラグビー競技だけでなく、アメリカンフットボールなどタックル動作を含むスポーツ全般に対して、頭頚部外傷の減少や予防に貢献できる可能性がある。

今後、研究の結果をラグビー指導者、コーチ、選手に啓蒙していくと共に、逆ヘッドタックルをしてしまう状況、選手の考えなどをさらに詳細に分析し、ラグビー競技での頭頚部外傷の減少や発生の予防につなげていく。
《美坂柚木》
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