【インナーローでいこう!】今さら聞けない「同タイムゴール」って何? | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【インナーローでいこう!】今さら聞けない「同タイムゴール」って何?

オピニオン コラム
集団スプリントを制したキッテル。ここにいる選手はみな同タイムゴールとなる
  • 集団スプリントを制したキッテル。ここにいる選手はみな同タイムゴールとなる
  • 個人タイムトライアルでは、もちろん同タイムゴールはない。写真はアルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ)参考画像
以前、国内のとあるロードレースを取材しているときに、ある記者がリザルトを手に「なんでみんな同じタイムなんだ? 選手たちもちゃんと自分の記録が出た方がうれしいんじゃないか」と不思議そうな顔をしていた。

ご存じの方も多いと思うが、自転車ロードレースには同タイムゴールというルールがあり、このレースは集団スプリントで終わったため、多くの選手の記録はst(same time 同タイム)となったのだ。

しかし言われてみれば、陸上やモータースポーツなど他のスポーツは小数点以下まできっちりタイムを出すのに、自転車ロードレースではなぜそのような独特のルールがあるのだろうか?

今年からツールを見始めた人も、集団がバラバラになった石畳のステージでニーバリがタイム差を広げたが、それ以外のスプリントステージでは総合上位陣のタイム差がまったく変わらないのを不思議に思っていたりするかもしれない。けっしてみんな横一列に並んでゴールしているわけではないのに、だ。

◆直前の選手と1秒差開くと、後ろの集団に!

そもそも、同タイムゴールとはどういうルールなのか? 

UCI(国際自転車競技連合)の競技規則「スポーツとしての自転車競技組織」には、次のように規定されている。

「数人の競技者が1つの集団でフィニッシュした場合、その同一集団の全競技者に同タイムを与える。ある集団の最後尾の競技者の後輪後端と後続集団の先頭競技者の前輪前端との間に1秒もしくはそれ以上の間隔がある場合、タイムキーパー・コミセールは後続集団に、その先頭競技者で計測した新たなタイムを与える。競技者間(後輪~前輪間)の1秒もしくはそれ以上の差は、新しいタイムを伴う」

ちょっとわかりにくい表現だが、つまり直前の選手の後輪からの間隔が1秒未満なら同一集団とみなされ、記録上は同タイムの扱いとなる。これは、トップの選手からのタイム差ではない。自分の直前の選手とのタイム差であることが重要だ。

極端に言うと、たとえば1位から201位の選手がすべて0.9秒間隔でゴールした場合、実際201位の選手は0.9x200=180秒(3分)後にゴールしているのに、記録上は同一集団と見なされ1位の選手と同タイムとなる。

また似たような状況で、もし101位と102位の選手の間が1.1秒開いた場合、101位のA選手は1位と同一集団、同タイムとなるが、102位のB選手は後ろの集団と見なされ91秒遅れのタイムが与えられる。2人の差は実際は1.1秒差なのに、記録上は1分31秒も違うのだ!

平坦ステージだと、空気抵抗を避けるため多くの選手が大集団でゴールする。直前の選手との差はたいてい1秒以内(時速50kmの場合、1秒差は約14m)に収まるので、同タイム扱いになることが多いのだ。

◆同タイムゴールがないと危険!

もしこのルールがなく、すべての選手に小数点以下までタイム差をつけた場合、平坦ステージでステージ優勝を争うスプリンターだけでなく、総合順位を争う選手たちもライバルに先んじようと集団半ばで争いかねない。

つまりキッテル、サガン、グライペルなどがスプリント争いした後に、20~30番手以降でニーバリやコンタドールらがコンマ1秒のタイム差を稼ごうと全力で争っていたら、周りの選手にとっても危険極まりない。集団落車の危険も増すだろう。

逆に言えば、山岳ステージや、ひとりで走る個人タイムトライアルは誰かの後ろに入って空気抵抗を避けることにあまり意味がない、またはできないので、タイム差がつきやすい。つまり、総合優勝争いをする選手は、集団がバラバラになる山岳ステージやひとりずつ走るタイムトライアルで、ライバルにタイム差をつけなければいけない。

ツールは2週目からアルプス、ピレネーの山岳ステージ、そして最終決戦となる第20ステージの個人タイムトライアルへと向かっていく。そう、開幕からの1週目は、ほんの前哨戦。マイヨジョーヌ総合優勝争いが本格的に盛り上がるのは、これからなのだ。
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