ツール・ド・フランスとともに「二大大会」といわれる自転車ロードレース、ジロ・デ・イタリアの第97回大会が5月9日に英国・北アイルランドのベルファストで開幕する。第1ステージと第2ステージのスタート地点となるのは、べルファストの港に面したタイタニック博物館前だ。
豪華客船タイタニック号が処女航海で沈没したのは1912年。悲劇から100年経った2012年、タイタニック号が建造された造船所の跡地にこの博物館が建設されたという。
◆開幕地は戦略的に機会を生かすべき
ツール・ド・フランスやジロ・デ・イタリアの開幕地はある意味で、五輪開催地ほどではないにしても世界に向けてアピールできる絶好の機会で、さらなる集客のために博物館とベルファスト市がイタリアの自転車レースを誘致したといっても過言ではない。
大会3日目には国境を越えてアイルランドの首都ダブリンまで足を伸ばすのだが、それにしても無理やりな日程だ。通常のツール・ド・フランスとジロ・デ・イタリアは、国際規定によって「21区間と休息2日」と制限されているが、今回のジロ・デ・イタリアはアイルランドからイタリアまでの移動日が1日あり、全24日間という異例の設定なのである。
選手も大変だが、関係者や取材陣も大変だろう。大きな機材をクルマに積み込んで帯同する際に、陸地が変わるというのはとてつもなく重労働だ。いったんクルマから荷物を全部降ろして、移動しなければならない。あるいはフェリーでクルマごと乗り込むかだ。
◆自転車のステージレースはただのスポーツではない
2013年のツール・ド・フランス開幕地は地中海に浮かぶコルシカ島だった。そして2014年のツール・ド・フランスは英国リーズからスタートする。ドーバー海峡を渡るチャーター船が出るようだが、ボクは利用しないだろうな。1987年3月のドーバー海峡でボクが乗船予定だった大型フェリーが沈んだからだ。
北海においてタイタニック号以来となる海難事故の現場に居合わせたボクとしては、韓国の高校生たちが犠牲になったフェリー事故にも胸が締めつけられる(犠牲者のご冥福を心よりお祈りいたします)。
いずれにしても、こうして欧州の歴史に接しながら旅を続けるのが自転車のステージレース。現地に行けば古代ローマの面影を感じるはずだし、こうして日本でコラムを書いているだけでタイタニックの悲劇に思いをはせる。自転車レースはやはり単なるスポーツじゃない。
《山口和幸》