
4日から開催された日本シリーズJTカップの終了をもって、今季の日本男子ゴルフツアー全日程が終了した。賞金王となったのは、今季初優勝を含めて2勝をあげた金子駆大。今回は金子の躍進を支えたパッティングに焦点をあててみたい。
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■今季はパットの安定感が大きく向上
金子は、昨季のトータルドライビング16位、パーオン率11位が示すようにショットの精度は高かったが、パッティングが課題だった。
昨季のパーオンホールの平均パット数が16位、1ラウンドあたりの平均パット数が38位、リカバリー率が33位。トップ10が7度ありながら初優勝を挙げられなかった理由に、パットの安定感の不足があげられていた。
しかし、今季はパット関連のスタッツが大きく向上。パーオンホールの平均パット数が10位、1ラウンドあたりの平均パット数も10位、そしてリカバリー率が2位となった。
金子のパッティングストロークを見ると、インパクトでゆるまずヒットしていることがわかる。

■関西オープン最終日
金子の初優勝は5月の関西オープン。最終日を首位タイで迎えたものの、終盤までリードを許す展開になったが、16番ロングホールをイーグル、17番ショートホールをバーディ、18番ミドルホールをパーとして1打差で優勝した。
この上がり3ホールはパットがポイントになった。16番、17番ホールはロングパットをねじこみ、18番ホールはしびれる1メートルほどのパットを沈めた。
中継で、日本オープンを含む通算6勝を挙げている解説の奥田靖己が、金子が17番ホールでバーディパットを決めた際「ヘッドを送り出していないのがいい」と語っていた。これはインパクトでボールを押し出すようなストロークではなく、しっかりとヒットするストロークをしているところが良い、と言っているのだ。
■ヘッドを送り出さない
多くのゴルファーは、パッティングでラインに乗せようとすると、ヘッドでボールを押し出すようにストロークしやすくなる。だが、そのように“感じ”を出していては、逆にラインに乗らない。グリーンが速かろうが下りであろうが、しっかりとヒットする必要がある。
振り幅の基準は左右対象が基準になる。また、「バックストロークの時間」と「ダウンストローク+フォロースルーの時間」は「1:1」が基準である。
しかし、ヘッドを打ち出したい方向に送り出していると、フォロースルーが大きくなるし、時間が長くなる。そうなると、基本的にはフェースは開きやすくなる。そしてそれをカバーしようと代償動作を介入させざるをえなくなり、インパクトでフェースが閉じたり開いたり不安定になる。
また、送り出すようなフォロースルーはインパクト時のヘッドスピードが不安定になりやすい。パンチが入ったりゆるんだり、色々起こってしまう。フェースの向きだけでなく、距離感も不安定になりやすくなるのだ。
一般ゴルファーの多くは、ヘッド軌道やフェースの向きを気にするあまり、ヘッドを送り出すストロークをしている。最初はオーバーしても良いから、インパクトでしっかりとヒットするストロークを目指して欲しい。
■来季は海外ツアーが主戦場
11日から開催された米ツアー最終予選会に出場した金子は13位タイでフィニッシュ。米下部ツアー出場権は確保したものの、上位5人に与えられる米ツアー出場権を獲得することはできなかった。
最終予選会では、4ラウンドトータルのパーオン率が2位タイであることが示すように、ショットの安定感は高かった。だが、パーオンホールでの平均パット数が126位タイ。海外コースの経験値が影響したのか、今季日本ツアーで安定していたグリーン上でのプレーが冴えなかった。
ただパットは経験を積めば対応できるのではないだろうか。
賞金王の権利で獲得した欧州ツアー出場権と、今回獲得した米下部ツアー出場権のどちらを行使するかはまだ決まっていないようだ。どちらを選択しても、代名詞になりつつある中尺パターでのパッティングがどれぐらいの冴えを見せるのか、注目だ。
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著者プロフィール
野洲明●ゴルフ活動家
各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。



