圧倒的スケールの「川崎新アリーナ構想」が描く新たな“街”の可能性とは? 国内屈指の収容人数、駅直結でスパやホテルも | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

圧倒的スケールの「川崎新アリーナ構想」が描く新たな“街”の可能性とは? 国内屈指の収容人数、駅直結でスパやホテルも

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圧倒的スケールの「川崎新アリーナ構想」が描く新たな“街”の可能性とは? 国内屈指の収容人数、駅直結でスパやホテルも
  • 圧倒的スケールの「川崎新アリーナ構想」が描く新たな“街”の可能性とは? 国内屈指の収容人数、駅直結でスパやホテルも

Bリーグ・川崎ブレイブサンダースのオーナー企業である株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)と京浜急行電鉄株式会社(京急電鉄)が21日、2028年10月開業予定の共同事業「アリーナシティ・プロジェクト」の進捗状況を説明した。

今年3月、事業者側はこのプロジェクトの立地が現在、自動車教習所「KANTOモータースクール川崎校」のある場所(同スクールと長期の賃貸契約を締結)に建設されることなど大枠の概要を発表していたが、今回は当初、約1万人と発表していた収容人数が1.5万人になったことや、施設の設計、デザイン会社が決定したことなどが新たに公表された。

◆【ギャラリー】イラストでも伝わる圧倒的規模は想像以上……現在までに発表されている「川崎新アリーナ」の完成イメージ図(画像5枚)

■用地拡張、収容人数は1.5倍増加

当初の建設予定地に隣接する敷地、約1970㎡を追加で取得されたことで計約13640㎡へと用地は拡張。収容人数の1.5倍の増加につながった。これにともなってバスケットボール試合時の収容人数も最大約1.2万人へと変更になる見込みだが、同プロジェクトへ注力するため今年7月にブレイブサンダースの球団社長から会長へと役職が変わった元沢伸夫氏によれば、同チームの試合使用時にはこれを最大約1万人にする予定だという。

ロケーションマップ(23年3月3日発表) 画像提供:DeNA / 京急電鉄

1万5千人は国内でも上位の収容人数規模となる。オンラインでの進捗状況発表会見で元沢氏は、これによって「海外の音楽アーティストからも会場に選ばれる候補に入ってくる」とスポーツ以外での興行の広がりが期待できると強調した。

施設の基本設計者は虎ノ門ヒルズステーションタワー、東京有明アリーナなどの設計実績のある久米設計が、アリーナのボウルデザインやアリーナ内の各施設、商業棟を始めとするアリーナシティ内の施設全体との連携やUXデザインはオーバーランド・パートナーズ(米テキサス州、MLBテキサス・レンジャーズの本拠・グローブライフ・フィールドやNBAダラス・マーベリックスの本拠・アメリカン・エアラインズ・アリーナ等の実績がある)が、そして外装デザインはモロークスノキ建築設計(仏パリ、欧州連合本部改修計画などの実績がある)と、国内外で多くの実績を残している建築設計会社が担う。

「アリーナシティ」はメインアリーナと商業棟による複合施設となるが、理化学研究所がこれらの用途構成や規模を踏まえて施設完成後の年間の経済波及効果を約1273億7000万円(直接、1次、2次波及効果をまとめた数字)としている。

■郊外から都市中心部へ、海外トレンドでもある“新たな価値創造”

施設イラスト(23年3月3日発表) 画像提供:DeNA / 京急電鉄

今季、8年目のBリーグの成長によって全国各地に新アリーナが建設、あるいは今後、建設予定となってはいるものの、JR川崎駅から徒歩で数分、京急川崎駅からは直結した立地となるこのアリーナシティのアクセスの良さは他を圧倒するものになると言えるだろう。

欧米のプロリーグでは近年、従前は郊外にあったスポーツスタジアムやアリーナを都市中心部に作る流れができている。しかも、ただスタジアムやアリーナを建設するだけでなく、ディベロッパーと協業しながらマンションやホテル、商業施設などを一緒に建てることで、周辺一帯にスポーツファン以外の人々も呼ぶことのできる、新たな価値を創造している(都市によっては治安改善の効果もある)。

2016年に開業したNBAサクラメント・キングスの本拠「ゴールデン1センター」などは好例で、アメリカ最大の州、カリフォルニアの州都ながら過疎化が止まらなかったこの街のダウンタウンに同アリーナを建設したことで、一帯にはホテルや商業施設が増え、人の流れと活気が戻ったというのだ。

スポーツが盛んなアメリカでは新スタジアムやアリーナの建設は頻繁に起きているが、その多くが郊外から都市中心部へ場所を換え、かつホテルや商業施設等、周辺一帯の開発をトータルで考えながら事業を進める形となっている。

「個人的な希望」と前置きしながら元沢氏は、川崎駅東口方面には「公園だったり広場的な街の人達の憩いの場が足りないなと思っている」とし、同アリーナシティ・プロジェクトには商業的な側面だけでなく、街のモニュメンタルな意味での施設の建設を目指している旨を口にしている。

■「ナンバーワンのエンターテイメントシティに街を昇華」

Bリーグ・長崎ヴェルカのアリーナやJリーグ・Vファーレン長崎のスタジアムが含まれる「スタジアムシティプロジェクト」(2024年開業予定)等も同様のコンセプトだが、JR、京急を合わせて1日の平均乗降客数が60万人以上と国内屈指のターミナル駅に隣接する形となる川崎のプロジェクトは日本では前例のないものと言えるだろう。

川崎のアリーナシティ・プロジェクトでは、施設を利用する人たちのUXも重視していく。UXとは「ユーザーエクスペリエンス」のことで、来場者、観戦者に新たな感動や価値観を創出することを指す。元沢氏を始めプロジェクトのメンバーはアメリカ等の先進事例の視察に何度も訪れてきたとのことだ。その中で同氏は、それぞれNBAボストン・セルティックスとNFLアトランタ・ファルコンズの本拠であるTDガーデンとメルセデスベンツ・スタジアムスタジアムが、UXの視点からも印象に残ったと話した。

「商業施設、ホテルなども含めた一体型で、われわれが求めるものに近い形で、中に入ってからお客さんが楽しめるいろんなポイントが散りばめられた素晴らしいスタジアムだなという点で、個人的には参考にさせてもらっています」(元沢氏)

京急川崎駅の1日の平均乗降者数は昨年度で約11万3000人だったとのことだが、会見に出席した同社生活事業創造本部まちづくり推進部の小松麻衣氏は、同アリーナシティ完成のあかつきには「相当数が京急川崎をご利用していただけると我々、京急電鉄として考えて」おり、それにともない「駅舎の改良なども検討している」と語った。

新アリーナ空撮イメージ(23年3月3日発表) 画像提供:DeNA / 京急電鉄

同アリーナシティでは、メインアリーナが多摩川側に、そして17階建ての商業棟が京急川崎駅側に建設されることとなっている。現時点での計画では、商業棟の1-2階にはサブアリーナ兼ライブホールが、3-8階にはスパ(温浴施設)やフードホールが、そして10-17階にはホテルおよびレストランが入ることとなっている。

DeNAと京急電鉄ではアリーナシティの共同運営会社設立を検討中だ。

アリーナシティがブレイブサンダースだけのものではなく、試合日も含め「365日何かしらのイベントをやっているような施設となり、この街に人を呼ぶ、集客の起点とし、イベントが終わったら街に人をどんどん吐き出す拠点にしたい」と話した元沢氏は、これが「ナンバーワンのエンターテイメントシティに街を昇華させるプロジェクト」だと自信を示した。

アリーナシティの完成はまだ5年後と先だが、DeNAと京急電鉄は今後、半年程度に1度、プロジェクトの進捗状況を公表していくという。

◆【ギャラリー】イラストでも伝わる圧倒的規模は想像以上……現在までに発表されている「川崎新アリーナ」の完成イメージ図(画像5枚)

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著者プロフィール

永塚和志●スポーツライター

元英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者で、現在はフリーランスのスポーツライターとして活動。国際大会ではFIFAワールドカップ、FIBAワールドカップ、ワールドベースボールクラシック、NFLスーパーボウル、国内では日本シリーズなどの取材実績がある。

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